教育ICTリサーチ ブログ

学校/教育をFuture Readyにするお手伝いをするために、授業(授業者+学習者)を価値の中心に置いた情報発信をしていきます。

東浩紀『弱いつながり 検索ワードを探す旅』をベースに、情報科の授業を作ってみたい

 先日、東浩紀『弱いつながり 検索ワードを探す旅』を読みました。すごく大まかに内容を説明するならば、旅が、検索ワードを変える。旅でどこかへ行くことによって、そこでしか得られない検索ワードを得ることができる。あたらしく得た検索ワードで検索して、新しい知識を得る。どこにも行かないで検索するのはとても便利だけど、基本的には「キーワードを知っていること」が必要なわけで、ただ検索しているだけでは世界は広がらない。新しい検索ワードを得るために、外に旅をせよ、ということだと思います。

 学校では、調べ学習のときにインターネット検索を普通に使います。検索するためには、「なんという言葉で調べればいいのか」=検索ワードを知らなくてはなりません。検索をいかに効率的にするか、ということを教えている先生は多いですが、「いかに検索ワードを増やすか」という部分については、学校では多く教えられていないのではないか、と思いました。

 今年の8月に出張でブダペストに行きました。iPhoneを持って自由時間に街をふらふらと歩きます*1街を歩いて、「ここどこ?」と思ったり、「この建物なに?」と思ったら、とりあえず検索をかけます。日本語で何というかわからなくても、現地の言葉で検索をかけてみても意外とどうにかなります。それに、位置情報から情報をくれることもあるので、検索に不自由はほとんどない。
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 この橋、何ていうのだろう、と調べて、その橋が歴史的にどんな出来事の舞台になったかを知り、そこからドナウ川の両岸が「ブダ」と「ペシュト」であることを知り、とどんどん知識が広がっていきます。
 丘の上に見えるのは王宮で、王宮はいつ建てられていて、その当時の社会はどんなで…と広がっていきます。ブダペストに来る前は、そんなことはまったく気にしていませんでした。だから、ここで検索をかけた検索キーワードなどはほぼ知らなかった。ブダペストに行って、あの橋を渡らなければ、一生検索しなかったかもしれない検索ワードです。

 旅をして、新しい場所を知り、新しい検索ワードを手に入れることで、どんどん世界が広がっていく、この感覚を、「情報科」の授業のなかに取り込めないだろうか。学校の社会見学とか修学旅行と重ねて、「ほら、検索のしかたが変わるでしょう?」っていうことを実感できるようなカリキュラムを作れたらおもしろいかもしれないですね。この本をベースにして、カリキュラムを書いてみよう、と僕は思いました。

 その一方で、旅に出て、新しい検索ワードを見つけたらどんどん検索する。ただし、オンラインに繋がるからといって、日常と繋がりっぱなしはダメ。日常とは断絶すべし、と東さんは書いています。こうした振る舞いというか行動は、これからの世界に生きる児童生徒たちに伝えたいことだな、と思いました。

 先生方、どなたか一緒にやりませんか?とりあえず一人で作ってみて、形になってきたら、このサイトで公開したいと思います。

(研究員・為田)
 

*1:Free WiFiが充実しているので、オンラインに繋がるのにそう不自由はありません。