教育ICTリサーチ ブログ

ICTを教育にどう活用できるか、現場目線でリサーチします。

トッパン教育情報化セミナー@大阪 第2部パネルディスカッション Part2

 2015年2月11日に中之島フェスティバルタワー24Fで開催された、トッパン教育情報化セミナーの第2部、パネルディスカッションの様子を文字起こししました。研究員の為田がモデレーターとして参加したのですが、教育現場にICTを導入している現場の方々の、一人称の話をみなさんにお届けしたかったのと、建設的にそれぞれの発表から「いいところ探し」をして、何か新しいことをはじめてみよう!と思えるようなパネルディスカッションになればいいな、と思ってモデレートしたつもりです。

 パネルディスカッションの前の自己紹介部分がないため、ちょっとわかりにくい部分もあるかもしれませんが、それぞれの所属の組織で情報が出ているものもありますので、興味をもったものは、各自で情報にアクセスしていただければと思います。

 では、全3回に分けて、パネルディスカッションの様子をお届けいたします。(研究員・為田)

テーマ2「授業のあり方と家庭学習について ICTが果たす役割とは?

モデレーター:
2つめのテーマは、「授業のあり方と家庭学習についてICTが果たす役割とは」ということで、進めていきたいと思います。佐賀県のSEI-Netや京田辺市の校務支援システムを支えている凸版印刷ですが、菊地さん、授業と家庭学習について、凸版印刷ができることはどんなことがあると思われていますか?

菊地本部長:
印刷物はなくなるじゃないか、ということは入社以来何度も言われています。が、なくなっていない。カメラで撮影できて、ネットワークに常に接続できて、それが人について動く、というようなことはこれまでなかったわけです。でも、今度ばかりは、逆戻りはないのではないかと思っています。
佐賀県の仕事をやらせてもらって、一人1台タブレットを持たせて、家に持ち帰らせることがどれだけ大変かを痛感しましたが、世の中の流れはそちら側に行くと思っています。
生徒に学習者端末がくっついて歩く。それが教育に大きな変化をもたらすと思いました。だからこそ、凸版印刷がやろうとしている新しいサービスも実現できると考えています。
学習者端末が学校と家庭を行き来することで、家での勉強も、ログがとれて、先生方にフィードバックすることもできるようになると思っています。
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モデレーター:
凸版印刷と共同での実証実験も計画されているという平井先生。家庭学習のあり方での、次の野心は?

平井先生:
「学びの連続性」だと私は考えています。つまり、復習中心の家庭学習から、予習中心の反転学習への転換、そうしたことを考えています。
普通の授業は、助走に時間がかかってしまうと、45分の授業に入りきらないんですね。家庭学習を導入の前につければ、45分の授業を子どもたちがフルに活動できるようになります。だから先生方に、「次につながるような、予習のような宿題を考えてください」と言い続けてきました。ICT、タブレットによって、家庭で先生からの課題を引っ張りだして、先生に送り返すことができます。これで、授業を変えられると思っています。ここで大切なのは先生方が、どんな授業を作るのか、と考えなければならないことです。つまり、宿題は課題の種まきと私は言っています。どんな課題を身につけさせたいのかを考えるという、授業づくりの原点だと思っています。
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それと、家庭の学習が、親を巻き込んだ形になると思います。音楽で笛のテストをやると、先生の前にテストを受けるために、ずらりと子どもたちが並びます。家で笛のテストをやってよくなれば、お母さんの前で笛を吹いて、お母さんが撮影する。失敗したら撮り直して、いちばんいいものを送る、というふうになります。これは、新しい家庭学習の形だし、セルラーモデルを入れれば、WiFi環境がない家でもできるようになります。そうした家庭と学校を繋ぐデバイスとして、タブレットが機能すると思います。そうしたら、楽しいと思うし、家庭も巻き込んだ楽しい学びになります。eポートフォリオもこれに近いですね。体育の授業の画像を家でも見られれば「今日、跳び箱飛べたんだよ」、と見せられるようになります。

モデレーター:
笛のテストといえば、淡路市の紹介プレゼンテーションでも笛を吹いているシーンがありましたが、iTunes Uは家庭も巻き込んでいるのですか?

西岡先生:
家庭ではまだiTunes Uは進めていないのですが、それは家庭のWiFiが不十分だから。なんとか、古河市の真似をして、セルラーモデルにしたいな、と思いました。パクリ合います(笑)
反転学習を試行してみたところ2時間かかる授業が、1コマでできてしまった、というような事例もあります。
淡路市iTunes Uサイトの一週間ごとのビジター数は3500オーバーくらい。ダウンロードしないまでも、ストリーミングで試している人も多い。1250くらいまでアクセスされています。山があるところは、新しい教材をアップしたところです。四分の三が日本、次に多いのは中国、その次がアメリカ、と世界中からアクセスされています。
家庭で見られている保護者の方もいらっしゃると思います。保護者の中でもだんだん広がっていくかな、と思っています。
今は授業で使っていて、アップロードした教材を使っています。動画があることで、学習を行ったり来たりできます。わからなかったところをもう1回見ることもできます。だいたい3分くらいの動画。3分動画を作るのに、自分の教えたいことのそぎ落としをしています。
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モデレーター:
3分動画を作るのに、平均的にはどれくらい準備をするんですか?

西岡先生:
最近はアプリが楽ちんなので、慣れてくると10分かからないとか、5分かからない、と先生たちは言っていました。これまでに何度も授業で教えていることなので、そんなに時間はかからない、と言っていました。

モデレーター:
保護者も巻き込んでの学習、という話もありましたが、以前、不破先生とお話をしていたときに、「家庭学習、なかなか難しいですよ」とおっしゃられたことをとても強く覚えています。公教育はすべての家庭に提供していく必要があるわけで、そうした面で家庭学習までICTで踏み込むのは難しいというのも確かかと思うのですが、不破先生、このあたり、いかがですか?

不破先生:
大学の先生方や外部の方々に、「まず現場を知ってください」という前提があって、その流れでそうした発言をしたと記憶しています。
京田辺市の中でも、学力調査の成績はまちまちです。学校現場では、親の教育は誰がするのか、というのが問題になります。タブレットを持ち帰らせても、親が他のことに使ってしまうのではないか?WiFiがない場合もあるのではないか?そうした心配もあります。
家庭に持ち帰らせたら、学習にだけ使われるだろうか、という部分も考えてしまうのは事実です。家庭のなかで、どこで勉強しているのかな?ということを考えなくてはならない場合もあります。学習環境がまだ整っていない生徒たちにも、どう広げていくか、ということは考えなくてはならないと思います。

モデレーター:
私学や学習塾と違って、公教育はすべてをカバーする必要がある。すべての家庭に届けなければならない、というものなので、考えなければならない。タブレットを管理して使うか、自由に使わせるか、という部分で選択肢が出てくると思うのですが、平井先生、いかがですか?

平井先生:
WiFiモデルは、WiFiから外れると管理がきかなくなる。セルラーはキャリアが管理をしてくれる。MDMを使ってコントロールすることもできるし、GPSで校外学習のときに位置を把握することもできます。これから、WiFiセルラー共存していくと思います。それぞれにできること、できないことがあるので、セルラーWiFiのいいとこどりをしていくといいのかな、と思います。

モデレーター:
そうして聞くと、いいことばかりに聞こえるのですが、なんで広がらないのですか?

平井先生:
LTEが広がっていないというだけです。また、ビジネスモデルとしてもなかった。

モデレーター:
これから導入を考えているところは、「古河市っていうところがセルラーモデルをやっているらしいけど、どうなの?」って訊いてみたらいいということですよね?

平井先生:
訊いてみる価値があるとは思います。

モデレーター:
佐賀ではどうですか?

福田副教育長:
小学校、中学校、高校でそれぞれ立ち位置が違うと思います。小学校はまず学習習慣を身につける、中学校は学力。この段階では、学習プリントを配信して子どもたちの進捗管理をすることはたいへん有効ですよね。高校生は、自己実現、今後を見据えた教育をする必要がある。県立高校でやった理由は、「大学入試が変わると、高校が変わる。高校入試が変わると、小中学校も変わる」というように大きな影響力がある。高校生がICTを使ってこんなすごい授業を受けている、となると、小さな県ですので、お兄ちゃんお姉ちゃんがすごい授業を受けている、ということが伝わっていきます。
高校生が使う端末については生徒各人が自前で準備する方式、いわゆるBYODで踏み込んだのですが、それを買わなければならないという理由で高校入試を諦めるということは絶対にあってはならないことです。そのために、奨学金制度も整えました。結果、それが原因で、進学を諦める、というような状況はなくなっています。
WiFiモデルとセルラーモデルも検討しましたが、今の社会インフラを考えると本当に耐えられるかという課題もありました。生徒全員が一気に使ったときに、みなさんの携帯電話さえ繋がらなくなるのではないか。議論のなかで、そうしたリスクを考えて、今回はWiFiにしました。WiFi環境の整備では、震災等が発生した際には避難場所として学校を使うということで、ほとんどを国の予算で整備しています。
教材についても、紙の場合は著作権の特例状況35条の特例規定があり、アレンジして配ることがある程度許されていますが、デジタルでは一切許されていません。たとえば、3クラス120人にこの教材を配りたい、と思ったら、120人分のライセンスを私が持っていなければならない。
教材は、事業委託の形でベネッセや凸版印刷に入ってもらって、5000くらいの教材を用意しました。準備段階では5倍くらいのコンテンツを検討しましたが、その多くは、著作権に対応できていない。違反になると思って、県で共有できる教材としては使っていない。著作権法親告罪。訴えられる先は個人で、組織ではありません。つまり、刑事罰になったら、子どものためにと思ってやったことで、クビになることが可能性としてあるということです。そうはならないようにしたかった。
私が抱えている課題は、著作権に絡む、教材を十分に使えない状態を何とかすること。紙であればOKなものが、デジタルになると使えないという教材がある。ここに大きな予算をつけています。先生方は、スキルが上がれば上がるほど、教材を使いたくなります。だからこそ、著作権の部分はしっかりと整備しています。
家庭との通信では、高校生のよかったことを5分にまとめてプレゼンしなさい、というのをやったときに、「先生が学級通信に動画をはめ込んでくれた」というのを伝えてくれた女子生徒がいました。こうした部分が、家庭との連携が進んできた、ということだと思います。
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モデレーター:
立ち位置が違う、何を目指してICTを使うのか、「この立ち位置で、この目的で、こうした成果を期待して導入しました」というのを、間を抜いてメディアで取り上げられると厳しい。立ち位置を明確にしないで話をすると、推進派と反対派の議論はすれ違うと思います。
共通の言語を持って、進めていく土台を作っていく必要があると思いました。

※写真は、パネルディスカッションの前の自己紹介プレゼンの際のものも使っています。