教育ICTリサーチ ブログ

学校/教育をFuture Readyにするお手伝いをするために、授業(授業者+学習者)を価値の中心に置いた情報発信をしていきます。

武内小学校の本当にすごいところはソーシャル・キャピタルだ

武内小学校での支援員さんの働き

 5月1日に、武雄市立武内小学校の学校公開に行ってきました。授業の様子については、別エントリーにて発信していますが、今回は、それとはもうひとつ別テーマについて取り上げたいと思います。

 武内小学校の校内には学校支援地域本部がありました。地域の支援員さんの登録は100人を超えているそうです。在校生と登録している支援員さんがほぼ同数です。こうして地域で学校をサポートしてくれる、というのは僕が住んでいる首都圏の公立学校ではなかなか例がありません。
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 学校支援地域本部の部屋の中に入ると、ホワイトボードがあり、そこにはたくさんの人の名前プレートが机の上に並んでいました。朝、名札をホワイトボードに貼って、どの学年を担当するかを決めるようになっています。
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 学校公開にも多くの支援員さんたちが参加されていて、本部のホワイトボードのところに集まっていました。
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 支援員さんは、花まるタイムの最後に、丸付けをしてくれます。最後に、すべての児童に花まるをしてあげるそうです。
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ソーシャル・キャピタルとは

 前日、5月18日のパネルディスカッションのための事前インタビューで、武内小学校の代田校長先生とお話をさせていただいたときに「武内小学校はソーシャル・キャピタルが高いんです」という話をうかがっていました。長寿会があって、花まるタイムには、10人くらいが教室に入って手伝ってくれているという話をうかがっていました。多くの支援員さんが学校を訪問し、授業をサポートしている様子を見て、その言葉を実感することができました。

 支援員さんたちと子どもたちとの距離も近いな、と思いました。もちろん、実際の孫もいて、その友達もいるというのもあるでしょうが、学校に来る機会が多い支援員さんたちといろんな話をしているようでした。
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 ソーシャル・キャピタルとは、「社会関係資本」と訳されます。Wikipediaで調べてみると、以下のような説明がありました。

ソーシャル・キャピタルという概念は19世紀から存在しており、ジョン・デューイが1899年の『学校と社会』でこの語を用いているのを見ることができる。 アメリカ合衆国ヴァージニア州西部の農村地域の視学官であったL.J.ハニファンにより、1916年、学校がうまく機能するためには、地域や学校におけるコミュニティ関与が重要であると論じる論文の中でも、この語は使われた。

 公立学校(特に、学区によって通う学校が決まる小学校中学校)においては、地域の「学校に関わる雰囲気」というのは非常に重要な要素になると思います。熱心な保護者が数人いたところで、学校が良くなるということではありませんし、クラスが不安定になったり、行事への参加の仕方が変わってきたりすると思います。
 そうした意味で、官民一体型学校として出発した武内小学校に、こうしたソーシャル・キャピタルがあることは、新しいことをチャレンジするための大切な土壌なのだろうと思いました。
 ただ新しいカリキュラムを入れればいいというのではなく、その方向性を支持し、サポートする地域があること。これは大きな力になると感じました。

まとめ

 武内小学校は小さな小学校です。武雄市も小さな市です。「小さな学校だから、いろいろな取り組みもできるのだろう」という声も否定はしません。大きな規模でこれだけの変革をするのは大変だと思いますから。
 でも、ソーシャル・キャピタルという意味では、大都市の学校が羨むような状態なのではないかな、と感じました。
 都市部では保護者をどう巻き込むか、という点でもICTをもっと活用する、というのも方法の一つだろうな、と感じます。

(研究員・為田)