教育ICTリサーチ ブログ

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「i和design 2015夏」取材報告(1)

教員が教える、教員向けセミナーの意味

 8月25日(火)に多摩市立愛和小学校で、i和design 2015夏に参加してきました。サブタイトルは「ICT白熱教室 ~この夏、デジタルシャワーを浴びまくろう~」でした。

 今回のイベントは、「教員セミナー」です。つまり、参加者は先生方です。公立私立のどちらも、また校種も小学校に留まらず、特別支援まで含めてさまざまなバックグラウンドの先生方が17名、参加されていました。聞けば、三重や長野から来られた参加者もいたそうで、愛和小学校が注目を集めていることがわかります。
 また、このセミナーは講師も全員、愛和小学校の先生方で、門田英朗主幹教諭が企画したものでした。実は、ICTのこうしたイベントで、「講師全員が学校の先生」、というのは非常に稀なことです。たいていは、企業の方々が講師として説明されることが多いですから。この点について、愛和小学校の松田校長は、「ICT展開期においては先生が講師をしていくのがいい。実際の子供の反応を知っている教員の説明は、タブレットの機能やアプリの特質が子どもの資質・能力の育成にどのようにつながるのか、具体的なエピソードとして語る説得力がある」とおっしゃっていました。
 企業の方が講師をされると、システムやアプリなどの機能や操作方法について、非常に詳細に伝えてくれますが、その一方で「授業でこんなふうに使います」「授業でこんなことがありました」というような経験に基づいた話はどうしても伝聞形になってしまうことが多いのです。先生が講師となって説明するからこそ、参加者の先生方に「日常の授業で使う工夫」や「日常の授業での児童の様子」が伝わることがあるのではないか、と思いました。
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Scratch Jr.(低学年向け)で物語をつくる

 最初は愛和小学校で低学年のプログラミングで使っているScratch Jr.の説明です。講師をつとめるのは、下鶴唯先生(2年目)です。
 愛和小学校では、読み物(物語)の指導で、Scratch Jr.を使っているそうです。お話の展開を考えて、そのとおりにキャラクターを動かす、というところでScratch Jr.を使っています。「Scracth Jr は、ビジュアルなプログラミング言語に慣れるのに絶好の教材」だと、松田校長は評価をされています。
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 さっそく、参加者にそれぞれiPadでScratch Jr.を起動してもらいます。下鶴先生は、最初に完成品を見せて、キャラクターが動き、音声なども入るよ、という説明をしました。
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 画面の説明は、実際の画面にどのように使うのかを書き込んだデータを用意して、それを使って説明をしていました。
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 ざっと説明が終ったところで、参加した先生方にもScratch Jr.を使ったお話作りにチャレンジしてもらいます。それぞれが自分なりのストーリーを作っていきます。作ってみて、動かしてみて、思っていたのと違っていたら直す…という作業を、何度も何度も楽しみながら繰り返せるのが、プログラミング学習のいいところです。

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 作品が完成したら、iPadのAirPlay機能を使って、iPadの画面をミラーリングします。こうすることで、自分の席でそのまま発表することができます。発表した先生は上手にキャラクターの動きにセリフをアテレコしていました。こうした感じで児童の作品をみんなでシェアするというのができる、というのが実感できるプレゼンテーションでした。プレゼンテーションが終わると、下鶴先生が「作ってみてどうでしたか?」と質問をし、発表者から感想を引き出していました。
 授業で教えるときには、児童に「これ、どうやったの?」というふうに作り方自体を質問することで、教室でのプログラミングの工夫についてのシェアもできるかと思いました。プログラミングの工夫のシェアは、テクニカルな話だけではなくて、「こういうふうにしたかったから、こうやればできるかと思ってやってみた」という問題発見と問題解決のシェアにもなり得るだろうと感じました。

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 愛和小学校の授業の中で、国語の「はじめ-中-おわり」を言葉だけでなく、こうしてプログラミングで絵を動かして、どんどん表現させているということです。「授業に入りにくい子も集中して取り組むことができている」、という門田英朗先生のコメントがありました。プログラミングそのものを学ぶことを中心とするのではなく、プログラミングをツールとすることで、文字表現以外に段階的に表現するということをさせたいのかな、と感じました。

 第2回に続きます。
blog.ict-in-education.jp


(為田)