教育ICTリサーチ ブログ

ICTを教育にどう活用できるか、現場目線でリサーチします。

「武雄市「ICTを活用した教育」 2014年度 第二次検証報告書」を読んで感じた「こうしたらいいのに」

 昨日あげたエントリー「東洋大学が、武雄市「ICTを活用した教育」の第二次検証の結果を発表 - 教育ICTリサーチ ブログ」で、原本が見たい!と書いたところだったのですが、今朝Twitterで報告書のURLを見つけたので、読んで見ることにします。なお、武雄市「ICTを活用した教育」 2014年度 第二次検証報告書 要約版も出ています(PDFで25ページ)。しかし、完全版と読み比べてみると、そこから得られるものはそう多くないので、ICTを導入してどういった効果が出るのか、というのを考えたい方は、ぜひ完全版である、 武雄市「ICTを活用した教育」 2014年度 第二次検証報告書」にあたってみましょう。
f:id:ict_in_education:20151001183736j:plain

 「1.2.3. 本調査における「ICTを活用した教育」による効果と検証」において、今回検証したい効果について、4つが挙げられています(p.8)。
f:id:ict_in_education:20151001183743j:plain
 これらを順に読んでいって、特に興味深かったところについてコメントをしていこうと思います。

スマイル学習動画の作り方

スマイル学習の概要(p.14)では、以下のように書かれています。

佐賀県武雄市では、2014年5月よりスマイル学習を実施している。あらかじめデバイスを自宅に持ち帰った児童が、動画を用いた予習を行う。翌日の授業にて、予習してきた内容をグループやクラスで共有することで、発展的な学習に結びつける学習方法である。同市では、現在、3年生以上の算数と4年生以上の理科でこの学習を実施している。

f:id:ict_in_education:20151001184145j:plain
 p.15に書かれていますが、スマイル学習教材の作成については、教員が原案を作成して、それを企業の方で動画作成し、先生との間でやりとりをして完成させる、という方法をとっていたようです。教育委員会の方で、どの単元をどの学校の先生が担当するかというのをわりふっていますので、すべての先生が、教えるあらゆる単元を制作しているわけではありません。
f:id:ict_in_education:20151001184255j:plain

 p.55~p.57までで、動画教材の使いやすさについての評価がされています。概ね良い評価をされているようです。動画教材とワークシートの連動についても、概ね良い評価をされているのですが、自由回答を見てみると以下のような意見も出たようです。

自由記入欄を設けたが、算数では、「ワークシートと画面上の図形が連動していない」「何を求めているのか、よく分かりませんでした」といった意見が、理科では、「授業後の小テストのような内容であった」「小テストも必要ないような動画だった」といった意見が寄せられた。(p.57)

 こここそが、重要だと思うのです。「何を求めているのか、分からない」のであれば、その教材を直せばいい。もう一度、企業側に制作をしてもらい、翌年度にはより良くなった教材で教えられるようにする。そうしたことが可能なのが、デジタル教材だと思うのです。
 ここで、「ICT要らない」と簡単に評価を下すのではなく、ここから「より良い教材を作る」「より良い使い方ができるようにする」ために、フィードバックをかけていけばいいと思います。

学習効果として何を求めているのかを明確にしたらいい!

 「4.5.2.9. 保護者の考えるスマイル学習効果のポイント」では、以下の5つの項目が挙げられています。

  • 家で集中して学習するようになった
  • 家族や友達に相談しながら学習するようになった
  • 本や新聞、インターネットなど資料を活用して学習するようになった
  • ICT教材等に対する興味や関心が高まった
  • 子どもの学習の様子に家族が関心を持つようになった
  • その他

 それぞれに、まあこうした効果は見えるかな、と思ったのですが、これらの効果が、動画教材を制作した先生方の意図と合致しているのか、ということを知りたいと思いました。
f:id:ict_in_education:20151001185839j:plain

 さまざまな学年、さまざまな単元でスマイル学習を行っているのであれば、すべての単元が同じ効果を求めて作られてはいないと思います。それぞれの単元の動画教材が、想定した通りの効果を挙げているのか、そこまで評価してほしいと思いました。

 時間をかけて作った動画教材だからこそ、想定した学習効果が何かを明確にしておいて、想定通りの効果をあげたのかを確認することが必要だと思います。効果が上がる単元や、効果があまりない単元があると思います。そうした成果自体が、先頭に立って実証研究をしている武雄市のもつ財産になるはずだと思います。(もちろん、こうして公開していただくことで、日本全国、誰でも見られるようにしてくださっているのも素晴らしく、大感謝です)


 p.85で、「4.5.5.7. 保護者のスマイル学習への理解度別・スマイル学習の効果に対する保護者の考え」が示されています。結論として、「回帰分析からも保護者のスマイル学習への理解度が深ければ深いほど、スマイル学習の効果があると考えている割合が高くなることが示される結果となった。」と書かれているんですが、ここはあまり釈然としません。
f:id:ict_in_education:20151001191329j:plain
 そもそも、高い正の相関がある、ということで、「理解度が深いこと」と「効果があると考えている」ことに関係がありそうだ、ということであって、因果関係のように「理解度が深ければ深いほど…、効果があると考えている割合が高くなる」とは言えないのではないかと思うのです。
 ましてや、スマイル学習に理解がなければ、そもそも「何を見たらいいのかがわからない」はずなので、効果も実感できないだろうと考えられますし。

 明確に、「先生方が作った動画教材は、◯◯について興味を喚起することを目的としています。お子さんは興味を持ったように見えましたか?」というアンケートにすればいいのに、と思います。そして、そうした具体的な評価であれば、先生方にとっても授業を良くするチャンスになると思うのです。

 授業を良くするためにタブレットを導入し、その効果を検証しているはずなので、ぜひ先生方の児童生徒たちの授業にフィードバックがかかるように設計をしてほしいと思います。


 興味をもった方は、ぜひ完全版である 武雄市「ICTを活用した教育」 2014年度 第二次検証報告書」にあたってみてください!

(為田)