教育ICTリサーチ ブログ

ICTを教育にどう活用できるか、現場目線でリサーチします。

西川純『すぐわかる!できる!アクティブ・ラーニング 新しい授業の方法がこの1冊でわかる!』ポイントメモ

 前回の続きです。3冊オススメしてもらった本の2冊め、西川純『すぐわかる!できる!アクティブ・ラーニング 新しい授業の方法がこの1冊でわかる!』を紹介したいと思います。
 前回紹介した本が、文科省の方針などマクロのところから書かれていたのに比べると、授業をどのようにすればいいのか、授業の方法に焦点をあてているのがこちらの本だと思います。

すぐわかる! できる! アクティブ・ラーニング

すぐわかる! できる! アクティブ・ラーニング

最初の西川先生からの檄!

 「まえがき」から、西川先生からの強いメッセージが書かれています。

これから起こるアクティブ・ラーニングに関わる一連の騒動は、勤務校の最年長の先生も経験のないことです。おそらく明治初頭の学制発布、終戦後の民主教育への転換に続く、日本教育の3番目の大転換になる可能性があるからです。少なくとも文部科学省はそうしようと考えています。
いままで文部科学省は日本の教育を変える際、学習指導要領を改訂してきました。文部科学省の伝達講習に都道府県の趣旨が伝えられ、そして各校ではそれを「無視」してきました。
教育困難校の場合は「そんなこと言ってられる状態ではないんだよ」、そして進学校や中堅校では「大学入試が変わらなければどうしようもないよね」と言って無視しました。でしょ?
しかし、今回のアクティブ・ラーニングでは、大学入試を変えることによって改革を徹底するという、いままで一度もやったことのないことを文部科学省はやろうとしています。
待ったなしです。(p.2-3)

 でも、だからと言って悲観して立ち止まってはいられない、というメッセージが続きます。

アクティブ・ラーニングを取り入れるのは大変です。しかし、アクティブ・ラーニングによって教師としての専門性とは何かを問い直すきっかけになります。そして、一流の教師の職能を獲得できます。(p.3)

 ピンチはチャンス。

アクティブ・ラーニングの授業イメージ

 アクティブ・ラーニングのひとつの形として、『学び合い』の授業イメージを紹介しています(p.41)。

  1. 教師が課題を伝える(5分以内)
    • 「全員が課題を達成するのが目標」と伝える。
    • 「わからないから教えて」と自分から動くことを奨励。
  2. 「さあ、どうぞ」と促し、子どもが動く(約40分)
    • 子どもは最初はまず自分が課題を解くため動かない。
    • 徐々に他の子に教える子ども、教わるために移動する子どもが出て、動き始め、グループが生まれていく(教師はグループを強制的につくったりしない)。
    • やがて、グループ同士の交流が始まり、多くの子どもが課題を達成する。まだできない子をサポートするメンバーがどんどん増える。
  3. 成果を振り返る(5分以内)
    • 「全員達成」ができたかどうかを振り返る。学習内容のまとめはしない。あくまでも、「全員が課題を達成する」という目標に対してどうだったかを振り返らせる。

 僕は、とてもおもしろそうだ、と思いました。実際にトライしてみたくなりませんか?準備が多くいるわけではない、シンプルな実践です。また、普段の自習などと大きく変わらないので、かりにあまりうまく行かなかったとしても、大失敗になるリスクが少ないのではないかと感じました。

 もちろん、どのようにすればいいのか、アクティブ・ラーニングのテクニックも紹介されています。(p.46-47)

  • まず、課題作りから始めてみよう
    • 子どもたちにその授業時間出やるべき課題を与える。問題の分量は、クラスのトップレベルの子どもだったら15分くらいで課題達成ができる分量(おそらく、いまの授業ペーストあまり変わりない分量)
    • 子どもたちにプリントで配布して、ノートに貼らせる(ノートへの書き写しの時間を省略)。事前に渡して、予習できるようにしてもOK
  • 「一人も見捨てない」と教師が語ること
    • 「一人も見捨てずに」と強調する=アクティブ・ラーニングの大事なポイント
    • 部活のチームを意識させる時に語っている言葉がけと同じ。「ひとり見捨てるクラスは二人目を見捨てる、二人を見捨てるクラスは三人を見捨てる。次に見捨てられる四人目は君自身かもしれない。そんなクラスにいたいか?クラスはチームだ。全員達成を目指そう」と語る。この語りがアクティブ・ラーニングの根幹。
    • 根幹がしっかりおさえられれば、課題が多少「ヘボ」であっても、クラスをリードする2割の子どもが補ってくれる。
  • 誰ができているか、誰ができていないかを可視化する
    • 黒板にその日の課題をシャープにまとめる。自習課題に近いものになる。
    • クラスが全員達成を目指すために、誰ができていて、誰ができていないのかを把握する必要がある。ネームプレートを黒板に貼って、「できた!」と黒板に書いて、それを大きな丸で囲む。自分ができたら、そこに自分のプレートを移動させるように指示する。これによって、誰ができて、誰がまだかがわかる。誰のところに教えにいくといいか、誰のところに聞きに行けばいいかがわかる。

 部活指導と同じようにアクティブ・ラーニングを考えるというのは非常におもしろい比較だと思いました。先生方とディスカッションしてみたい点だと思いました。

 続いて、アクティブ・ラーニングで教師がすべきこと(p.48-49)もメモしておきます。

  • まず、子ども自身の判断を尊重する
    • 強制的にグループを作らない。誰に教えてもらったら分かるか、誰に教えたらわかってもらえるかの相性を教師はわからないから。
    • 班を固定化してしまうと、お客さんになる子どもが出る。
  • 教師の言葉がけが重要
    • 教師は見守る。教えずに、子ども同士が関わりあうように仕向ける。
    • 遊んでいる子は「教師にどう思われようと気にしない子」。むしろ、いつも教師の指示に従う2割の子どもに語る。彼らに「全員達成」を求めて動かす。
    • 遊んでいる子がいたら、誰を見るともなく「遊んでいる子はいないか?遊んでいる子がいるのは残念だけど、それを知っているのにほうっておいている子は無罪か?仲間を見捨てている君たちでいいのか?」とちょっと大きめな声で話す。
  • 間違った方向に子どもが進んでいるときの声がけ
    • 机間巡視で間違った答えをノートに書いている子供を見つけたら、その子の脇で「う~ん、3番が間違っているな~。その問題を解けている子はクラスにいっぱいいるんだけどな~」と大きな声でつぶやく。

 この、「見守る」っていうのが、多くの先生方にとって難しいんですよね。つい、教えてしまう…(自省)

今後、起きるかもしれないこと

 最後に、「今後、起きるかもしれないこと」(p.87)が書かれています。このシナリオは避けたいシナリオです。導入が進んでいるICT(タブレット端末)がこのような形で前に出てくることもたしかに可能性としてはあります。

 今後はさらに危ういと思います。ある日、高学歴で専門職の保護者が数人一緒になって校長に面談を申し込みます。「クラスにはさまざまな子どもがいます。担任の◯◯先生が成績の中位の子に合う授業をするのは当然です。しかし、我々の子どもは◯◯大学を受験しようとしています。現状の授業ではレベルが合いません。そこでタブレット端末を授業中に利用し自習させてください。◯◯先生の授業を邪魔しません。ぜひお願いします」と丁重に申し入れるのです。
 校長は学校は勉強をするだけではなく、人間性の成長のためにあると言うかもしれません。しかし、保護者は「◯◯先生の授業のどこに人間性の教育があるのでしょうか?」と聞くでしょう。校長が言えるのは「対応を考えたいので時間が欲しい」というぐらいです。結局、学校は保護者の申し出を認めるということになります。
 そうなるとクラスのなかで勉強のできる子どもはタブレット端末で勉強をすることになります。さて、中間層の子どもと保護者はどう思うでしょうか?結局、ほとんどの子どもがタブレット端末を利用し、教師の授業を無視して勉強します。結果としていままでよりも個に応じた教育を受けることができるのです。こうしたことが、日本中に起こる可能性があります。
 個人が自分の点数を上げられさえすればいいという前提に立つなら、このIT社会のなかで教師は不要な職業になる可能性が高くなります。そうでない教育をしたい、そうでない教師でありたいと望むなら、アクティブ・ラーニング授業をやれる学校、やれる教師になるしか、道はないのです。

 こうした状況を知っておいて、そのうえで、授業をどう変えるかを考えることが重要だと思います。


 メモしたところ以外でも、授業の手法として詳細に、また具体的に書かれていますので、ぜひ読んでみてトライしてみるといいと思いました。

すぐわかる! できる! アクティブ・ラーニング

すぐわかる! できる! アクティブ・ラーニング

(為田)