教育ICTリサーチ ブログ

学校/教育をFuture Readyにするお手伝いをするために、授業(授業者+学習者)を価値の中心に置いた情報発信をしていきます。

STEM STUDY NIGHT #2 レポート(5):トークセッション

 11月13日(金)に、STEM STUDY NIGHT #2@さくらWORKSに参加してきました。STEM STUDY NIGHTは、FabLearn Asia 2015の関連イベントです。
 学校の先生、クリエイター、プログラマが集まり、「ものづくり」「STEM教育」「これからの教育」「デザイン思考」などをテーマにプレゼンテーションとディスカッションを聴いてきましたので、メモを公開したいと思います。


 今回は、トークセッションです。プレゼンテーションを行なった4人の方が壇上に並び、会場とのやりとりも含めて、「ものづくり」「教育」などについて語り合いました。
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 学校にどのようにSTEM教育を入れていくのか、というところから話はスタートしました。

  • “座学だけ”から“ものづくり”へ、という動きがある。日本の学校文化で、どのようにSTEM教育を有機的につなげていくか。そのプロセスはどう考えられていますか?
    • 理数教育は初等教育では日本が勝っている。大学院レベルだと逆転されている。アジアで見ると、日本と近いか。アメリカも、公立だとどうかな、と思っている。(沼田先生)
    • どれがいい、ではなく、いろんな人とつながって、交流していく機会を提供したいと思っている。(沼田先生)
    • ものづくりはおもしろい。問題解決云々ではなくて、ものづくりが楽しいからやっている。だから、言葉の壁を乗り越えやすい。(沼田先生)
    • 授業の中に入れようと思うと、壁は高い。教科教育以外をすべて、キャリア教育だと捉えて、それを授業と切り離している。そうすると、自由にできる。(金子先生)
    • 専門的なスキルがある人たちに講師として来てもらうことで実現できることはある。(金子先生)


「ものづくり」を学校で教えようと思えば、教える側=先生が教えられるのか、という問題が現れるように思われます。そこで、「先生に教える」ための取り組みについての質問が出ました。
 途中からは、壇上にいる方だけでなく、会場にいる先生と、高校生からも、意見を求めました。

  • 使う側のリテラシーが、ものづくりのときにも同じ問題が現れるのでは?教える側を教えるためにしている取り組みがあれば教えて下さい。
    • 電子黒板が使われていない現状と同じになってしまってはいけない。Kocriを使ってもらうために、「コピーする手間が省けますよ」「写真、次のクラスでも使えますよ」というのを丁寧に伝えている。リテラシーの高い先生は、自分でどんどん使う。「自分では無理」と思っている先生方に対して、丁寧に伝えていく活動をしている(深津さん)
    • オープンソースと同じように、「こういうふうにやってみましたよ」という記録が残ることで、同じ目線の人たちがすぐそこにタッチできる状況を作る、協力できる体制がある、みんなで切磋琢磨する、という状況を作ればいいのでは?(赤塚さん)
  • 教育の世界で、プログラマのノウハウ的なものは適用できるのか?先生の文化が許容できるのか?
    • 誰かがやったものでも、やってみればいいのでは。ただ、自分の担任している子どもたちを見られるかの眼力の問題だと思う。(沼田先生)
    • 神奈川の美術の先生、70名くらいでDropBoxを使って指導案を共有している。(会場にいらしていた先生)
  • デジタルの技術によって、「それらしく」「玄人っぽく」できてしまうのが、デジタル難民になってしまうのでは?(会場にいらしていた先生)
    • 授業がデジタルの方に行っているのに危惧している。
    • 自分の手で作ることが減ってきていると思う。手で作るのと、デジタルで作るのは、似て非なるもの。
    • どんどんパクればいいのではないかと思う。リミックスをしていけばいいのではないかと思う。
    • 「創造的に模倣させること」は非常に難しいと思う。
    • クリエイティブを生業にしているので、ひとこと言いたい。デザイン業界、ものをつくる業界は、真似のしあいみたいなのはある。淘汰されて、残っていく。真実として言えるのは、行き着く先が必ずある、クリエイティブには。Kocriなら、「先生にとって使いやすいか」ということ。シンプルにその一点だけをみつめていれば、プロセスは問わなくていいのではないか。結果、切磋琢磨して、ちょっとでも先生に使いやすいものに到達できればいいと考えている(深津さん)
    • 何を目指すかによって違うのではないでしょうか。手を動かしてみればわかる、「こんなところにこの線はありえない」みたいなものもある。質感を触れさせたいならば、デジタルではないだろう。

 トークセッションはあっという間に時間が過ぎました。STEM教育、ものづくりについて、さまざまなキーワードに触れることができたSTEM STUDY NIGHTでした。

(為田)