教育ICTリサーチ ブログ

学校/教育をFuture Readyにするお手伝いをするために、授業(授業者+学習者)を価値の中心に置いた情報発信をしていきます。

愛和小学校 × Ludix Lab「i和design冬期講習会」@東京大学レポート #7 ラップアップ&感想

 12月26日に、東京大学福武ホールにて、Ludix Lab公開研究会 愛和小学校 × Ludix Lab「i和design冬期講習会」@東京大学を開催しました。

 最後の才記先生の模擬授業の終わりに、Googleドキュメントを使って、参加してくださった皆様に感想を書いてもらいました。それをひきとって、ランチョンセッションに登壇したLudix Lab代表の藤本さんによるラップアップがスタートしました。
f:id:ict_in_education:20160106141127j:plain
f:id:ict_in_education:20160106141128j:plain

 以下に、感想で寄せられたものを抜粋していきたいと思います。

模擬授業だからこその良さ

 まずは、モチベーションが上がりました、という感想です。今回、愛和小学校の先生方に学校からWindowsタブレットiPadChromebookと全部を持ってきていただいて、それぞれを使うワークショップ、模擬授業をしていただいたからこその感想だな、と思っています。
 「模擬授業でお願いします」と言ったのも、実践報告ではなく、実際に参加者の皆さんに使ってみて、児童生徒の気持ちになって受けてもらいたかったからでした。模擬授業の中で、ICTがどういった役割を果たしているのかを実体験していただけたのが良かったかな、と思います。

  • 校長先生のpreziでのプレゼンはとても興味深く聞かせていただきました。まず、我々が当たり前だと思っていたことはやっぱり、考えなおすべきなのだな、というのが衝撃でした。
  • OSや端末にこだわらずに、どんどん導入すべきなんですね。全部の端末を触って思いました。
  • 新しい機器や環境を活用した学習活動を実際に見て体験することができて勉強になりました。新しいものを教育現場に取り入れていくことは実に愉しいと同時に、子供の学びに役立つのだろうか、という疑念を自分の実践でも常に感じながら、精力的にこれからあるべき教育とは、という問を立て日々研究と実践を行っています。様々な取り組みや環境が総合して学習の場を進化させていくと思っており、その一翼を担うであろう先進的取り組みを見ることができて、大きな収穫だったと思います。
  • 鳥獣戯画の授業をスクールタクトで受けて感想としては創造的なデザイン力や言語能力を伸ばす取り組みを学べたと感じる。授業中にリアルタイム同時に進行状況やコメントを見られるのは革新的でした。
  • 新しい道具、新しいやり方を、知れてよかったです。特に、コラボレーションができること、ネットワーク図で人間関係が可視化できること、がすごい、と思いました。
  • 最後の単元で、他者のものの見方を通じて自分の考えを深める、という目的は、隣や同じテーブルの方々とのディスカッションで実施することが出来たので良かったです。

f:id:ict_in_education:20160106141129j:plain

なぜ「冬期講習会」というイベントにしたか?

 愛和小学校の先生方に興味を持ちましたという声も多く見られました。こういった先生同士だからこそ感じられる、「あ、これいいな!」というのを知って欲しかったというのも企画意図としてあったので、非常にうれしい感想です。今回のタイトルに「冬期講習会」と銘打ったのは、まさにこうした先生同士のノウハウの盗み盗まれ、みたいなのがあるといいなと思ったからです。

  • 才記先生の細々なネタが勉強になりました。ペンにくじだったり、ここではこういうふうにコメントします、みたいなのが。
  • 一番関心をもったのは、愛和小学校の先生方です。全員20代とのこと。なのに、とても堂々としていて、わかりやすく、細部まで研究されているなぁと。私も教員として、やる気に火をつけさせていただいた気がします。明日からと言わず、今日から動き出します。
  • また実際に様々なデバイスを使ってのワークショップが、前回もそうでしたがとても勉強になり、来学期の授業でいろいろ活用の可能性を考えていきたいと思いました。前回の夏の講習のあと、ロイロノートを授業で活用し、特別支援の子どもたちも自分で活用ができるようになりました。今回もグーグルアースの活用がすぐにできそうだなと思いました。先生たちのスキルの高さもすごいです!
  • 新しいやり方や道具をつくりだすのは時間がかかるが活用方法をかんがえるのは、先生でもできる、やってほしいと思います。

「楽しく、学ぶ」という軸との融合

 僕とLudix Lab仲間である藤本さん、福山さんにお願いしたランチョンセッションについての感想もありました。
 一方で、「アカデミックな理論と実践紹介が分かれてしまっていて残念」という声もいただきました。これは仕掛け人である僕=為田の設計ミスでした。すみません、次回はもっと融合するようにしたいと思います。ご意見、ありがとうございます。

  • 初めの松田先生のお話や福山先生、藤本先生のゲーミフィケーションのお話がとても新鮮で、学校が子どもたちにとってもっと楽しくてワクワクする場になっていくことが、本当に必要だとあらためて感じました。
  • 日本には、学習においても仕事においても、まだまだ「厳しい状況を乗り越えてこそ身につく胆力」が重要視される文化があると思いますが、本日のランチセッションで紹介された楽しい授業とは反する部分も多いのか、それとも楽しい授業を通じてそういった我慢力のようなものも身につくのか、そもそもそのような力が必要なのかをぜひ知りたいです。
  • 今日のはじめに行われた「朝会」のなかで、アカデミックな理論と実践をつなぐという話がありました。実際の講習では、アカデミックな理論に関する話(ランチョントーク)と実践紹介とが、分かれてしまっていたところが残念でしたが、私個人にとっては、現在、ICTと教育、そしてゲーミフィケーションに関わって行われている議論を網羅的に知ることができる良い機会になりました。

f:id:ict_in_education:20160106141130j:plain

教育ICTの普及は、アドオンでできる?できない?

 一方で、考えなくてはならない点についても感想をいただきました。実は、僕は松田校長とはよくこの話をします。ちょっと視点が違っていて、松田先生は「先生は変わらなければならない。今の上にICTを載せる=アドオンするのでは、21世紀に生きる子どもたちに教えられる先生は生まれない。新しい教育はできない」という意見です。僕は、「今の先生がしている授業の延長上に、ICTを入れることで、授業の良さを拡張する、学びのスタイルや教え方のスタイルを多様化させる。アドオンさせていかなければ、全国的には広がらない」という意見です。松田先生と話をするたびに、この議論になります(笑)でも、どちらが正解ということもないのかな、と思っています。それぞれの学校の状況や、目指すところによって変わるのだと思っているからです。
ただ、「どう広げていくか」ということについて、どのような言葉を選んで言っていくのかを考えることは大切だな、といつも思っています。今後も、松田先生とさまざまな話をしていきながら、こうした動きを加速させつつ、横に広げていく活動ができればと思っています。

  • ITを使う側のリテラシーも求められるので日常的にアンテナをはってスキルをあげたい。勿論、新しいものに飛びつくだけでなく基礎基盤も固めることも大切。
  • モチベーションの問題は、新しい道具&やり方がでてきても、考えなくてはならない課題だと感じました。
  • 校長先生が午前中の「講話」のなかで、「PC・タブレットを用いることが目的化している」という批判に対して「タブレットを使ったこともないのにそのような批判をするべきではない」というような反論をなさっていたと思いますが、本日の講習全体を経験してみて、そのような反論は、非常にもったいないのではないか、と感じました。愛和小学校にかかわられている先生方は、ICT的なツール、ネットワーク的なツールでいかに学習を有意義なものにするかを丁寧に考えていらっしゃるのではないかと思いました。むしろ、「タブレットを使うことが目的化されていない」ことを踏まえた反論をしていくべきではないか、と思いました。もちろん、現在行われている実践を、多忙な現場の先生方に教育・学習論的に意義づけることは難しいのかもしれません。そのような意味で、私のような教科教育学研究者の行うべき仕事をつきつけられたような気がしております。来年に向けた私自身の課題として、真摯に考えていきたいと思います。

 ぜひ、アカデミズムの方向から、「現在の先進的な実践事例を教育・学習論的に意義づける」動きが出てくれればいいと思っています。

まとめ

 今回、先生方向けのイベントとしては、日程や参加費などの問題で、かなりチャレンジングだったと思います。当日は、無料で学校公開などがあるなか、しかも年末の土曜日に、参加費をいただいて実施をしたのですから。結果、熱心な17名の参加者の方に来ていただけて良かったと思っています。

  • 驚きと感動の連続です。もう少しお支払いが必要でしょうか!?今からすぐ始められるアイデアが満載でした。これを学校に持ち帰り、どうやって同僚の先生たちに広めていこうかすでに思案しています。
  • 今日の回に申し込むまで、とても不安に感じていた。年末・休日・有料・・・。とてもネガティブな条件だった。しかし、セッションの方々の名前を拝見し、申し込む気持ちが固まった。参加してみて、とても満足しています。ゲームに関するものや、ICTに関するものの使い方に終始するのか、と予想している部分はありましたが、授業が連想され、どのように指導がされているのかイメージできるとてもよい時間でした。ツールやデバイスの観点も増えたので、年末年始に、何かしら調べてみようと考えています。

 先生(と思しき方々)が、週末の書店で教育書の棚の前でたくさん本を買っています。また、いろいろな教材を自腹で購入したり研究したりしている先生もいます。そうした先生方の学ぶオプションとして、「先生方が切磋琢磨するイベントに来る」というのを増やしたかったので、冬期講習会を開催しました。そうした意味では、ある程度の成功はしたのかな、と思います。今後は、これを継続していき、夏には全国ツアーなどという野望もいだきつつ、参加者も広げていく、ということを目指していきたいと思います。

 愛和小学校の先生方とは、次の展開についてもいろいろ話をしています。「また、あの先生の授業が見てみたい!」というふうになるといいな、と思っています。また夏期講習会や冬期講習会などをするかもしれません。その折には、お知らせをしますので、ぜひまたよろしくお願いいたします。

 最終回、#8へ続く。
blog.ict-in-education.jp


(愛和小学校 × Ludix Lab「i和design冬期講習会」@東京大学 仕掛け人・為田)