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福生市立福生第三小学校「やるKey」実証研究 No.1 研究授業(2016年2月19日)

為田が開発に参画している、凸版印刷の算数のアダプティブラーニングシステム「やるKey」についてのエントリーです。


 2月19日に、福生市福生第三小学校(東京都福生市)で、凸版印刷が開発している、タブレットを利用した算数のアダプティブラーニングシステム「やるKey」の研究授業が行われました。授業後に、福生市の情報教育推進委員会が開催されることになっていて、情報教育推進委員の先生方にも教室で授業を見ていただきました。
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 3年2組の担任の鹿子木先生が、研究授業で行ったのは、「3年のふくしゅう」でした。授業の説明用スライドを作り、教室の前にプロジェクタで投影しながら、授業を進めていきました。
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 「今日の学習」で、どの部分を復習するのかを、スライドで表示します。「たし算とひき算のひっ算」「分数」「かけ算のひっ算」の3つを復習しますよ、と鹿子木先生は児童に伝えます。
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 やるKeyでは、先生のアカウントで一人ひとりの学習履歴、学習内容、正答率などを見ることができます。そのため、宿題としてやってきてもらった小単元の習熟度について授業前にクラス全体の習熟度を確認して、授業を行うことができます。
 今回の研究授業では、モニターにクラス全体の習熟度の様子を映し出して授業の中で説明に使いました。やるKeyでクラス全体の習熟度や、それぞれの単元で問題を初めて解いた時に比べて、正答数が増えていることを確認した後で、クラス全体で、課題となっている3つの単元「たし算とひき算のひっ算」「分数」「かけ算のひっ算」について、黒板とスライドを使って順に確認をしていきます。
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 筆算の計算手順などが、スライドショーでアニメーション設定されているので、スピーディーに復習が進んでいきます。アニメーションで解法を復習するだけでなく、プリントで問題に取り組んでもらい、画用紙を何人かの児童に配って解答してもらい、黒板にマグネットで画用紙を貼る指導も行っていました。
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 「たし算とひき算のひっ算」「分数」「かけ算のひっ算」の3つの単元の復習が終わったら、iPadで一人ひとりがやるKeyで自分の課題に取り組む時間です。鹿子木先生は、「やるKeyタイム!」として授業を区切って取り組み始めました。
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 このようにやるKeyを通常の授業にプラスアルファとして使うことで、児童が算数の問題により多く取り組めます。すべてをiPadの中で学ぶのではなく、黒板も使い、教科書やドリルやノートも使い、それにプラスしてiPadを使う、というスタイルの授業が、全国の実証研究校で行われています。
 やるKeyは、東京書籍の教科書に完全に準拠していて、1学年あたり教科書の5倍の問題数を収録しています。そのため、教科書の問題に合わせた問題を出題することができます。また、問題を間違えると、児童一人ひとりに合わせて、間違えた問題の類題が自動出題されるようになっています。間違えた問題を分析して、つまずいているところを特定すると、そのつまずきを解説する問題まで自動的に戻っていきます。例えば、たし算の筆算を間違えたときには、その筆算のなかに「くり上がりが2回あると間違えやすい」「和の中に空位があると間違えやすい」などのようにどのような間違える要素があるかを想定していて、多くの問題に取り組むうちに、どういった要素でつまずいているのかが特定され、その間違える要素を復習してもらうように設計してあります。児童もそれを知っているので、自分の不得意な単元を選んで取り組みます。
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 やるKeyでは、筆算はiPadの中で解きません。鹿子木先生は計算用紙を配布して、児童たちはその計算用紙に計算をし、答えをやるKeyに入力して採点してもらいます。実証研究の初期は、「これはちょっとわかりにくいのでは…」と言う先生もいましたが、児童たちはすぐに慣れて、誤操作もほとんどありません。
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 問題を解き終わった児童は、「先生、丸付けして!」と言わなくても、次の問題が自動で出題されますので、次々と問題に取り組んでいきます。
 たくさんの問題が自動出題されますが、ただ同じ小単元の問題が繰り返し出題されるわけではありません。多くの問題に取り組むうちに、自分の苦手を特定し、苦手を克服する問題が自動出題されるということです。こうした、先生方が個別に指導するときにしている出題方法を、デジタルで実現しているのが、やるKeyが実現しようとしていることです。

 No.2へ続きます。
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(為田)