教育ICTリサーチ ブログ

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明光学園高等学校 特別授業「地震と人間」レポート(2016年4月18日)

 Facebookで14日夜に発生した熊本地震をうけて、福岡県大牟田市にある明光学園高等学校の前川修一先生が、「地震と人間」というテーマでグループ学習をされたそうです。
 こうした社会の動きと連動して学校で授業の中で話し合いをすることは非常に重要だと思い、前川先生にお願いして、板書の様子と、生徒たちからのリフレクションの転載をご許可いただきました。

特別授業「地震と人間」

 以下、前川先生がFacebookに書かれた文章です。

出勤しています。
1時間目は高校3年の倫理でしたので、内容を急遽変更して、「地震と人間」のテーマでグループ学習しました。
明光学園は福岡県大牟田市にあり、私の住む玉名市から約30km、熊本市内からは60㎞離れた場所にあります。
しかし、地震の影響はあちこちにあることがわかります。
私からは、極限状態にこそ人間性がもっとも現れるものだと説明し、あらためて、私たちができることは何か考えようと呼びかけました。

 前川先生は、Facebookに板書の写真もアップしていましたので、こちらも許可をいただきまして、転載いたします。

 板書を見ると、1.震災直後の気持ち、2.周囲の現状、3.私たちにできることは何か?とディスカッションを進めていった様子が見られます。
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 自分たちにできることは何か?と考えているときに、「被災者と話をする」という言葉が黒板に書かれています。そして、「実際に気が楽になった」と書かれているのを見ると、学校という場で授業という形で行うことの意味がここにはあるのかな、と感じました。
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 高校3年生の倫理の授業で、こうした授業をすることは意味があると思います。
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生徒からのリフレクション

 生徒のリフレクションも、前川先生からお送りいただきましたので、それもあわせて記録したいと思います。

  • 今回の地震は他人事ではなかったので考えさせられる事が多かったです。私達が被災者の方の事,現実を忘れないようにする事が第一だと思います。
  • こんな震災はテレビの中だけだと思っていました。早く復興できるように私達はできる限りのことをしなければならない。
  • 今回の地震の話は身近で,他の災害の被災者の方の気持ちが本当の意味で理解できるものだった。(話し合いをすることで)自分の思いつかないような考えが出て気づかされることが多かった。
  • 私が思っている以上に熊本が大変な事になっていること,自分にもできる事がある,ということ。
  • 声かけなどで,地震のことをすこし忘れる時間や気を楽にしてあげるような心のケアが大切だと思いました。
  • 今回の災害で,熊本・九州が被災地と呼ばれていることに,すごく不思議な感覚を覚えたし,近さを実感しました。私に出来ることは募金や話を聞くことくらいですが,その小さな助け合いの積み重ねが大切だと思いました。
  • とても近いところでの大地震で,みんなと話していてその規模の大きさ・恐ろしさを感じました。わたしにできることがあったら,何でもさせていただきたい,と思いました。(クラスのみんなと話を分かち合えてよかったです)
  • 大きな地震があってとても怖かったし,熊本の状況を知ってショックを受けました。その時の気持ちや状況を皆で話し合えたので,そこから自分にできることは何か,何が必要かを一人一人が考え,お互いが支え合ということが何よりも大切だと思いました。
  • 今回の地震についてきちんと話し合うことができて,改めて現状を確認することができた。(被災者のためにお祈りしたいと思います)
  • 皆の助け合いが,とても大切だなと思いました。
  • 地震など大変な時にこそ協力し合うことが大事だと思った。日常が大切だと思った。
  • 土曜日に買い物に出ましたが,給水袋や発熱剤など,災害時に必要な道具はほとんどなくなっていました。そのとき,やっと実感がわきました。
  • 私にできることは多くはないけど,自分ができることで少しでも人がたすかるならしたいです。
  • 地震”に対して,私は恐怖しか感じなかったけど,私の班には4人中2人そうとらえていない人がいて,とらえ方もいろいろだなと思った。
  • 何気ないことでもいいので,自分たちに出来る事があることが分かった。もう少し現状を把握しておきたい。
  • 自分の所への被害が比較的少なかったので,地震への恐怖はなかったが,周りが大変だと知って,もっと目を配ることだと思った。
  • 物質面だけでなく精神面でも苦しんでいる人がいるということ。
  • 私は自分のことでいっぱいになって,今被災地がどうなっているのか知らないことが多かったので,もっと今を知り,考えたいなと思いました。
  • 被災され傷ついた方々がたくさん,そして身近にいる。自分たちにできることが少しでもある。(よくマスコミのヘリや車のせいで物資が届きにくくなったとききます。情報をはやく正確に知らせることも大切ですが,それよりもっと大事なこともあると思いました。)

授業をやってみて、前川先生のコメント

 前川先生に、「授業をやってみて、生徒たちの様子はどうでしたか?また、やってみての感想はどうでしたか?」と質問してみました。

実は私は熊本県内に居住しており、半分被災者です。ですから、この1時間目のこの授業は正直つらかった。きちんと授業を行える気持ちがあるか自分に何度も問いかけました。けれども、いましかやれないことがある。こうして学校に出て来たからには、歯を食いしばってでもやらねばならないことがある、と思い直して教室に臨みました。この学校には熊本県内から通っている生徒もおり、また相当遠隔地の生徒もいて、同じ九州とはいえ地震の印象は違っています。しかし、グループで、感じたこと、身の回りで起こったことをシェアすることによって、見えてきたものがあったり、あるいは精神的にも落ち着く効果もあったようです。私の周りで起こっていることを正直に伝え、生徒たちがどう感じ、どう行動に移すのか様子をみてみました。「話す」ことで、生徒たちの間に「自分ごと」としてこの震災を捉える視点が出てきたことは効果があったと思っています。この授業はこのあとも定期的に続けていきたいと思っています。

 こうして、「こうした授業をしている学校があります、先生がいます」ということを、ICTを通じて発信することは、授業展開のノウハウを共有することに繋がると思い、前川先生に無理なお願いをしました。
 前川先生、ご快諾をいただきまして、本当にありがとうございました。

(為田)