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教育ICTリサーチ ブログ

ICTを教育にどう活用できるか、現場目線でリサーチします。

「やるKeyでできること、やるKeyが変えること」@EDIXミニセミナー(2016年5月18日~20日)

EDIX やるKey 講演・研修 教育ICT利用の目的 目的-5. 進捗、理解度確認 目的-6. 教材拡充 目的-8. 家庭との情報共有

 5月18日(水)~5月20日(金)に開催された教育ITソリューションEXPO(EDIX)の、凸版印刷・東京書籍ブースにおいて、「やるKeyでできること、やるKeyが変えること」というタイトルで、ミニセミナーを行ないました。やるKeyは、為田が開発に携わっている、凸版印刷が開発しているアダプティブ学習サービスです。
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 当日会場では、ゲストスピーカーを招いた回もあったので、毎回同じセミナーをしていたわけではなかったのですが、ベーシックなセミナー内容を、スライドに合わせてご説明したいと思います。
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やるKeyとは何か?

 まず、やるKeyとは何か?ということについて説明します。やるKeyは、“子どもたちの学力向上につながる「努力する力」を手助けするアダプティブ学習サービス”です。キーワードとなるのは、「アダプティブ学習」というところです。これは、学習者一人ずつにあう問題を出し分け、また答えによってさらにそこから問題を出し分けていく、一人ひとりに適応した学習を提供する仕組みです。
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 一人ひとりにあった問題を出していくこと、間違えるポイントによって戻すポイントを適切に判定すること。そのために、東京書籍の教科書づくりのプロフェッショナルな知見を、デジタル化するにあたって取り入れているのが最大な特長と言えると思います。

レコメンド機能で学力を上げたい

 やるKeyには、大きく3つの機能があります。順に説明していきますが、まずいちばん左のレコメンド機能。これは問題を出し分けるために、次の推奨問題を出題するための機能です。
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 やるKeyは、ただ「楽しく勉強する」ことを目指しているのではなく、わからない子に、「わかった!」と感じてもらい、成長実感を持ってもらい、学力向上を実現することを目指しています。

 例えば、次の問題を見てみましょう。719×14の筆算問題が出題されます。
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 この3桁×2桁の筆算問題を間違えると、多くのデジタルドリルでは、この問題が含まれている大問に含まれる練習問題を何度も何度も出題するようになっています。
 ですが、学習者の立場からみると、さっき間違えた問題をもう一度そのまま出題されても、多くの場合は「やはりわからない」ことになってしまいます。

 学校の先生は、児童が書いた誤答を見て、もっと細かく指導をしています。児童の誤答を見て、「どうやって間違えているのか、どこでつまずいているのか」と可能性をひとつずつ検討していけるように、次の問題を出題していると思います。そうすることで、「ああ、ここが理解できていないんだな」「ここでつまずいているんだな」と認識し、それに従ってまた次の問題を出題していると思います。こうした細かい問題の出し分けができなければ、先生が現在している出題よりも質が下がるということになり、デジタル化する意味はあまりありません。

 やるKeyでは、この筆算1問についても、「ここで間違えているかもしれない」というつまずきポイントを設定しています。例えばこの問題であれば、以下のようなつまずきポイントのいずれかによって間違っているという可能性があることになります。

  • 3位数×2位数の筆算ができない
  • 2位数×2位数の筆算ができない
  • 4の段のかけ算
  • 部分積を作るときにくり上がりあり
  • 部分積が4桁
  • 1の段のかけ算
  • 部分積が3桁
  • 波及的繰り上がり
  • 積に空位がある
  • 部分積を加える時にくり上がりあり

 こうした「つまずいているかもしれない」ポイントを複数挙げ、次の問題、その次の問題、と出題していきながら、どこでつまずいているかを特定する仕組みが、やるKeyにはあります。こうした出題をするために、膨大な量の類題を収録しています。
 また、問題量だけでなく。学年をまたぐこともできるように設計がされています。例えば、現在の教室では、5年生の教室で3年生の部分でつまずいている児童がいたときに、「では、3年生の問題をやってみよう」とすぐに3年生のプリントを渡す、というのは難しいと思います。このように学年をまたいで問題を遡ったりして出題することは、クラス単位では先生方の大きな負担となりますので、その部分をやるKeyで代替したいと思っています。
 やるKeyであればすべての学年の問題が収録されているので、5年生の教室で3年生の部分でつまずいている児童には、3年生の範囲まで自動的に戻った問題を出題することもできます。このようにしっかりとつまずきポイントを特定し、復習させることで、学力が上がり、「勉強したらしっかりできるようになった」という成功体験をすることができると考えています。
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目標設定機能で、努力するための最初の一歩を手助けしたい

 こうして学力向上のために、レコメンド機能を使うわけですが、「点数が上がる」「プリントで◯の数が増える」というところにいたる前に、先に「努力して学習量が増える」という段階がなければなりません。
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 そのために、2つ目の「目標設定・確認機能」を用意しています。やるKeyでは、最初に必ず「どれくらい勉強する」ということを自分で設定するようになっています。目標設定の方法は、「何分勉強する」と時間で設定する方法と、「何問解く」と問題数で設定する方法があります。児童にはどちらでも、自分の取り組みやすい方でチャレンジしてもらいたいと思います。
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 目標をきちんと達成できたかどうかは、下のような画面で見ることができますので、「あとちょっとだ!」とがんばってもらえるようになっています。
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 勉強する時間や取り組む問題数が増えても、全員の点数がすぐに上がっていくわけではありません。でも、「点数はまだ上がっていなくても、決めたことはできるようになってきた」「点数はまだ上がっていなくても、昨日よりも少しだけど勉強した時間が多くなった」というふうに、自分に自信をもってもらいたいと考えています。
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履歴確認機能で、先生に教室でほめてほしい

 児童がどれくらいの問題に取り組んだか、どれくらいの時間勉強したか、という記録は、デジタルで記録をとるのは簡単です。先生も児童に教室で聞き取りをしたり、紙で記録をしたり、不可能ではありませんが、労力が非常にかかりますし、それを1年間続けるのは並大抵のことではないと思います。ですが、先生が「家庭でどのくらい児童が勉強をしているのか、それも知って声かけをしたい」という思いに答えるために、学習の記録をとることがデジタルでできるのであれば、先生から児童への声かけをより深めることができるのではないかと思います。
 そうした記録をとる部分をデジタルに任せた先生には、より重要な役割があります。それが、3つめの機能である、履歴確認機能です。がんばった子どもたちに、承認を与えてほしいのです。誰から褒められるのがうれしいかと言えば、僕は教室で先生に、みんなの前で褒めてもらうのがうれしいと思います。
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 これまでならテストの点数が上がらなければわからなかった変化ですが、やるKeyの学習履歴を見れば、点数が上る前の些細な変化についても気づくことができると思います。そこに気づいて、子どもたちに声かけをしてあげてほしいのです。

 また、やるKeyでは、下のような画面で、子どもたちの習熟度を見ることができます。目当てごとでの習熟度を朝、職員室で見ることができれば、“その日の算数の時間の授業設計”を変えることができます。そうして、子どもたちが「わかった!」という声を上げることが増えること。そうなることで、「勉強って、意外と楽しいじゃん!」と思ってくれる児童が増えることが大切だと思っています。
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実証研究でわかってきたこと

 昨年のEDIXでは、実証研究に協力してくれる自治体はまだ2つだけでしたが、今年度はその他にも多くの学校に参加していただくことができました。そうして、ログを見たり授業を見たりしていると、わかってくることがありました。それが、次のスライドに書いたことです。
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 最初の「学習時間が長い方が、習熟度が上がる」「持ち帰らせることで、取り組む問題数が増えて、習熟度が上がる」というのは、まあそうだろうなという実感が改めて裏付けられた、という形かと思います。
 注目したいのは3つめ。「先生の声かけにより、成果は全然違う」ということです。同じ学校、同じ学年団に、同じように僕が説明をしても、ある一定期間を終えた後の成果には大きな差が出ます。これは、「どれだけ声かけをしているか」「どのような声かけをしているか」によって変わってくるのだろうと思います。つまり、結局は先生が教室でどのように子どもたちにやるKeyを伝えるのか、ということだと思いっています。

 こうしたことを考えると、ときどき質問でいただく、「やるKeyがあれば先生は要らないのか?」という問いがまったく意味がないことに気づきます。やるKeyをどう算数の授業に組み込もうか、やるKeyで見られるさまざまなデータをどのように読んで、どのように子どもたち一人ひとりに合わせて声かけに活用するか、それこそが重要なのです。

やるKeyの今後

 今回のEDIXでも、本当に多くの方にブースを訪れていただき、やるKeyを実際に触ってもらいました。

 やるKeyを開発、提供している凸版印刷株式会社 教育ICT事業開発本部の菊地尚樹本部長に、今回のEDIXについての感想を訊いてみました。

今回のEDIXでは「聴いて」「触って」頂くことにポイントを絞りました。開発に深く関わってくれている為田さん、東京書籍の皆さん、そして実証研究に関わってくださった教育委員会、学校の皆さんの「生の声」を聴いていただく、そして完成した「やるKey」に実際に触れていただく、それが「やるKey」の魅力をお伝えする最適な方法だと考えたからです。
おかげさまで1日7回のブース前ミニセミナーは毎回大盛況。多くの皆さんに「やるKey」を体験していただけました。例えば、全ブースをじっくり回っていらっしゃった教員養成専攻のゼミの皆さんから「いちばん優れたサービス」と言っていただけたんですが、日頃お目にかかれない皆さんに、そんなお話を直接聴けるのもこのイベントの良さだなと思っています(笑)

 今後、やるKeyが日本の教育において、どのような貢献をしていきたいと考えていますか?

為田さんもご紹介してくださったように、「やるKey」は先生方がお子さん達に学習の基礎基本をご指導されることを徹底的にお手伝いするサービスです。今後は算数以外に国語、英語にも教科を拡大してゆきますが、私たちの「やるKey」が特に中下位層のお子さんたちの「やる気」「学力」の向上の一助となり、「教育による貧困のスパイラルからの脱却」に取り組んでいらっしゃる教育現場の皆様のお役にたてれば本望です!

 やるKeyは、いま流行りの「アクティブ・ラーニング」とは程遠いものです。目指しているのは、基礎学力をいかに上げるかというところ。そこに向けて凸版印刷と東京書籍が協働でがっちり取り組んでいるサービスです。ですが、基礎学力をしっかり持ち、「勉強すればできる」という自信を持ち、「学ぶって楽しい」という思いを持っている子でなければ、アクティブ・ラーニングの場において、主体的に学ぶアクティブ・ラーナー(Active Learner)にはなれないと思います。まず、ここの部分をしっかりと積み上げて、そこからアクティブ・ラーニングなどのステップへ進めていければと考えています。
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 2016年度も、さまざまな実証研究が実施されることが決まっています。また来年度のEDIXで、実証研究に基づいた発表ができればと考えています。
 個人的に多くの時間を割いて作ったつまずきポイントの仕組みが、多くの学習者のデータによって実証される部分とブラッシュアップされる部分があるのだろうとワクワクしています。また、それが東京書籍の「教えるノウハウ」にフィードバックがかかっていくことにもワクワクしています。

 まだまだ、やるKeyはこれからですが、非常に骨太な学力向上を助けるツールになれるのではないかと思っています。興味がある方は、ぜひ為田までコンタクトをいただければと思います。

※スライド上の画面は、デモ画面です。

(為田)