2016年5月25日に、九州大学伊都キャンパスにて行われる、松永正樹先生(九州大学ロバート・ファン/アントレプレナーシップ・センター (QREC) 特任准教授)の授業を取材に行ってきました。
キャンパス外からも参加するグループディスカッション
ここでグループディスカッションのスタートです。九州大学の他のキャンパスからの参加者もいるので、iPadでビデオ通話をつないで、グループに参加する学生もいます。松永先生は、「外部から学生が参加することで、多様性が生まれる。それは学びの環境としてとても良いことです」と言っていました。
同じ要領で、九州大学外からもゲストスピーカーを呼ぶこともできるので、いずれそうした授業に発展させていきたいと松永先生。会計ファイナンスを実務で使っている社会人や九大OBがグループディスカッションに参加する日は近いかもしれません。
キャンパス外から参加をしていても、オンラインに授業で使う資料などはすべて用意されているので、ほとんど問題はないように思いました。
グループディスカッションでフリーライダーを減らす方法?
グループディスカッションの後で、再度クイズの答えを回答してもらいます。このとき、「グループごとに意見を入力」ではなく、グループディスカッション後に「個人としての意見を入力」させるのが松永先生のノウハウです。
実は以前は、グループでの意見を求めていたそうですが、そうすることでどうしてもリーダーが生まれ、逆にディスカッションが落ち着くのを待ってしまう学生が出てしまったそうです。そうならないように、今はグループディスカッションをした後でも、回答自体は個人ごとにさせているそうです。グループの議論を参考にして回答するもよし、あくまで自分の元々の意見を貫くもよし、とすることによって、他人任せで考えることをやめたりせず、グループワークでしばしば問題になる「ただ乗り」「フリーライダー」の問題は減ってくるということです。
先生はlearning catalytics上で1回めと2回めの回答を簡単に比べることもできます。学生それぞれが回答を入力した後、どのように授業を進めていくかを、回答の分布を見ながら設計しておくことができます。
個人情報端末を気軽に使う学生たち
松永先生の授業では、「写メってください」「ググると出てくる」などのような指示がポンポン出てきます。こうしてICT機器を使いこなすのは、大学の授業ならではだなと思いました。実際に計算式の紹介画面などでは、みんなiPhoneやiPadなどを取り出して撮影をしています。カシャカシャと大きな音がなりますが、先生が「撮影していい」と言っているので、まったく問題ありません(そう長い時間撮影が続くわけでもありません)。
普段からこうした使い方をしているでしょうから、まったく苦労もありません。撮影したデータをどのように使うかも、学生それぞれによってまったく違うと思います。Evernoteなどに貼り付ける学生もいれば、Googleフォトなどクラウドに授業ごとにフォルダを作ってまとめている学生もいるかもしれません。
ノートPC、電卓、iPhone、ノート、さまざまなツールを駆使して考える。そうした実践に近い形でクイズに取り組んでいるようすが授業中にたくさん見られました。
解説動画はいつでも見られる
松永先生の授業では、基礎的な知識に関しては5~8分くらいの短い解説動画が用意されています。視聴数がいちばん多いのは授業開始直前とのことでした。8分くらいならば、家で見るよりも授業前の最もモチベーション(あるいは危機感)が高いときに見るのがいいかもしれないと思いました。
また、クイズの難易度がだんだん高くなってくると、企業ファイナンスにまつわるさまざまな数字を計算しなければなりません。そのために、授業中に再度解説動画を見なおしている学生も多くいました。一度見ているからこそ、タイムラインのところをドラッグしてサムネイルを表示させながら、自分が聴きたい説明のところを的確に探して、解説を見なおしているようでした。
No.3へ続きます。
(為田)