教育ICTリサーチ ブログ

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【レポート】ROCKET親向けセミナーに行ってきた

 5月28日(土)に、異才発掘プロジェクトROCKETの親向けセミナーに参加してきたので、セミナー内容と感想をレポートします。

異才発掘プロジェクトROCKETとは…
突出したの能力があるものの現状の教育環境に馴染めず、不登校傾向にある小・中学校生を選抜し、継続的な学習保証及び生活のサポートを提供するプログラムです。
将来の日本をリードしイノベーションを起こす可能性のある異才を育む教育環境を通して、創成することを目指し、日本財団東京大学先端科学技術研究センターとの共同プロジェクトとして2014年にスタートしました。
(サイトより引用)
http://rocket.tokyo/about/

 セミナーは、本プロジェクトの教育プログラムを開発し、実際に子どもたちにメンターとして指導もしている、福本理恵さんがご登壇されていました。今回は、ROCKETの教育プログラムの1つである「農」と「食」の活動の中で生きるための知恵を学ぶ「Life Seed Labo」を事例としてお話されました。生きるために欠かせない料理・食事を主軸にして、国語・算数・理科・社会へと結びつけた教科横断的な学びになるように設計されているとのことでした。教室はガーデンとキッチンとし、子どもたちはiPadを使って、活動中に湧いてきた疑問を調べたり、観察したことを記録したり、まとめるときに使うようです。
http://doit-japan.org/lifeseedlabo/

 セミナーで紹介された「Life Seed Labo」のプログラムは、4日間のピザ作りを通して、国語・算数・理科・社会を楽しく学ぶというものでした。
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 1日目(国語)では、ピザの材料であるトマトについて事実と意見を区別して、解剖レポートをまとめることをします。例えば、「トマトは甘酸っぱい」ということを、誰もがみとめる事実なのか、それとも個人的な意見なのかを区別して話すことができるように、トマトについての枠組みをまとめます。作文や論文で必要となる事実と意見を区別して書くことや枠組みを設定してからまとめるということを、ピザ作りを通して学びます。
 4日目(算数)では、コスト計算をしながら食べたくなるようなピザをデザインします。材料は細かくカットされた状態のものの単価がリスト化されているので、小数点のたし算やかけ算の練習になります。子どもたちは、予算内で理想のオリジナルのピザを作るために、集中して計算に取り組むようです。

 「ピザを作る」というゴールに対して、学習目標を手段として設定することで、子どもたちの学ぶ意欲や意味を持たせているのだなと思いました。弊社で開発するカリキュラムも、学習目標を取り組むことに必然性が出るように設計しているので、学習目標を子どもたちにとってのゴールにしない手法には、とても共感を持ちました。

▼子どもたちがデザインしたピザ
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 そして、最後には、家族をお客さんとして、パーティに招くことで、おもてなしとは何かを考え、自分が考え行動したことで感謝されるという経験ができるようにしているようです。

 作ったものを、自分たちだけで食べるのではなく、他の人に提供して、その反応を体感させることもいいなと思いました。感謝され、役に立ったという経験が自己肯定感にもつながると思います。逆に最初からターゲットを決めておくことで、ターゲットの分析や試食会などを実施することでマーケティングの一部も学ぶことができたり、自分本意ではなく、ターゲットが本当に喜ぶものを提供することの大切さを学ばせることもできるなと思いました。

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 ROCKETの教育プログラムとして、子どもが楽しいと思える枠の中に教科の視点を入れ、学びになるように設計したり、子どもの好奇心をくすぐるように、珍しい料理や食材を使うようにされているとのことでした。

 ここについても、非常に共感しました。子どもたちは楽しい!おもしろい!と思ったものについては、誰から言われなくてもやるものです。「やめなさい!」と言っても何時間もゲームをしたり、ゲームに出てくる数十種類のキャラクターの名前や特徴についても容易に覚えてしまいます。楽しい!おもしろい!という感情は、何よりも学ぶ原動力になるのだと思います。

▼他の料理や食材を通して学べる学習目標の例
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▼ROCKETの学びのポイント
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 ROCKETは、セルフプロデュースをする場として、与えられた答えではなく自分で答えを探すということや、実際に手を動かして体験することで、イメージとリアリティの違いを体感して、全能感を軽減させるようにしているとのことでした。

 ROCKETは、学校の外で少人数対象に実践されている教育プログラムですが、外で実施されている教育プログラムの中にも、学校の授業デザインへのヒントとなる要素があると思います。
 今回は、セミナーの内容をレポートしましたが、次は実際の授業の方も見学させていただき、上記内容を具体的にどのように取り組まれているのか、子どもたちの反応などをレポートしたいなと思っています。

(前田)