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【イベントレポート】先生のための“プログラミング研修講座”~2学期から始めるプログラミング学習 No.2(2016年8月4日)

 8月4日に、D2Cホールを会場に、先生のための“プログラミング研修講座”を開催しました。これは、プログラミング必修化を視野に入れて、プログラミングのワークショップなどが夏休みにも多く開催されていますが、それらは子どもが参加者であり、先生方が「どう教えるのか」という視点のワークショップがなかったため、為田が代表を務めるフューチャーインスティテュート株式会社が主催し、小金井市立前原小学校の松田校長先生と一緒に開催したものです。
 レポートの第2回は、東京大学 大学総合教育研究センター 特任講師の藤本徹先生による講演です。藤本先生は、ゲーム学習・シリアスゲームの研究のトップランナーです。ゲーミフィケーションをプログラミング授業のキーワードとして挙げている松田先生からのリクエストで、お話をいただくことになりました。プログラミングの授業を一人で黙々とコンピュータに向かっている授業ではなく、「主体的・対話的で深い学び」にするためのゲーミフィケーションの考え方についてお話しいただきました。

 「ゲームとは」、「ゲーミフィケーションとは」というテーマを、みんなで考えながら紐解いていきました。
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 どういう要素があればゲームと言えるのかを考えて、ゴール、ルール、フィードバックシステム、自発的参加という要素が必要だという話から、では、こうしたゲーム要素は学校にはないのだろうか?という展開になったのが、僕は本当におもしろかったです。
 「授業」という短い単位では、その中でゴールやルールやフィードバックを先生が工夫して作ってくれて、小テストが楽しめるようになっていたりとかすることも多いと思うのです。僕の小学校のクラスでは、漢字テストで満点をとると、東海道本線の駅をひとつずつ西に向かって進める、というシステムでした。これはこれでゲーミフィケーションだと思うのです。「ゲームを学校に持ち込むなんて…」ということを言われることも多いのですが、こうした工夫は先生方はたくさんしていると思うのです。
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 「学校はどうして楽しくないのか?ゲームの要素が入っているのに?」と藤本さんの問題提起は続きます。
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 「学習を取り巻く3つの誤解が楽しさを妨げる」もおもしろかったです。

  • 「学び」と「楽しさ」に関する誤解
  • 「学び」と「遊び」に関する誤解
  • 「学び」と「つらさ」の関係に関する誤解

 学ぶためには、楽しくちゃいけないとか、遊びみたいじゃいけないとか、つらくなきゃいけないとか、そんなことはなくて、どういう授業設計にしたら、ゴールとルールとフィードバックが明確になるのかということを考えることが大切だろうな、と思いました。
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 そうした議論を踏まえて、ゲームと学校のデザインの世界観の違いを、ゲームデザインと学校て教育デザインの比較がされました。これも本当におもしろかったです。
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 こうしたことを下敷きに、藤本先生の講演は、「では、プログラミング教育のゲーム性とはどんなふうになるのか」ということに触れます。
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 また、藤本先生の講演の前に行われた松田先生のプログラミングワークショップについて、コメントをいれてくれました。松田先生が授業をファシリテーションしながら、「どう思った?」など、随所に次のステップへ繋がる問いがあったことを高く評価されていました。
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 こうして前原小学校でのプログラミング教育の要素を、ゲーミフィケーションの知見と照らし合わせていくことは非常に意味があり、またワークショップ→ゲーミフィケーションの講演という順で話を聞いてもらって、参加者にも分かりやすかったのではないかと思いました。


 No.3に続きます。
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(為田)