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京都教育大学附属桃山地区学校園 教育研究発表会 レポート No.4(2017年2月3日)

 2017年2月3日に、京都教育大学附属桃山地区学校園の教育研究発表会に参加しました。テーマは、「幼小中連携 幼小中で育む『確かな学力』と『豊かな社会力』 ―12年間の学びをつなぐ連携プログラムの実践と開発(第2次)―」でした。

 桃山小学校の1年生と2年生の合同授業で、樋口万太郎先生が行った算数の授業を見学に行きました。授業の最初に、樋口先生は「今日が1年生は100回目の算数の授業です」と言いました。何だかひとつステップアップする感じがする、こうした一言、いいと思います。
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 授業のテーマは、「陣取りゲーム ~プログラミング的思考力をはぐくむ授業~」でした。樋口先生は、「今日は、じんとりゲームをします。題して“じんとりゲーム~アポーペン~”。」と言って授業を始めます。もちろん、元ネタは子どもたちもよく知っている、あれです。PPAPです。ここでがっちり子どもたちがやる気になっています。ただの「陣取りゲーム」で授業をするのではなく、フレームワークは陣取りゲームだけど見た目をPPAPにするという一工夫で子どもたちのモチベーションを引き出すのが上手だと感じました。

 最初に縦横4マスずつ、16マスのグリッドを書き、その中にペンとりんご(Apple 以下、アポー)を8つずつ書きます。そして、縦か横でペンとアポーを1組にして囲んで消していき、全部消えるでしょうか?ということを課題として出します。
 「16マスあるアポーペン、クリアできるでしょうか?」と樋口先生が問いかけます。樋口先生からは、選択肢として「できると思う / できないと思う / できない方法もあるけど、できる方法はある」の3つが出され、「どう思いますか?」と児童に挙手をしてもらっていました。
 3つで選んでもらいます。その後、前に出てきてもらって、黒板に貼ってあるシートを使って、実際にやってもらいます。前に出てきた児童が無事にすべてのアポーペンを消すことができると、樋口先生は「たまたまできたの?それとも、絶対にできるの?」という問います。この問いかけが、“ただ問題を解けた”というだけでなく、そこから「どうして?」とさらに探求する方向に進めてくれる問いかけだな、と思いました。
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 今度は、並んでいるペンとアポーの中から、1つペンを消してみます。「1つ消したら、どうなるでしょう?」「できない!」「では、グループで、一人ひとり違うマスのペンを消して、本当にできないかを分担して調べましょう」と授業は進みます。グループのテーブルの上には、たくさんのワークシートが並んで、みんなで分担してたくさんのパターンを作って、「本当にできないのか」を調べていました。
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 グループで考えた後は、前に出てきてもらって、実際に自分たちでやってもらいます。このときにも、教室の子どもたちみんなで、「アポーペン♪アポーペン♪」とおなじみのPPAPの歌を大きな声で歌いながらやっていました。こういうひとつひとつがとても楽しいことって、大切だと思いました。

 樋口先生のこの日の授業の指導案を見ると、算数科で育てるプログラミング的思考について書かれている部分があります。

  • 数学的事象に対して、既習の内容を使い、仮定・推量・比較・分類・関係づけなどの手だてを生かし、帰納的・演繹的・類推的に考えをつくりあげること
  • 課題を解決していくためにどのような組み合わせ・順序でおこなっていけばいいのかを工夫すること

 まさに、この「帰納的・演繹的・類推的に考えをつくりあげる」という部分を組み込んだ授業だな、と感じました。
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 授業終了後に、樋口先生にお話を伺うことができました。印象的だったのは、ワークシートを使ったことだと思いました。
 樋口先生は、「今日は、ワークシートを配布してやる意味があると思っていました。見に来ている先生に、“うちでもできる”と思ってほしかったです。もちろん、タブレットでもできます。でも、“タブレット、うちの学校にはないし…”とそこで諦めてほしくなかった」と樋口先生はおっしゃっていました。
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 プログラミング的思考を学ぶ一つの授業スタイルとして、非常に学びの多い授業でした。帰りに、樋口先生の著書を買い求めて、帰りの新幹線で読みながら帰りました。


 No.5に続きます。
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(為田)