教育ICTリサーチ ブログ

ICTを教育にどう活用できるか、現場目線でリサーチします。

アダプティブ・ラーニング・サミット セミナーレポート No.4(2017年3月29日)

 3月29日にKnewton Day Tokyo 2017 – Adaptive Learning Summit-(以下、「アダプティブ・ラーニング・サミット」と表記)に参加してきました。今回は、「日本の先進事例~Adaptive Learning in Japan」のパートをレポートします。Knewtonは、2015年に日本市場へ参入し、その後、さまざまなパートナーと連携して日本の教育市場にはたらきかけています。パートナー企業の事例が順に紹介されていきました。

Classi株式会社「学校現場におけるアダプティブラーニングの可能性」(加藤理啓 氏)

 最初に、Classi株式会社の事例紹介です。気になったポイントをメモとして公開します。とにかく、「日本のど真ん中をいくならば、100校とか200校とか、何万人とかじゃ、だめ。」という気概を持っている。学校の先生とやる。大きなチャンス。」というソフトバンクらしい視点が素晴らしいと思いました。
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  • 自己紹介
    • 加藤さんの家庭は、曽祖父から3代続く教師の家庭。
    • ソフトバンクで新規事業の開発を10年くらいやっていた。
    • 2014年にClassiを設立。
  • Classi設立の大きなきっかけ
    • グローバル化
    • 高校生の5人に4人が自分や将来に希望や自信が持てない、というデータを見て、「教育で何かしたい」と思った。
    • 中学生の6人に1人が、年収125万円以下の貧困層、というデータ。
    • コスト、価格、ここはITの得意とする所。クラウドを使って低価格高品質のものを届けたい。
    • 孫さんの「子どもたちの未来のために」「うねりのど真ん中へ」
    • 学校がど真ん中。だから、ベネッセとClassiを作った。
    • 最適に、子ども、先生に教材を届ける。
    • 先生を中心に。子どもを相手にしている先生に届ける。
  • 学校でのアダプティブ・ラーニング
    • いきなり40人なら40人全員が一斉にバラバラな問題をとく、というのは、学校では望ましくない。
    • 学校現場であれば、最初は同じ問題を出す。その後で、Knewtonでパーソナライズして、2問目以降が違う問題が出る。
    • 先生の声
      • 一斉授業には意味もある。効率性。1対40で新しい知識を伝える。それと並行してアダプティブ・ラーニングを行う。今日は全員で同じ問題を演習する。明日は3グループでそれぞれにあった問題を演習する、というふうに活用している。
    • 実証研究
      • 事前、事後で4pt増
      • 理想は、学力が上がる×勉強時間は減ってほしい。それが効率化だから。
  • Classi アダプティブ(4月に出すプロダクト)
    • 動画を使って、ベネッセテストと連動(ベネッセはアセスメント・テストを作っている)
    • 学習定着の見える化
    • 先生からの課題配信。
    • STARTを押すと、一人ずつ違う動画が再生される。
    • 合計で2万問。
    • わかったつもりにさせないように、動画のあとに、確認問題が出題される。
    • 「意味がわかりません」というときには、戻れる。戻るべきところもわかるようにする。
    • なぜ、その問題を出すのか、エビデンスを学習者にも提示する。先生からのプロダクトも。
    • システムが「◯◯をやりなさい」と言っても、やらない。先生がやってもやらない。40人に違う問題を出題しても、「先生の声」はとても意味がある。だから、先生から課題が出るようになっている。
  • 課題
    • 教育現場にITは使ってもらいたいと思って、Classiを作った。
    • なぜもっとKnewtonのプロダクトを買わないのだろう?と。
    • 3つの課題(1)
      • 21世紀型スキルを、現状の時間割がフルな学校で教えられるようになると、学校外(家庭)へと、押し出される。そこがアダプティブ・ラーニングになるのでは?アダプティブ・ラーニング@学校→@家庭へ
      • 学校教育変革は、学校/学年全体。生徒希望者だけとか、この教科だけ、というのはダメ。
      • 学校全体が新しい学びであるアダプティブ・ラーニングをする、というふうにしなければだめ。
    • 3つの課題(2)
      • アダプティブな世界では、数え切れないコンテンツが必要になる。
      • みんなが自分のタイミングで学びだすときに、コンテンツは足りるのか?コンテンツの数を増やす、バリエーションを増やす。この動きと、コストとはバランスが取れない。
      • 学校と作る側をつなぐ人がいない。エコシステムが成り立たない。ここがないと、コンテンツが枯渇する。
    • 3つの課題(3)
      • 一人ずつに個別の表示デバイスが必要になる。
      • スマホ、BYODが最も適しているが、楽しいコンテンツがあふれるスマホと学習を両立させる難しさがある。
  • 最後に
    • 日本のど真ん中をいくならば、「100校とか200校とか、何万人とかじゃ、だめ。」という気概を持っている。学校の先生とやる。大きなチャンス。
    • アダプティブな学びができる。1000どころではない数でスタート。
    • 高校10000校、ティッピングポイントは40%。このポイントが見えてき始めたところ。
    • ここから先は、ここにいる人たちや、Knewton社のように新しい技術を持った人たちと組まないと、先に進まないと思っている。
  • 質疑応答
    • 実証実験のN数は?
      • Nは600人(学校数は5~6校、6ヶ月間の期間)
      • 事前事後は、紙でのテストを実施。
    • スマホが楽しすぎる、はどうすればいいでしょう?
      • 98%の子どもがスマホを使っている。数十万人の子どもたちが使っている。これを解決できない。
      • スマホは楽しくないよ」は違うと思うし、楽しいことをできないようにするのも違う。スマホの使い方を、先生たちと一緒に考えるしかない。

学研塾ホールディングス「自立型個別学習G-PAPILSにおけるAIエンジン活用のご案内」(木本充 氏)

 次は、学研塾ホールディングスの事例紹介です。気になったポイントをメモとして公開します。個別学習に焦点をあててアダプティブ・ラーニングを取り入れています。自己調整学習との関わりに着目しているのが非常におもしろいと思いました。
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  • 学研が自立型個別学習G-PAPILSでしているのは、AIエンジンの活用。
    • 教育は人だと言われる。それは正しい。一方で、指導する先生に技量や経験の差があるのは事実。
    • 「教育のICT化」は、まだハードウェアの導入段階。どういう教育効果を求めて、どのように活用するのかというのは、まだ模索段階。
    • 学研とKnewtonのパートナーシップで、その一つの学習の方法にたどりつけた。
  • 自立型個別学習塾というカタチ。
    • 「優れた学習者」を育成する。さまざまな状況に、前向きに取り組んでいく学習者。
    • 優れた学習者の育成は、自己調整学習のプロセスによる。
    • 3段階のプロセスがある。
      • 学校や塾でも、すでに実践されていると思う。定期テストの前などは、このプロセスをとると思う。
      • 特に「遂行コントロールの段階」に注目している
      • 学習塾では、先生が「これくらい勉強したらいいよ」と言う。自己調整学習では、学習者本人がそれに気付くことが大事。
  • 学研の豊富なコンテンツと、Knewtonのタッグで実現。
    • どこまで勉強すればいいのか、という情報を可視化。
    • LMSに問題の解答が記録される
    • 学習プロセスによって、「保護者との会話のトピックが増えた」という声あり。
    • 具体的に何をやったかを見ることができるので、自己省察のときにも使える。
    • このプロセスを経て、「優れた学習者」へと育っていく
  • サービス構図
    • 授業映像+テキスト=「わかる!」
    • 学研プリントDB=「できる」 へ
    • 学習管理システム(Knewton)で個別アダプティブ機能
    • メンターは、自己調整理論にもとづいて、メンタリングしていく。首都大学東京と協働で、メンタリング技術を開発。
  • LMS
    • 学習マップ
      • 15万問
    • Knewtonがこれまでもった問題数としては過去最大。
  • 教材レコメンデーション
    • プリント問題→実力UP問題へ遷移。
    • 教材のレコメンドには2種類の考え方がある
      • 難易度の差がある
      • 学習マップを元に、どこの学年/単元へ戻るか?
  • 学習アナリティクス
    • 理解度と学習単元で、学習ポジショニングを出している
      • 「この項目を頑張ろう」
    • 「どのくらいの期間で勉強しますか」「どの範囲を勉強しますか」という2つを入力する
  • 先生の経験の差を埋めるために、こうしたビッグデータやAIなどを活用して、学習者にとって質の高い学びを。
  • アナリティクスを見るだけではなく、先生が児童・生徒の勉強の仕方を見ることも大事。
  • 優秀な先生のスキルを、G-PAPLISが実現している。
    • 教える→励ます→評価する

Z会「21世紀型Online Academy Z会Asteria(アステリア)のご紹介」(草郷雅幸 氏)

 最後に、Z会の事例紹介です。気になったポイントをメモとして公開します。紙の通信教育で日本のフロントランナーであるZ会が、いち早くタブレット活用学習に取り組み、教育ICTの活用を「ワクワクしてやっている」ということが、本当に強みだと感じました。
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  • この春、Knewtonと一緒に開発した2つめのプロダクト「Asteria」をローンチ
  • Z会は通信教育がメイン
    • 2012年にタブレット活用学習に取り組みスタート。
    • 小学生から中学、高校まで。社会人も。
  • なぜZ会が教育ICTに取り組むのか?
    • ワクワクした「これで、紙じゃない学習がいろいろできるのではないか?」
    • Z会は通信教育なので、学習者が離れて存在している。ICTで人とのつながりを作ることもできる。
  • 教育ICTの活用により、学びの機会を広げたい。
  • 時代の変化とくらべて、教室・教師はあまり変化していない?
    • 海外を見ると、教室や先生の役割は変わってきている。
  • アダプティブ・ラーニング
    • メリット
      • 学習者の理解度・目的に応じて、最適な教材を個別に提供可能。
    • 種類は2つ
    • 手法
      • レベルや到達度の適応
      • 学習進度、カリキュラム
      • 学習手段(ドリル・映像など)
    • 学習の理解度・進捗状況を可視化し、学習者の主体性を高める。
    • ようやくテクノロジーで、アダプティブ・ラーニングができるようになってきた。
  • Adaptie
    • 無理なく学習できるのが、アダプティブ・ラーニングのいいところ。
  • Asteria(アステリア)
    • なぜ、Asteria(アステリア)なのか?
      • 日本の学びを変えていきたい
        • 課題解決する力
        • 21世紀を生き抜く力
        • 社会に貢献しようという意思
  • 質疑応答
    • 効率的な知のパッケージを効率的にインプットしていくために作られている?21世紀型の学びとの関係?
      • アダプティブ・ラーニングで学んだその先に、何を学ぶか、だと思っている。

まとめ

 日本の代表的な教育コンテンツプロバイダーである3社がこうしてそれぞれの切り口からアダプティブ・ラーニングを導入していて、順に同じステージでプレゼンテーションをしているのが非常におもしろいと思いました。これこそ、オールジャパンで教育課題に取り組んでいる、とも言えるように思います。初等教育中等教育の分野で、実績を上げていくためには、こうしたさまざまな観点からのアダプティブ・ラーニングが成果を収めていく事が必要なので、お互いに切磋琢磨していけばと思います。
 次回は、それぞれのサービスを使っている先生や保護者、児童生徒の声も聴きたいな、と思いました。

 No.5に続きます。
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(為田)