教育ICTリサーチ ブログ

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府中市立府中第三小学校 図工授業レポート No.4(2017年5月20日)

 2017年5月20日に、府中市立府中第三小学校の山内佑輔 先生が行っている、図工の授業を見学しました。テーマは「プログラミングでアートに挑戦!」で、一人1台タブレットを配布して、Viscuitというプログラミング言語を使ってメディアアートを作る授業でした。
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 Viscuitでは、メガネを使って線や形や絵を動かすことができます。メガネの左側から右側に絵が動くようになります。つまり、ある線や形や絵を、どう動かすかという動き方を自分で決めることができるプログラミングです。
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 メガネの左から右に、線を回転させて置けば、その線がくるくると回転していきます。線の先に丸を置いてあれば、線の回転と一緒に丸が増えていきます。そうすると、ぐるぐると回って幾何学模様ができあがっていきます。
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 山内先生からは、「動き・色・形で“おお!”と思わせる授業だからね」という説明がされていました。だから、ただ魚が動く、というようなアニメーション的なものを作る子どもはほとんどいません。「(メディア)アートに挑戦」とテーマを設定していることの良さは、こうした部分で活きていると思いました。ここまでの説明で15分くらいでした。そしてこの後、制作に入っていきます。

 10分ほど制作の時間をとると、子どもたちは思い思いの色や線の長さで、アートを作っていきます。制作時間が終わる頃には、子どもたちがグループごとに座るテーブルでさまざまな模様がタブレット上に描かれていきます。その間、山内先生はテーブルを見てまわり、「“ぐちゃぐちゃ、うえ~”というのではなくて、“お、きれい!”と言わせるものを作ってね」と子どもたちに声をかけていきます。
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 ここで子どもたちはテーブルを回って、他の人の作品を見て回ります。「あ、きれい!」という声が、教室のあちこちであがります。Viscuitでは、横にメガネを表示することができるので、「あ、これすごい!」と思った模様が、どんなメガネを使って作られているのかがわかります。他の人の作品を見て、こういうのやりたい!と思ったら、メガネを見てやり方を覚えて、自分の作品に反映させることができます。
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 他の人の作品を見てから、山内先生はもう一度自分で作品を作る時間を10分間とりました。そして最後にもう一度クラス全体でテーブルを見て回る展覧会をしました。山内先生は、他の人の作品を見ることも授業の一部だと言います。
 一人だけで作品を作るだけでなく、他の人の作品も見て、「ああ、こういうのもあるんだ!」というのを知ることで、自分の世界を広げることができます。特に、他の人が作ったメガネを見ることができる、というのは、制作のプロセスを見ることができる、ということであり、他の人の制作プロセスを見て自分の制作に取り込むというのは、ICTを使うからこそできることではないかな、と思いました。

 今回の山内先生の授業で個人的に最もいいなと思ったのは、授業の目的の設定です。「動き・色・形で“おお!”と思わせる」という目的を持ち、「プログラミングでアートに挑戦する」というテーマがあるので、ある程度の枠の中で、子どもたちが自由に制作をすることができていたように思います。「メガネの使い方を覚えたら、何でもいいから作って」では、なかなかプログラミングはできないと思います。方向性(=アートに挑戦する)と枠(=“おお!”と思わせる)を山内先生が示したことで、その中で子どもたちがやることが明確になったのだと思いました。
 そして、方向性と枠を決めたら、後はとことん自由に作ってもらう。最初から自由にさせるのではなく、方向性と枠を決めてから自由にさせる。そこがポイントだと感じました。

(為田)