2017年6月5日に、“「未来の学び」のビジョンと課題”に参加させていただきました。このセミナーは、ICT CONNECT 21主催、未来の学びコンソーシアム後援のセミナーで、省庁・教育委員会の皆様、自治体職員の皆様、校長・副校長・教頭および教師の皆様、大学の先生等、教育関係者(私企業を除く)限定セミナーでした。
以下は、あくまで為田の個人的な解釈としてのセミナーレポートとなります。ご了承ください。
最初に登壇したのは、Googleアメリカ本社教育部門代表のBram Bout氏。講演のタイトルは、「Transformation: Why, What & How(トランスフォーメーション:なぜ、何を、どのように)」でした。
最初に、タイトルの中の、「なぜ」と「何を」の部分について話がされました。メモを公開しつつ、為田のコメントを書いていきます。
- なぜ
- どこでも子どもが成功するために教育は必要だ、という認識はある。
- 「平等で質の良い教育が、国のGDPを向上させる」というデータがある。ROI(投資対効果)としても、いい結果が出ている。
- 何を
- 「教育制度が仕事に必要なスキルを提供してくれると思う」(18~25歳の学生の44%の回答)
- 雇用主の期待と学生の期待を調査したところ、「コラボレーション」「問題解決」「コミュニケーション」が重要視されていることがわかった。だが、学校でそれらを教えていないということもわかった。
学校が社会で活躍する人材を育てるための場所であることを考えると、子どもたちを近い将来迎え入れる企業の期待に、十分に応えられていないのではないか、ということが言えると思いました。
ここで重要視されている「コラボレーション」「問題解決」「コミュニケーション」は、テクノロジーを使うことで大きく形を変える部分でもあります。学校にテクノロジーを配備することで、「コラボレーション」「問題解決」「コミュニケーション」を子どもたちに実践する機会を増やすことも可能になると思います。
では、そのために、「どのような教育のトランスフォーメーションが必要か=どのように教育を変えることが必要か」ということに話は進んでいきました。
- どのような教育のトランスフォーメーションが必要か?
- 新しくテクノロジーを学校に持ち込むには?
- 新しいテクノロジーが入ってきたときの進化のプロセスはだいたい同じ。今やっていることを少し良くするくらいからスタートする。
- Substitution(代替)
- 小さな進歩で満足しない(Don’t just settle for small gains.)
- テストをコンピュータで受けることも、それまでとあまり変わらない体験になる。
- テクノロジーのインパクトをしっかり受けるという意味では、もっと大きなものを志向しなければならない。10×くらいで考えなければ。
- 「10倍のことをする方が、10%良くするよりも簡単だよ」
- 10倍のことをしようと思ったら、今までのものを捨てて、白紙からしなくてはならない。
- 教育現場でのテクノロジーの活用を狙うならば、「radicalに、制約なしで考えているか」が重要。
- Netflixなど、コンテンツも個別化しているのに、なぜ学校/教材だけが、みんなで同じものを志向しているのか?
- 「トランスフォーメーションは力を与えてくれる」
最後に、トランスフォーメーションのフレームワークについての説明がありました。フレームワークとして、7つの要素が紹介されました。
- コミュニティ
- より大きな人数への取り組み。
- 保護者の協力も必要。
- 保護者が学校に通っていたときとは違うことをしようとしている。
- 学び
- カリフォルニア州にPersonal Based Learningに切り替えた学校がある。
- 一対一の学びができるように。
- ファンディング&サステイナビリティ
- ビジョン
- どこに向かっているか?
- 学習のアプローチはどうやっているのか?
- 自分の学校の文化をどのように変えていけるのか?
- 例えば、「学習はどこでも、いつでも、どのようなペースでもできることだ」という原則=ビジョン。
- 学習の経験は、生徒たち自身が作り出していくもの。コントロールしているのは生徒。
- 生徒がまず学び、保護者、さらにその上の世代とも共有するというふうにする。
- カルチャー
- イギリスのある学校は、「お互いに学び合う」というところに重きを置くようにした。チャイムで授業が終われば、学びが終わる、というわけではない。学校のカルチャーは重要。
- プロフェッショナル・ディベロップメント
- テクノロジー
最後に質疑応答の中で、Bram Bout氏が言った「Think big. Start small.」という言葉が非常に印象的です。「Start small.」ということには、例えば一人の先生の試みからスタートして、実際にやってみてアプローチを変えて、そこから再度トライする、そうしたことも「Start small.」になる、ということでした。一気に制度ができあがり、一気に設備が整う、ということがない状況を考えると、教育委員会単位での「Think big.」と、現場の先生方の「Start small.」の間に橋を架けてトランスフォーメーションへ動き出すのがいいと思います。また、それが教育委員会同士で共有されて、日本全国へ速く展開できればいいと思いました。
No.3に続きます。
(為田)