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「未来の学び」のビジョンと課題 セミナーレポート No.3(2017年6月5日)

 2017年6月5日に、“「未来の学び」のビジョンと課題”に参加させていただきました。このセミナーは、ICT CONNECT 21主催、未来の学びコンソーシアム後援のセミナーで、省庁・教育委員会の皆様、自治体職員の皆様、校長・副校長・教頭および教師の皆様、大学の先生等、教育関係者(私企業を除く)限定セミナーでした。
 以下は、あくまで為田の個人的な解釈としてのセミナーレポートとなります。ご了承ください。

 今回レポートするのは、Googleアメリカ本社コンピュータサイエンス教育戦略責任者のChris Stephenson 氏の講演です。講演のタイトルは、「コンピュータサイエンス教育の重要性:将来に役立つスキルの提供」でした。
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 最初に、テクノロジーが社会の中で果たす役割についてと、そこから導かれる「Googleコンピュータサイエンス教育のゴール」についての説明がありました。メモを公開しつつ、為田のコメントを書いていきます。

  • 「私達の生活をより良くするためには、テクノロジーの重要な問題に取り組む人材がもっと必要だ」(ラリー・ペイジ Google I/O 2013)
  • 「テクノロジーがあってこそ、世界はより良くなっていく」と言っていきたい。
  • 世界を取り巻く環境
    • コンピュータのパワーと知識が、仕事と私生活のあらゆる面の発展と革新の基礎となっている。
    • すべての産業や分野で、コンピュータのスキルが必要とされている。
    • 世界の国々は、この新知識と革新が動かす経済に備えて準備を整えている。
    • 日本の長い優秀な歴史が、質を損なわず変化できる国であることを証明している。
  • 生徒に「Education is pathway to success」と示したい。
  • 将来を見据えて
    • コンピュータが浸透した現代社会において、より賢い生活者になるには、学生時代にコンピュータの基礎をよく理解しておく必要がある。
    • 未来も視野に入れた教育が必要であり、学生たちが世界の重要な問題を解決するためのツールをデザインし構築するためにはサポートが必要。
  • Googleコンピュータサイエンス教育のゴール(Google's Goals Computer Science education)
    • 全ての学生にチャンスを提供する
    • 平等なアクセスを構築する
    • 滞在的な労働力を増やす
    • 世界経済を発展させる

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 そして、Googleコンピュータサイエンス教育のゴールに向けて、何をしていくのかの説明がありました。メモを公開しつつ、為田のコメントを書いていきます。

  • 成長への最適な道の発見
    • 学生たちが、社会に貢献できる新しいテクノロジーを生み出すための強固な道筋を作ることが重要である。
    • その道筋は、国の利益や価値、文化に沿ったものでなければならない。
  • Googleの支援の仕方
    • コンピュータサイエンスの全体像に関する知識を構築する
      • 全体像が複雑(コンピュータサイエンスのステージや意味が異なる)
      • エコシステムを動かす人の知識を構築(内部及び外部)
    • 教育者に力添えする
    • 学生たちを動機づけして、惹きつける。
  • 技術革新リーダーとしての日本
  • 教育に関する私達の理解
    • 日本は長年にわたり、高い教育レベルを維持している。
    • 政府は、すべて子どもが小学校で「コーディング」を学ぶことの重要性を認識している。
    • 日本社会は主要な責任を学校に任せ、そこから多くのものが得られることを期待している。
    • 教員は学生のモチベーションを上げるために重要な役割を担っている。
  • 課題となっているサステナブルな変化の達成
    • 世界中で、インフラ整備が課題となっている
    • 高齢化が進む中、コンピュータサイエンスが、少ない労働力での経済維持に貢献できる
    • テクノロジーは急速に変化し、ついていくことが困難である
    • ローカライゼーションの重要性 日本語のコンテンツの欠如
    • 最良の支援は何かを知るために、教育者の知識や専門技術を、Googleは頼りにしている。

 最後に書かれている、「最良の支援は何かを知るために、教育者の知識や専門技術を、Googleは頼りにしている」という部分は、非常に重要だと思います。現在、日本の学校でよく使われていて効果をあげているシステムやアプリや機材などは、教育者(=先生)の知識や専門技術にリスペクトし、話をし、授業を見学し、どのような機能が必要であるかをとても良く考えています。こうしたことを考えずに、学校の支援をできるはずはありません。

 続いて、「術語を理解する」と題して、コンピュータサイエンス(CS)とコンピュテーショナルシンキング(CT)についての説明がされました。「しばしば誤解されているが、コンピュータサイエンス(CS)とコンピュテーショナルシンキング(CT)は違う」として、

  • コンピュータサイエンス(CS):
    • コンピュータとアルゴリズムのプロセスの研究をはじめ、その原理やハードウェアおよびソフトウェアの設計、そのアプリケーション、社会への影響などの研究も含まれる。
    • プログラミングやコーディングを超えた大きな概念
      • プログラミングは「コンピュータがあるタスクを実行して問題を解決できるように、いろいろな命令のセット(プログラム)を開発、実装するプロセス」。
      • コーディングとは、「プログラムを特定のプログラミング言語で記述する行為」。
    • 以下のいずれでもない: デジタルリテラシー、コンピュータアプリケーション、ネットサーフィン、ネットの安全性、ロボティックスとエレクトロニクス、デバイスの使い方、グラフィックデザイン、ワードプロセッシング、ハードウェアのスキル(マウス、キーボードなど)
  • コンピュテーショナルシンキング(CT):

 「プログラミング教育」と「コンピュータサイエンス」の違いなど、改めてこうして生理がされて、わかりやすくなりました。こうした定義もしっかりと踏まえて、「プログラミング教育の必修化」へ向かっていくべきだと思います。
 例えば、コンピュータサイエンス教育は、多くの国で進んでいるのですが、今回の講演の中では、アイルランドコンピュータサイエンス教育の例が紹介されました。

  • 政府がコンピュテーショナルシンキング(CT)を小学校の算数のカリキュラムの一部として導入。2018年までにはコンピュータサイエンス(CS)を教科とすることを決め、その目標に向かって非常に迅速に動いている。
  • 規準の策定を準備している段階であり、政府の実行委員会が結成されている。
  • Googleアイルランドでの活動
    • Googleは、教員養成プログラムにおいて協力し、教員向けCS専門家育成のエコシステム構築を支援している。
    • 生徒たちをコンピュータサイエンス(CS)に触れさせる、草の根活動への投資をしている。
    • Googleコンピュータサイエンス(CS)教育専門家が、学習標準を策定する委員会とカリキュラム策定委員会に参加している。

 さまざまな動きが世界ではされていることがよくわかりました。国によって状況が違うので、それぞれの国によって、どれが適しているかを提示する必要があるという保留はありましたが、プログラムとリソースも紹介されました。以下に紹介されたリストをメモします。

 まとめとして、Chris Stephenson 氏は、「日本がやろうとしていることが、いかに複雑かはわかる。良きパートナーとなる形で協力したい」「Googleは専門家ではない。日本の教育の専門家である皆さんに教えてもらいたい。そして、われわれがどんなことをお手伝いすることができるかを提示できる」とおっしゃっていました。
 Googleが、日本の教育において、どのような役割を果たしていくのか、非常に楽しみです。こうした基礎的な術語の解説や、世界での事例の共有などに、日本の事例もフィードバックすることで、より質が高い教育ができるようになると思いました。

 No.4に続きます。
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(為田)