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小金井市立前原小学校 校内研修 レポート No.1(2017年8月30日)

 2017年8月30日に、小金井市立前原小学校の校内研修に、松田孝校長先生からお招きいただいて、参加してきました。松田先生が最初に話をしてくださった今回の研修テーマは、「個性的、個別的な学び」でした。「個性的、個別的な学び」を実現するために、必要な情報やスキルなどについて考える一日となりました。
 この日の研修は、全体で3部構成になっていました。最初は、「イエナプラン教育概要と個別学習」と「ブレンディッド・ラーニング」の2つの講演。次に、学びの個別化を実現する3つのサービス「eboard」「やるKey」「Qubena」の説明会。最後に、Q-Uアンケート(子どもの学級満足度調査)の分析と活かし方についての研修でした。

 No.1では、佐久穂町イエナプランスクール設立準備財団の原田友美先生による「イエナプラン教育概要と個別学習」と、21世紀教育応援団アイパルの小松健司先生による「ブレンディッド・ラーニング 定義と実践例」の講演の様子をレポートします。

イエナプラン教育概要と個別学習

 原田先生は、東京都公立小学校にで勤めていましたが、現在は長野県の佐久穂イエナプランスクール設立準備財団に所属されています。9月からオランダへ渡り、イエナプラン専門教員研修に参加されるそうです。研修に参加した前原小学校の先生のなかには、イエナプランについて聞いたことがある人はほとんどいませんでした。
 原田先生が紹介してくれたイエナプランについて、気になってメモしたところを公開します。

  • イエナプラン=<生と学びの共同体>を実現するためのオープンモデルの学校
    • 方法・手法ではなく、コンセプトを共有し応用的に実践する
    • 「これがイエナプランだ」というのは言えない。ビジョンが中心で、そこに向かっているのがイエナプランスクール。
    • 理想の社会を目指すための「20の原則」
    • 学びの4つのサイクル
      • 対話→学習→遊び→催し→対話→…という4つのサイクル
  • イエナプランのキーワード
    • サークル対話:対話を重視している。
    • 異学年グループ:1~3年生が同じクラス、4~6年生が同じくらい。異学年で学級を編成する。
    • 自分でつくる週計画:1週間の計画を自分で作る。自分の得意/不得意。それぞれにどれくらい時間がかかるだろうか、ということを自分で理解しながら、今週のスケジュールを自分で月曜日に立てる。金曜日に振り返る。毎週行うことで、自分の学びを自分のものにしていく。
    • 個別学習(ブロックアワー):教科はなくて、「月曜日のこの時間は、算数のこの課題をやろう」というふうに決めていく方法。
      • 基礎学習を自分で計画して行う時間
        • グループリーダー(担任)が出す課題
        • 自分で選んだ課題
        • クラスで一緒に考えた課題
      • 自分でつくる週計画
        • 自分の学び方、自分の成長を、自分ごととしてコントロールする力をつける
      • 基本的には学年の課題を行うが、3学年による異年齢グループの中で3年かけて共に学ぶ。自然に学び合う環境ができる。
      • ウロウロしている児童もいるし、PCにヘッドフォンつけてやっていてもいい。家庭で宿題をしているような感じ?
      • 課題はボックスに提出して、計画をチェックして終わり。
      • もっとやりたい子は、テキストを自分でもってきて、先に進む(自分のペースで学ぶ)というのができるようになっている。
      • 協働学習(ワールドオリエンテーション):日本で言う総合学習のような時間。社会と理科はこの中で学ぶ。
  • 教科はなくて、ブロックアワーとワールドオリエンテーションで学びを進めていく。
    • 方法論については、学校に委ねられている。学校ごとに「どう実現するか」は違っている。
    • こうしたことを実現する教員を育成することが大変、と言われている。
  • ビジョンを共有する。「学校として、どんな子どもを育てたいのか」ということをよく話し合っている。そのために、「どんな学びの方法があるのだろう」ということを話し合っているのがいいな、と思っている。
  • ハワード・ガードナーのMI(=多重知能 Multiple Intelligences)理論との関連性も。(参考:“8つの知能(MI)”で自分の可能性を見つめ直す)

 異学年でクラスを編成し、自分で週計画を作る、非常に自立性の高い学びの場になりそうだと感じました。こうした観点が、松田先生がおっしゃっていた、「個性的、個別的な学び」というキーワードとつながってくるのだと思いました。

ブレンデッド・ラーニング 定義と実践例

 続いての講師は、『ブレンディッド・ラーニングの衝撃』の翻訳者である、21世紀教育応援団アイパルの小松先生でした。小松先生は、国際金融の世界から、地元横浜で学習塾を開校。普通と違う学習塾をスタートしています。ご自身の塾で行っている教育手法に近い、ブレンディッド・ラーニングについて日本に紹介をしています。ご自身の塾での経験をベースにした講演でした。小松先生による講演の中で、気になってメモしたところを公開します。

  • ブレンディッド・ラーニングとは?
    • 先生の一斉講義と生徒がPCに向かってオンライン学習する、これをブレンドする。
    • 例えば、生徒が自分で、家に帰って20時から算数やろう、と決めて、巻き戻したり早送りしたりと、ペースを自分でコントロールできる。これがないと、ブレンディッド・ラーニングにならない。ただのeラーニング。
    • ブレンディッド・ラーニングとは正式なカリキュラムの一部としてオンライン学習がある、ということ。
  • ブレンディッド・ラーニングの目的
    • 最大の目的は「個別化」。学力や生徒の個性に合わせた、個別のカリキュラムを導入することが最大の目的。
    • 生徒自身が、学習の主導権を握る。
    • 生徒が自律的に学習する。
    • 4月に自動的に進級、ということでなくてもいい。学年、単元を十分に理解したということを確認したらいい。
  • アメリカをはじめ、教育先進国と言われるオランダ、北欧なども、こちらの方向へ進みつつある。
    • アメリカ「Blended」(マイケル・ホーン)
  • 決まった時間割はない。


まとめ

 イエナプランもブレンディッド・ラーニングも、先生方にとって、「個性的、個別的な学び」を実現するための選択肢として、興味深いようでした。国外の事例についても、こうして校内研修で知る機会があるのは、先生方にとってもいいのではないかと思いました。
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 No.2へ続きます。
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(為田)