教育ICTリサーチ ブログ

学校/教育をFuture Readyにするお手伝いをするために、授業(授業者+学習者)を価値の中心に置いた情報発信をしていきます。

授業で使えるかも?: 『自分の頭で「考える力」が身につく5つの授業 10歳でもわかる問題解決の授業』

 学習塾ロジム塾長の苅野進さんから、著書『自分の頭で「考える力」が身につく5つの授業 10歳でもわかる問題解決の授業』を献本いただきました。

 学習塾ロジムは、問題解決力を身につける塾です。
lojim.jp
 この本では、ロジムで小学生が取り組んでいる授業の課題なども多く収録しています。ロジムの授業の様子を、YouTubeで見ることもできます。
www.youtube.com

◆ ◆ ◆

 この本のなかで、苅野さんが「自分で考えて問題を解決する」ために必要だと3つのステップを挙げています。

「自分で考えて問題を解決する」ためには、
ステップ①「問題を理解し、設定する」
ステップ②「決断する」
ステップ③「その後の不具合を分析して修正する。そして、次回に生かす」(p.19)

 なかでも、ステップ③は本当に大事だと思っています。決断するだけでなく、その後が大事。苅野さんの言葉は以下のように続きます。

 ステップ③「その後の不具合を分析して修正する。そして、次回に生かす」ということについては、技術不足も相まって、日本人が文化的にも非常に苦手としています。
 この国全体にはびこる、
「自分が失敗から学ばないから、他人も失敗から学ぶことは期待できない。失敗したら原点。失敗したら終わり」
という、負の雰囲気から抜け出す必要があります。
数多くの失敗を重ねてきた人にこそ、問題解決に至る経験が期待できるはずです。
 私は、失敗を含めた試行錯誤の大事さ、そこから有益な情報を導き出すにはどうすればいいか、という「自分で考える力」を身につけてもらいたいと思っています。(p.21-22)

 どう分析し、どう修正するのか、この考え方が身につくような場面を、小さい頃からもってほしいと思います。
 一見、ICTとあまり関係がないようにも見えますが、行動の結果や成果を分析し、修正するという行為のトレーニングは、ICTを用いることでスピィーディーに行うことができ、そのため繰り返して練習をすることができるようになると思います。
 2020年に小学校で必修化されるプログラミングももちろんそうだと思いますが、それだけではありません。例えばExcelGoogleスプレッドシートなどの表計算ソフトで実験データをまとめ、シミュレーションをすることでも、試行錯誤を何度も行うことができます。WordやGoogleドキュメントなどのワードプロセッシングソフトで文章を書いて何度も推敲する態度を養うことも、試行錯誤に繋がると思います。
 苅野さんがこの本のなかで書かれていることを教室で実現できるように目指すときに、ICTを用いることは非常に有効だと思います。

 リーダーなら、クイック&ダーティーを怖がらない組織をつくる必要があります。成長しなかったり、失敗を不必要なほど隠したりという組織を支配しているのは実はそういった恐怖心です。
 素早い検証と改善によって、失敗を成功への足がかりにできるという前向きな気持ちを常に持たせるべく声がけをしなくてはいけませんし、そういった成功事例を評価してあげなくてはいけません。

 「クイック&ダーティーを怖がらない組織を…」という部分は、組織だけの話ではないと思います。個人としても、クイック&ダーティーを怖がらないメンタリティを子どもたちに与えてあげることは非常に重要だと思います。ICTとどう組み合わせるかを考えながら、読んでみても(もちろん、そうでなくても)、おもしろい本だと思います。オススメです。


(為田)