2018年1月13日に、三重県教育工学研究会の2017年度 冬季セミナー「次代を生きる子どもにつけたい力と教師の役割」に参加してきました。サブタイトルには「これからの情報教育のあり方を探る」とあり、情報教育について考えるきっかけをいくつもいただいたように思います。
No.3では、聖心女子大学名誉教授の永野和男先生による講演、「今後の教育に生かす情報教育的な考え方」の前半部分の様子をレポートします。永野先生は、この日のプログラムの最初に講演をした、南伊勢町立南勢小学校校長、三重県教育工学研究会会長である、中村武弘 先生の師匠にあたるそうです。
会場から、Twitterで発信していたものを中心にまとめます。その場で聴きながらのものなので、誤記等がありましたら、それは為田の責任です。
情報教育に求められる2つの側面
最初に永野先生は、「情報教育」という言葉の成り立ちについて話をされました。情報教育は、2002年からカリキュラムになっています。「情報教育」という言葉は、日本で生まれた言葉。「Information Education」などと、外国の人に話すと、へんなことになるそうです。
情報教育に求められる2つの側面について、紹介されました。
- 専門としての情報
- 知識理解内容。
- 学習指導要領に書いてあるのは、教科で教える学習内容だけ。「情報」という強化を作るときに、当時の文部省から、教える内容が求められた。それがこの部分。
- 情報活用の実践力
- 経験的知識、ツールの活用。
- 「専門としての情報」だけでなく、「情報化社会がやってきたときに、情報社会に生き抜く、知恵や態度として、リテラシーとして身につける場の提供と的確な助言」が必要になる。
この2つの側面の、2つ目「情報活用の実践力」について考えると、高校よりももっと前からやるべきだ、と永野先生はおっしゃっていました。
情報活用の実践力として、「情報を見抜く目」「情報を処理する知恵」「情報を扱う心」の3つについて、永野先生は紹介されました。
情報を見抜く目。即ち、「文章や図表から意味するところを読み取る」「論理的に物事を考える」「モデル化して、物事の変化を予測する」「調査データからデータの意味するところを把握する」。行政に伝えるために言葉を探していった、1990年代の頃にしていた仕事。(永野先生) #mieict冬セミナー
— 為田裕行 (@Hiroyuki_Tameda) 2018年1月13日
情報を処理する知恵。即ち、「必要なときに的確に情報メディアを活用する」「情報社会での自分の活かし方を考える」。こうした言葉も、当時の文部省の中でわかってくれる人が増えてきた。(永野先生) #mieict冬セミナー
— 為田裕行 (@Hiroyuki_Tameda) 2018年1月13日
その後、情報を扱う心、という言葉が出てきた。今で言う、「情報モラル」。(永野先生) #mieict冬セミナー
— 為田裕行 (@Hiroyuki_Tameda) 2018年1月13日
情報教育の目標は、20年前から変わらない
文部科学省が1997年に出した、「情報教育のねらい」で、情報教育の目標は3つの項目にまとまめられます。
1997年10月の「情報教育のねらい」で、3つの項目にまとまった。わかりやすい言葉として、「情報活用の実践力」「情報の科学的な理解」「情報社会に参画する態度」。この3つの言葉の上に、「情報活用能力の育成」があり、それがわかりにくい。(永野先生) #mieict冬セミナー
— 為田裕行 (@Hiroyuki_Tameda) 2018年1月13日
文部科学省のサイトを検索してみると、1997年10月に出した「体系的な情報教育の実施に向けて」のなかの、「情報教育の目標」のところに書かれています。
私は、「情報活用能力」については、「情報活用の実践力」と見ていて、混乱して使われているのもよく見かける。(永野先生) #mieict冬セミナー
— 為田裕行 (@Hiroyuki_Tameda) 2018年1月13日
ここから、では、「どうやって情報教育をするか」というふうな問題に入っていきます。情報教育=情報活用能力=情報活用の実践力を身につけさせるために、実は総合的な学習の時間が作られたのだ、という話がされました。
情報教育をやらなければならない、ということはわかるが、「どうやったらいいか」ということはだんだんわかるようになってきた。(永野先生) #mieict冬セミナー
— 為田裕行 (@Hiroyuki_Tameda) 2018年1月13日
情報活用の実践力の育成:子どもに課題がある→情報の収集→分析・処理→編集・加工→伝達・発信。このために、子どもが課題を持ち、情報に自発的にアクセスし、発信する、ということができなくてはならない。(永野先生) #mieict冬セミナー
— 為田裕行 (@Hiroyuki_Tameda) 2018年1月13日
そのためには、いくらコンピュータが入っても、子どもたちが自発的に学ぶような授業スタイルにならないと、この情報活用の実践力を育成できない。だから、総合的な学習の時間を作った。(永野先生) #mieict冬セミナー
— 為田裕行 (@Hiroyuki_Tameda) 2018年1月13日
学習の方法を変えていかない限り、情報活用の力が育たない。教師が与えていくものではないから。だが、そういった形で総合的な学習の時間が、全学校に普及したとは言えなかった。(永野先生) #mieict冬セミナー
— 為田裕行 (@Hiroyuki_Tameda) 2018年1月13日
PISA2003での成果と2002年から導入された総合的な学習の時間を紐づけられてしまい、縮小。いまの「主体的な学習」アクティブ・ラーニングについても、この流れ。そうでなければ、情報活用の実践力はつかない。(永野先生) #mieict冬セミナー
— 為田裕行 (@Hiroyuki_Tameda) 2018年1月13日
情報教育の目標は、20年前から変わらない。10年ごとに改定される学習指導要領でいえば、これからは3クール目。情報教育の目標は、はじめから「すべての国民が身につけるべき情報リテラシー」として捉えられていた。(永野先生) #mieict冬セミナー
— 為田裕行 (@Hiroyuki_Tameda) 2018年1月13日
このように20年前から一貫して変わらない情報教育の目標だからこそ、永野先生は、「最初から一貫して、時代の変化によって変わるような内容は入れなかった。例えば、“ポケベルの使い方”などは、議論されたが、入っていない。絶対になくなると思っていたから。」とおっしゃっていました。
この情報教育、情報活用能力の育成は、20年ずっと言われていて、ブレていない。この永野先生の講演を伺ったのは、1月13日。3日後の1月16日に、東北大学 大学院の堀田龍也先生にお会いしたときに、次期学習指導要領の話に関連して、「ようやく永野先生がずっとおっしゃってきたことができる状態になってきた」という言葉を聴きました。まさにそのとおりなのだと思います。
2020年からの次期指導要領のなかの「主体的・対話的で深い学び」の中には、情報教育で述べられている理念がクロスして含まれている。(永野先生) #mieict冬セミナー
— 為田裕行 (@Hiroyuki_Tameda) 2018年1月13日
求められている能力は変わってきている。情報活用に加え、社会的問題解決能力、職業観、協働性、市民性など、今後の社会に求められる新しい能力の視点が強調されている。(永野先生) #mieict冬セミナー
— 為田裕行 (@Hiroyuki_Tameda) 2018年1月13日
当時、「知識・理解がなければ、科目は作れません」と言われた。学力のなかに、論理的な思考、問題解決能力、情報活用技術など、新しく入ってきた。それによって、今までと違った学習の方法・評価の視点が入ってきている。(永野先生) #mieict冬セミナー
— 為田裕行 (@Hiroyuki_Tameda) 2018年1月13日
このようにして、求められる能力が変わっていくにつれて、「主体的な学び」「対話的な学び」「深い学び」が次期学習指導要領で強調されていて、この部分と情報教育の理念とのリンクがとても興味深いと感じました。
永野先生の講演メモの後半は、No.4に続きます。
blog.ict-in-education.jp
(為田)