教育ICTリサーチ ブログ

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戸田市小・中学校児童生徒プレゼンテーション大会 レポート(2018年1月20日)

 2018年1月20日に、戸田市文化会館において、プレゼンテーション大会が開催されました。昨年からスタートしたこのプレゼンテーション大会は、戸田市内の小中学校の代表がプレゼンテーションを行いました。
 プレゼンテーションの審査員は、戸田市教育委員のみなさんと戸田市教育委員会 21世紀型スキル育成アドバイザーである株式会社リバネスの森安康雄 先生と株式会社情報通信研究所の平井聡一郎先生、インテル株式会社の竹元賢治さんがつとめました。

プレゼンテーション能力は上がっている

 プレゼンテーション大会に登壇した、すべてのグループがPowerPointを使ってスライドを作り、クリッカーで操作をしながらプレゼンテーションを行っていました。プログラミングについて紹介していたグループは、動画でロボットの動きを見せるなど、わかりやすい作りになっていました。ICT機器を導入し、プログラミング教育や情報活用能力を育成するプロジェクトを産学連携で次々と打ち出している戸田市らしいと感じました。
 また、すべてのプレゼンテーションを見て、人前で堂々と話をする、ということについては本当に上手だと感じました。自分が小学生の頃には、こんな舞台で堂々と話をすることなどほとんどなかったので、子どもたちにとっては本当に大きな経験になるだろうと感じました。
 この日に向けて、練習も積んできただろうし、本番直前まで会場外で練習をしているグループもいくつもありました。先生方のサポートも大きかっただろうと思います。先生方のサポートもあって、みんな見事なプレゼンテーションを披露することができていました。
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課題は「情報活用能力」ではないだろうか?

 一方で、少し気になった点もありました。それは、「何を伝えたいのか」がわかりにくかったプレゼンテーションがいくつかあったことです。これは、「人前で上手に話す」「身振り手振りを交えて話す」「資料がわかりやすい」とはまた別の問題です。本番よりも前、プレゼンテーションの準備の段階からずっと、子どもたちが向き合ってこなくてはならない問題です。
 例えば、タイトルが「○○とは何か?」となっているのであれば、「○○とは△△だ」となっているべきだと思います。また、「○○すべきだろうか?」となっているのであれば、「○○すべきだ/すべきでない」という結論になっているべきだと思います。
 そして、その結論を聴衆が納得できるデータや例や資料が添えられている、というふうになっていてほしいと思います。また、そこで添えられているデータや例や資料も、「本当だろうか?」と聴衆が疑ってしまうものでなく、「なるほど」「ほんとだ」「たしかに」と思ってもらえるように、作られているべきだと思います。
 こうした構成を作るためには、そもそもプレゼンテーションで何を伝えたいのか、ということを明確にする、「情報活用能力」が必要なのではないかと思いました。

 21世紀型スキルの中には、「ICT活用」だけでなく、「情報収集・活用」「思考・説明・表現」「共感・調査・協働」などが項目として入っています。これらを駆使した形でのプレゼンテーションを行えるようになるには、本番の舞台で発揮されるよりも前の段階、準備の段階での活動がより重要だと思います。

 この準備の段階は、おそらく合教科的な活動になると思います。データを収集し、活用するのは算数/数学の活動領域になると思います。思考・説明は、国語科の言語活動にもなりますが、それだけでなく社会科や理科などでの基礎知識がサポートをしてくれるでしょう。それらをわかりやすく提示するためには、ICTを使いこなす技術も必要になります。
 合教科的な活動になると、先生方への負担が増えることになるのが心配ではあります。特に教科担任制をとっている中学校では、横の連携をとるのが難しいかもしれないとも思います。教育委員会で、ルーブリックを設計して、それぞれの教科において1時間くらい、既存教科の既存単元と合わせてエッセンスを学べる時間を作ったりできればいいのかもしれません。例えば、地理で生産量のグラフを見るときに、グラフがあることで情報がどのように見やすく整理されているか、などについて考えるなどもできるかもしれません。国語の説明文を読み解く単元では、プレゼンテーションのときの論理構造と合わせることもできるかもしれません。
 こうした「プレゼンテーション」「情報活用能力」に関連するエッセンスを、先生方が既存単元と組み合わせて教えるようになれば、そのエッセンスが何度も何度も違う教科、違う単元のなかで児童生徒の前に現れるようになるのではないかと思います。

 「プレゼンテーション」や「情報活用能力」のエッセンスを教えるのと結びつけやすい単元を、各学年、各教科において、ストックしてみたいと思いました。少し自分で深めてみたいテーマに出会うことができたと思っています。戸田市教育委員会の21世紀型スキル育成アドバイザーとしても、来年度のプレゼンテーション大会に向けて、現場の先生方とディスカッションをして、何かフィードバックをすることができればと思っています。
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(為田)