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国語と情報教育を追究する冬季セミナー2018 セミナーレポート No.3(2018年2月3日)

 2018年2月3日に、国語と情報教育を追究する冬季セミナー2018に参加してきました。テーマは、「新学習指導要領で求められる学びを体験する ~デジタル教科書で実現する主体的・対話的で深い学びとは~」でした。
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 プログラムの最後は、「タブレット端末環境と学習者用デジタル教科書を使った主体的・対話的で深い学びとは」をテーマにしたパネルディスカッションでした。コーディネーターは放送大学の中川一史先生、パネリストはNPO法人CANVASの石戸奈々子さん、金沢星稜大学の佐藤幸江先生、筑波大学附属小学校の青山由紀先生、光村図書出版の黒川弘一さんでした。

 パネルディスカッションのなかで、おもしろかったコメントのメモを公開します。その場でとったメモなので、誤解・聞き間違いなどありましたら、為田の責任です。

タブレット端末環境とデジタル教材を教育で使う意義は?

 最初に「タブレット端末環境とデジタル教材を教育で使う意義は?」と中川先生から話を振られた、石戸さんの返しのコメントです。

  • もう「タブレット端末環境とデジタル教材を教育で使う意義」というような議論は、やめませんか?と言いたい。
  • 2002年からCANVASスタート。その頃は、iモードの頃。子どもたちの表現活動の場、猛烈な反対の声があった。
  • テクノロジーの進歩と、それを受け入れるかどうか、というのは別問題。子どもとメディアについては、いっそうその傾向が強いと思う。
    • 本が出たとき、「小説を読むのは不良」と言われたそうだ。「本を読むよりも、おじいちゃんとおばあちゃんの話を聞きなさい」と。
    • テレビが出たとき、「一億総白痴化」と言われている。ゲームも同じ。
  • 規制する→短期的には成果が上がるが、長期的には無意味。技術で解決する→フィルタリングとか。だが、技術のイタチごっこが続くだけ。教育で解決するしかないと思う。
  • 2008年、総理大臣が「子どもが携帯を持つなんて、百害あって一利なし」と言った。大人の仕事は、そういったテクノロジーを、「百利あって一害なし」にすること。
  • DiTTを立ち上げたときにいちばん訊かれた質問は「デジタルで教育に入れる意義ってあるんですか?」。
    • 創造、共有、効率の3点=楽しく、つながって、便利。
    • 生活のほとんどはデジタルになっている。生活の場面をふりかえって、「デジタルのメリット」なんて訊かれない。なぜ、教育だけ、訊かれるのか?むしろ、それが疑問。むしろ、「紙だけしか使わないメリットってなんですか?」と訊く時期が来ていると思う。

 石戸さんのこの、「学校で、紙だけしか使わないメリットって何ですか?」と質問したい、というのは、なかなか現場では言えないですが(笑)、本当にそうだなあ、と思います。

学校での活用事例

 続いて、青山先生が、学習者用デジタル教科書の活用事例について紹介をしてくださいました。

  • 共用のPCを使っている。
  • 学習支援システムは、内田洋行のアクティブスクールを使っている。
    • 手元で40人分の児童の活動が手元で見える。
  • 新学習指導要領は、知識・技能と思考力・判断力・表現力等の2つが柱となる。
    • 「読むこと」はどう変わるのか?
    • 新版では、「構造と内容の把握」「精査・解釈」「考えの形成」「共有」となっている。
  • 国語の3つの授業タイプ
    • 拡散型授業(なんでもOKね)
    • 単線型授業(教え込み授業)
    • 拡散・収斂型授業(課題→この考えの表出→限定された正解と「読み方」の理解→自分の考えを構築)
  • 授業者として、授業作りとしては、「主体的な学び→対話的な学び→深い学び」というイメージ像。
    • 主体的な学びは、課題追究から定着度。
    • 対話的な学びは、「対テキスト」「対人(他者)」「対自分」の3つの対話。
  • 学習者用デジタル教科書を使っているが、マイ黒板を印刷して、ノートに貼ることもする。
  • 最後のまとめはノートにまとめる、ということもしている。そうでないと、家に持ち帰れないから。

 国語の3つの授業タイプの分類、本当におもしろいです。ちょうど「国語の授業ってどんなものだろう…?」「そこで、ICTはどのように役立つのだろう?」というのを考える機会が最近多かったので、興味深く話を聴きました。

 青山先生の実践報告をうけて、佐藤先生がデジタル教科書を使う良さについてまとめてくださいました。

  • サムネイルの画面から、どれを選ぶかというのを見とるのはすごく大変。
  • ただ、いろいろな技がある。教室を見て、どの子が動いているか止まっているかをみることはできる。
  • 国語科の中の学習者用デジタル教科書
    • 子どもたちの顔が上がる。
    • 低学年の子たちは、出てきてやりたがる。
  • 学習者用デジタル教科書は、まだ先生方に届いていない。
  • 国語科における学習者用デジタル教科書の可能性
    • 個の学びの促進
    • 学習状況の開示
    • 教科書、関連資料、ワークシートの相互作用
    • 個の学びの把握と共有

 ここから、佐藤先生の質問に対して、青山先生が実際に授業で児童たちがタブレットでどんなことをしていたかという結果について説明をするやりとりがありました。

佐藤先生

  • 今の授業は「読む」「書く」「考える」が分離しているのではないかと思う。

青山先生

  • 6年生の国語の授業で、書き込み(ペンと指)、指差し、なぞりを秒数カウントすると、52.0%、タブレットを触っていた。
  • 作業をしている時間であり、思考している時間。黙々と作業をしているわけではない。

 こうした、実際にどれくらいの時間、タブレットを使っていたのかなどの数値が出ることで、授業設計へのフィードバックもできるといいと思いました。

デジタル教科書の新展開

 黒川さんは、デジタル教科書を提供している企業としての視点からコメントをしていました。

  • 新展開を迎えるデジタル教科書
  • 「最終まとめ」のポイント
    • 紙の教科書=デジタル教科書 (検定なし)
    • 紙の教科書と併用
    • デジタル教材との一体的使用
    • 特別支援(アクセシビリティ)への配慮
    • 有償化の扱い(誰が払うの?自治体?保護者?)
  • 今後は、「デジタル教科書=デジタル化された教科書」
    • 教科書使用義務の履行を認める「特別な教材」
    • それ以外は「補助教材」の位置付けとなる。
  • 指導者用や学習者用という区分けではなく、教えるツール→学びのツールへの転換。
  • 2020年、まずは小中学校20000校のなかの、1000校。ここから始めるしかない。

 「実践している学校を増やしていくしかない」というコメントは非常によくわかるのですが、デジタル教科書を使ってやりたかったことのけっこうの部分が、わざわざデジタル教科書を使わなくても、タブレットPCなどでもできるようになってきているように思います。デジタル教科書があると、少し楽かな?くらいな感じではないでしょうか。その「少し楽かな?」に対して、かかる費用がまだ高いという感じがします。もう少し安くなると使う学校を増やせるように思うのですけどね…。
 あとは、「学校単位」で買ってもらうのではなく、「先生単位」で買ってもらえるような価格体系/販売システムを考えるか…。教科書という形をとる以上、それは難しいのでしょうね…。名を取るか、実を取るか、みたいな感じなのでしょうか…。

 最後に青山先生が、主体的な学び、成立の条件」と合わせて「デジタル教科書の普及への道筋」を語られました。

主体的な学び、成立の条件

  1. 解決したい課題であること
    • デジタル教科書だと、立ち上げてすぐに前時の続きをしている
  2. 「読めたつもり」「わかったつもり」を揺さぶる
  3. 「関連づけ」ができること
  4. 6年間を俯瞰した系統指導

まとめ

 デジタル教科書は、いい面もたくさんあると思いますが、結局は先生の授業力の問題でもあると思います。さまざまなトピックが出ましたが、正直「そこは別にデジタル教科書がなくても…」「これ、○○のシステム使えば、無料でも使える」というようなものもあります。

 もっともっと、デジタル教科書の利用を広げていくためには、“デジタル教科書だからこそ”というものを作るのが大変かもしれない、と思いました(この効用と価格の問題なので)。
 そう考えると、デジタル教科書ならではの強みは、「紙の教科書と同じ」であることであり、そこに特化してもっと価格が下がる、というのはできないのかな…、と個人的に思いました。

▼参考エントリー
blog.ict-in-education.jp


(為田)