教育ICTリサーチ ブログ

ICTを教育にどう活用できるか、現場目線でリサーチします。

やってみた:プロアンズに刺激を受けて、Scratchで教材を作ってみました。

 小学校5年算数「多角形と円をくわしく調べよう」は、新学習指導要領の中で、教科指導におけるプログラミング教育の好場面として例示されています。
 先日、プロアンズや宮城県総合教育センター「プログラミング教育スタートパック」をご紹介する記事を書きました。前職が小学校教員だったこと、しばらくScratchに触れる機会がなかったことから、この単元で活用できそうなScratchのプログラム教材をネット上で探しつつ、私も「ここはひとつ!」と奮起して、教材作成と授業づくりに取り組んでみました。

まずは「この単元ではどんな学習展開ができそうか」をイメージ

 「多角形と円をくわしく調べよう」は2部構成で、前半は「観察や構成を通した、正多角形の意味や性質の理解と活用」、後半は「円周率の意味や直径、円周、円周率の関係についての理解と活用」を学習します。ここでは東京書籍の年間指導計画に準じて話を進めますが、先日の記事にもあるとおり、時期は違えど、どこの教科書会社でも同じような構成になっているので、多くの小学校がこの順で学習していると思います。
 はじめは「正多角形」の意味や性質を理解する学習です。 第1時で、折り紙を使うなどした操作を通して正多角形の性質を調べ、「すべての辺の長さが等しい」「すべての頂角が等しい」多角形を正多角形と呼ぶことを学習します。この性質を使って、正多角形を作図するScratchの教材は豊富で、宮城県総合教育センター「プログラミング教育スタートパック」にも指導案、Scratchの教材データ、ワークシートが示されています。
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 第2時以降では、円を使った正多角形の作図を学習します。円を使った正多角形の作図は、円の中心の角度(360°)をn等分して円周上に点を取り、そのn個の点(頂点)を直線で結ぶことで正n角形を作図する方法です。新学習指導要領には「円と関連させて正多角形の基本的な性質
を知ること」、プログラミングを体験しながら論理的思考力を養う場面として「正多角形の作図を行う学習に関連して、正確な繰り返し作業を行う必要があり、更に一部を変えることでいろいろな正多角形を同様に考えることができる場面などで取り扱うこと」とありますので、この学習場面でScratchを活用できるといいのかなと思いました。

意外と見つけられなかった「円の中心の角を等分して正多角形をかく」教材

 Web上にはたくさんのScratchの教材データがあります。早速、検索してみました。私が見つけたかったのは「円の中心の角を等分して正多角形をかく」ものでした。
 私の検索スキルが未熟なせいだと思うのですが、なかなか目的の教材データが見当たりません。どうしたものかと考え込んだ末に、「じゃぁ、久しぶりにScratchを自分で触ってみるか!」との結論に達し、手をつけました。「久しぶりに」とは言ったものの、実際のところ、週末のセミナー等に参加した際に触ったことがある程度です。基本的な構造は見聞きしているとはいえ、授業を見据えた教材を作るのは初めて状態です。
 しかし、Web上に公開されているScratchの教材データはどれもこれもとても参考になりました。初学者用の書籍を参考に進めるのは確実な方法でおすすめですが、少しでもScratchを体験したことがある人であれば、Web上の教材データの「中身を見る」ことで、多くのことを知ることができます。皆さんもご存じの、NHK「Why?プログラミング」も「中身を見る」ことができ、改造もできる仕組みになっています。
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www.nhk.or.jp

 他にもたくさんの作品を参考にしながら、四苦八苦して作成した教材がこちら。
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 決してスマートとはいえないものですが、以下この順番でシミュレートできるようにしてみました。

  1. 円をかく
  2. 円の中心の角を等分して円周上に点を打つ(正多角形の頂点)
  3. 点を結んで正多角形をかく
  4. 正多角形になっているか、確かめる

 子どもたちはこの時点で、正多角形の性質として「すべての辺の長さが等しい」「すべての頂角が等しい」ことは知っていますが、円の中心を等分した角度と頂点の数の関係、頂点の数だけ繰り返される作業工程とその作図の正確性の吟味などは、本時の学習を通して発見してほしいところです。そして技能として、円を使って正多角形を速く正確に作図するスキルも身につけてほしいところです。そんな願いをもって作成してみました。

本時の学習課題と取り扱い時数

 東京書籍の教科書では正八角形の作図を扱っています。例題として正五角形、正六角形が挙げられています。
 今回は、私が小学校の教員だった頃に、東北学院大学の稲垣忠教授との共同研究で取り組んでいた「反転授業」の手法を取り入れてみたいと考えました。反転授業について、北海道大学情報基盤センター准教授の重田先生は「授業と宿題の役割を「反転」させ、授業時間外にデジタル教材等により知識習得を済ませ、教室では知識確認や問題解決学習を行う授業形態のことを指す。」と示しています。反転授業の詳しくは別の機会にでもご紹介できればと思います。
 正八角形の作図について、家庭学習として自学し、だいたいわかっている状態になっているとします。そこで本時は「Scratchで正九角形、正十角形、正十一角形をかこう」を中心課題として提示してみようと考えました。発展的な課題ですのでペア学習で進めます。半径は固定し、頂点の数と円の中心の角度に注目させ、正九角形の作図をScratchのプログラムでシミュレートさせます。その後、各自ノートに作図させます。正十角形と正十一角形については、実際の作図前に「かけそうか、かけなさそうか」を見通させ、その理由もノートに書かせてから、シミュレート及び作図させようと考えました。
 結果は「正十一角形はかけない」となることが想定されます。そこで「なぜ、正十一角形はかけないのか」を、4人グループで検討させようと思いました。Scratchのプログラムの4つの定義(「何角形か決める」「角度を決める」「角度を測って円周上に点を打つ」「本当に正多角形か確認する」)を視点に検討させます。かなり計画通りに進んだとしても、この辺で1単位時間は時間切れになると思います。なので、グループ検討の結果は、A3版方眼紙に図や言葉等を使って整理させておき、さらにタブレット端末で撮影させておきます。A3版方眼紙は教室掲示に使い、次時までの間、常に子どもたちの目に触れる状態にします。タブレット端末で撮影した画像は、次時の検討の際に電子黒板等の大型提示装置を使って提示します。
 結局、本時は2時間扱いとして計画しました。本来ならば1時間扱いの部分なので年間指導計画から1時間のオーバーです。このオーバー分は、他の単元の時数から移行してくるなどの対応が必要です。前述の反転授業は、いわゆる予習を家庭学習にするものですので、学校のカリキュラムマネジメントを促す効果が期待できますので、うまく実践できれば、プログラミング教育を教科指導の中に組み合わせる場合の手法の一つとして効果がありそうです。
 第2時では、第1時のグループ検討の結果を電子黒板に一覧表示し、学級全体で、Scratchのプログラムの4つの定義(「何角形か決める」「角度を決める」「角度を測って円周上に点を打つ」「本当に正多角形か確認する」)に沿って、頂点の数と円の中心角との関係、繰り返しの意図、作図の正確性に気づかせたいと考えました。その後は、円を使った正多角形の作図の良さを実感する時間に充てます。今回のScratchの教材は、スペースキーでの初期化を行わずに、半径だけを変えて実行することで、前の作図を残したまま相似の正多角形が書き表せる仕様にしました。子どもたちに自由に半径を変えたり、かき上げる正多角形を変えたりさせることで、円を利用したこの作図法であれば、任意の大きさの正多角形を速く、簡単に、正確に作図できることを視覚的・体験的に理解させることができるのではないかと考えました。
 授業の終盤10分を使って「半径150の正十二角形をScratchでかこう」「半径5センチとして正十二角形をノートにかこう」の2つの課題にそれぞれ5分間限定で取り組ませます。最終的な評価場面として位置付けて「円を使って、中心角と頂点の数の関係を明らかにして、5分以内に正十二角形を作図できたか」をみることで、この2時間扱いの学習での子どもたちの学びを捉えようと考えました。最終末では学習感想を書かせます。ただ漠然と「感想を書きましょう」では「Scratchを使って楽しかった」となりかねませんから、「正多角形の性質や、4つの定義の言葉を使って、2時間分の自分の学習について感想などを書きましょう」などと指示したいと考えました。

 今回は、2日がかりで「多角形と円をくわしく調べよう」のScratchの教材と授業案を考えてみました。教材づくりも授業づくりも久しぶりだったので感覚が戻るのに時間がかかってしまいましたが、それ以上に、これが現実的な線なのか、教材としてきちんと機能するのか、子どもたちの学びは深まるのかなどなど、心配な点が多いのが実際の感覚です。
 本単元は夏休み以降の単元として設定されている学校も多いかと思います。この記事を読んで「夏休みに自分も授業を作ってみようかな」「自分が実践するんだったらこうするな」「Scratchでの教材づくりを、研修としてみんなでやってみたいな」と思っていただけたらうれしいです。また、「もっと詳しく話が聞きたいな」「Scratchの教材データを見てみたいな」という方がいらっしゃいましたら、SNSコメントやメール(info@practica.jp)まで、ご一報ください。

(佐藤)