教育ICTリサーチ ブログ

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おせっかいな問題集ATLS(アトラス)を提供するforEst CEO後藤匠さん インタビュー No.5

 デジタル問題集ATLS(アトラス)を提供する株式会社forEst(フォレスト)の代表取締役CEOの後藤匠さんのインタビューをお届けします。ATLSは「Adaptive Training Learning System」の略で、これまでの勉強方法とICTテクノロジーの融合を目指している自主学習支援アプリです。今回は、ATLSの今後の展望と、後藤さん個人としての今後の展望について語っていただいた部分を、談話形式でレポートします。
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ATLSとしてのこれからの展望

後藤さん ATLSについて短期的な展望では、他の科目でも使いたいという学校さんが多いので、物理・化学・英語を開発します。英語はもう今年度中にスタートします。コンセプトは変えません。ただし、英語に関して言うと、数学の勉強の仕方と英語の勉強の仕方が違うので、インターフェースは少し変えています。英語は長文、文法、英単語といろいろありますけど、そういったものをそもそもタブレット端末上で解きやすいというふうにするにはどうすればいいのかっていうのは、こだわって作っています。先生方はこれならいけるかもと言ってくださっています。

 長期的な展望で言うと学習とか教育というものを定量的に捉える文化を醸成したいと思っています。学習履歴を可視化してそれをもとにした学力指標というものを作っていきたい。先生方への学習データの可視化、コンテンツプロバイダーである出版社への教材利用データの可視化、そして生徒への自分の学習データの可視化。すべてです。

 「自分が今どこにいてどこを目標にしているから、何をしなければいけないのかわからないけど、とにかく頑張ってやります」というのではなくて自分できちんと考えて自分の状況を把握して頑張って欲しい。

 学校に関してもテストの結果だけを見てこれできてないないっていうのではなくて普段の家庭学習の状況とかもちゃんと見ながら、よりひとりひとりに合わせた指導をできるようになって欲しいと思っています。

 出版社さんは、購入された後に実際に書籍がどう使われているのかというデータを取得することは難しいので、もっとユーザーがそのサービスをどう使ったのかということに目を向けて、出版社さんに定期的にレポーティングします。それぞれの問題集を使っている人たちがどれくらいいて、ストア上でどれぐらい興味を持たれているのか、手に取られているけど買われているのか買われてないのか、最終的にどれくらい買われたかということ以外の数値も見えるようになります。
 また、その問題集を生徒が前からていねいに解いているのか、それとも飛ばし飛ばし例題だけ解かれているのか、辞書みたいに行ったり来たりしながら解かれているのか、使うのを諦めてしまっているのは何章のところなのか、そうしたこともわかるようになっています。

 問題ごとの正答率を見ることで、この問題集ってだいたいこれぐらいの正答率の問題が多いんだけどこの問題だけがやけに難しくないかというようなことも見えるので、出版社からすると、「では、この問題を差し替えよう」と判断するための材料にもなるかもしれません。
 もちろんトレンドであるとか理念であるとかわざと難しくしているとかそういった思惑もあると思いますけど、それを判断するための軸として気づきを与えるためのものとしようとして生徒がそのコンテンツを使ったのかというのを定量データとして提供したい。
 また、ある程度のタイミングで問題集のレビューを促して書いていてもらって、生徒の定性データを取っていく。購入前のデータ、購入後の定量データ/定性データそれらをひっくるめてレポートするので、より強いコンテンツを出版社に作ってもらいたいと思っています。

 いろいろなことをしてそうに聞こえるんですけど、実は基本的に生徒がやっていることは、問題集がデジタル化をされたものを、タブレット上でパラパラめくりながら解いて採点しているだけです。ただ、学習履歴がちゃんと蓄積されることによって、先生も出版社も、もちろん学習者本人にも、より自分の役割を効率的に果たせるような形になってますよというのがATLSの目指すところ。学習履歴をもっと定量的に評価し、参考にする文化醸成が当社でやらなければいけないところですね。
 教育の投資対効果と言っても、その話をする時にやっぱりエビデンスやそもそもデータ自体がまだ揃ってないじゃないですか。まだ、評価するための軸すらできていない状態。そこを今後やっていかないといけないなと思っています。

後藤さん個人としての展望

後藤さん 僕が最終的に成し遂げたいことは「世界平和」です。小学5年生のときにドキュメンタリー番組を見て、ケニアのとある村の、学校に通いたいけど行けない子供を見て衝撃を受けたんです。勉強したいのに勉強できない子がいる理不尽だなと思った。僕とあの子の違いは生まれた国の違いだけ。生まれてきた環境って、その人の責任でも何でもないのにそれによって人生は全然変わってしまう。それはおかしいよなと思ったのが、小学生の頃ですね。
 そこから国際ボランティアになろうということを考えていたんですけどいろいろ調べたら、国際ボランティアの方々って世の中にいっぱいいるのに貧困問題なくならない。なんでだろうと考えていたのですが、ボランティアの方々のやっていることは非常に重要だと思いつつも、僕は社会構造を変える側になりたいなっていうふうに思ったんです。じゃあ、何が変われば世界は変わるんだろうかと僕が考えた結論は、教育と雇用だったんです。
 誰がどこに生まれても自分にとって適切な教育を受けられて、それが適切に評価をされて、その人がその国にいながら先進国の雇用市場とインターネットでつながって雇用されれば、紛争するよりも勉強して仕事をした方が得じゃないかという風になるんじゃないかと。そしたら世界が平和になるんじゃないかという風に考えました。だから、大学院は遠隔コミュニケーションにおける信頼醸成をテーマに研究してました。 Skypeなどのビデオ会議でチームビルディングはできるのかという研究やってたんです。それをやりつつ、自分のビジネスという形でアダプティブラーニング=自分一人一人にあった教育をやっていた。ATLSと言うかフォレストという会社は、どこに生まれても自分のモチベーションや自分の学力にあった教育を受けられる。そして、それを定量的に評価ができるような文化や社会を作っていくやりたいことですね。あとはテレワーキング(遠隔雇用)ができれば優秀な人が、先進国にて先進国の GDP を高めるというのではなく、優秀な人が自分の母国にいながら先進国から外貨を稼いでくる。その仕組みができれば世界平和に貢献することができる。僕はそのために何ができるのかを考えています。
 ATLSによって、もちろん目の前の生徒にとって、便利な学習サービスを提供しながらも、「どうすれば一人ひとりの能力に対しても、モチベーションに対してもアダプティブな情報を提供できるようになるのか」ということを常に考えながら、サービスの開発を進めています。

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 後藤さん、どうもありがとうございました。

https://atls.for-e-study.com/landing/atls.for-e-study.com


(為田)