教育ICTリサーチ ブログ

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やってみた:「カリマネ曼荼羅」を作ってみた

カリキュラム・マネジメントについておさらいしてみました

 新学習指導要領の実施に向けて、どこの学校でも「アクティブ・ラーニング」や「カリキュラム・マネジメント」が話題になっていることと思います。
 「アクティブ・ラーニング」は「主体的・対話的で深い学び」へ言葉とニュアンスを換えて、学習指導要領の改訂の理念とともに広く周知されました。教室でどのように具現化していくのかという授業論として、先生方の熱い議論が繰り広げられています。まもなく終わるこの夏休みも、これらの言葉を冠した研修会などに参加された先生方は多かったのではないでしょうか。
 この2つの言葉ですが、先生方が「知っている」という点では大差ないでしょうけれど「何をどうすればよいのか」と具体的な話になると、「カリキュラム・マネジメント」(いわゆるカリマネ)の方が浸透していないような気がしています。
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教育課程企画特別部会 論点整理 補足資料(1)

 「管理職が考えることでしょ?」とか「年間指導計画に朱書きして次年度に引き継ぐなんて、これまでもしてきたけどねぇ」「特別活動や道徳は、ベースを元に学級経営案で独自化してきたので、これからもそれでいいんじゃない」という声も聞こえてきそうです。
 私が現職だったずいぶん前、総合的な学習の時間がスタートしました。内容はどうするのか、例示されたこと以外にもできることはないか、這い回る経験にならないようにする方策はあるか、年間指導計画の順次性や年次の系統性はこれで妥当なのか、など、先導する研究指定校の資料を見たり(時間もお金もなかったので視察にはなかなか行けませんでしたが)、本を買い漁ったりしながら、当時の研究主任をはじめとする先輩方と侃々諤々やったことを思い出しました。今になって思い返すと、あのときの自分たちがあーでもないこーでもない、これはどうだ!と真剣になっていたことは、ちょっとカリマネだった気がします。
 現場レベルでも1年以上掛けて検討した総合的な学習の時間のカリキュラムですが、それこそ不断に見直しが行われ現在に至っています。一度作ってそれでOKというわけにはいきません。今回のカリマネの導入は、これまでの年間指導計画の自校化に止まらないインパクトを持っていると感じましたので、ここでざっくりとおさらいしてみようと思いました。

カリキュラム・マネジメントってどういうこと?

 カリマネとは?という問いに直接答えている文章は、私自身、ネットで探してもなかなか見つけることができず、すっきり腑に落ちるまでにはいかない感じでしたが、ベネッセさんが発行している「VIEW21」の2016年 Vol.4 教育委員会版がとても分かりやすかったので、引用しながらご紹介します。
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 特集1の「今から考えるカリキュラム・マネジメント」の冒頭で、横浜国立大学の高木展郎名誉教授が以下のように述べられています。

各学校では、「資質・能力の体系」を示した学習指導要領を基に、自校の教育目標や子どもの実態、地域の実情を踏まえて、学校全体で教育課程、つまりカリキュラムを編成することになります。これまでのカリキュラムは、国語や算数など教科の学習内容の編成が中心でした。しかしこれからは、全教科で、教科の学習内容とともに、どのような資質・能力を育むのかも含めたカリキュラムを作成しなくてはなりません。そして、それを基に授業を行い、成果を評価し、カリキュラムの再構成や授業改善につなげることで新たな教育を築いていく。それが、カリキュラム・マネジメントなのです。

 このことは、これまでの教科ごとの年間指導計画の修正に止まらず、資質・能力の育成を明らかにした計画を元に、PDCAサイクルを回転させるような教育課程の編成の必要性を示唆しています。文部科学省も2017年「小学校におけるカリキュラム・マネジメントの在り方に関する検討会議報告書」で同じ意図の「3つの側面」を示しています。そこでは「教科横断的な視点」「調査やデータに基づいた編成」「外部資源の効果的活用」といった趣旨の言葉も挙げられています。
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 また、中央教育審議会初等中等教育分科会 第100回 配付資料の「資料1 教育課程企画特別部会 論点整理 4.学習指導要領等の理念を実現するために必要な方策」には、この3つの側面に加えて「教育課程全体を通しての取組」「学校全体としての取組」「「アクティブ・ラーニング」の視点と連動させた学校経営の展開」が挙げられています。
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 そこには以下のような文言が書かれています。

  • 管理職のみならず全ての教職員がその必要性を理解すること
  • 日々の授業等についても、教育課程全体の中での位置付けを意識しながら取り組む必要があること
  • 各学校の子供たちの姿や地域の実情等と指導内容を照らし合わせ、効果的な年間指導計画等の在り方や、授業時間や週時程の在り方等について、校内研修等を通じて研究を重ねていくこと
  • 授業改善及び組織運営の改善に一体的・全体的に迫ることのできる組織文化の形成を図ること
  • 「アクティブ・ラーニング」と「カリキュラム・マネジメント」を連動させた学校経営の展開が、それぞれの学校や地域の実態を基に展開されることが求められること

 こうして明示されていることから、先生方全員が、それこそ「主体的・対話的」にカリマネに取り組んでいくことが求められているといえるでしょう。

カリマネ曼荼羅

 ここまで、カリキュラム・マネジメントについておさらいしてきました。これまでの教育課程編成=教育計画作成というイメージとは違って、ぐっと実践的で身近な大改革だと思います。一つ一つの教室での出来事を丁寧にすくい上げて、それを学校の教育活動全体というレベルで言葉にしていく作業が必要になってくるようです。毎日忙しい先生方にとって、この作業は膨大でありたくさんの時間を要することになりますが、それこそ「今から考えるカリキュラム・マネジメント」を乗り越えて「今から取り組むカリキュラム・マネジメント」にしていかないと、あっという間にタイムリミットになりそうです。
 先生方がカリマネに取り組むに当たって、一つ一つの答申や資料を読み解いていくのはとても大変です。そこで、今回ご紹介した資料や他の知見も使って、カリマネを俯瞰できるような図を作成してみました。たとえて言うなら「カリマネ曼荼羅」といったところでしょうか。至らない部分も多いかと思いますので、共にブラッシュアップしていこうという方がいらっしゃるとうれしいです。ブログでのコメント、SNSでのコメントなどをいただければと思います。
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先生方へ:
このブログ/図は出典を
「教育ICTリサーチブログ( http://blog.ict-in-education.jp/entry/2018/08/18/040000 )」
としてプリントアウトし、各学校でお配りいただいてもけっこうです。(2018年8月18日 午前10時追記)

(佐藤)

▼参考エントリー
blog.ict-in-education.jp