教育ICTリサーチ ブログ

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やってみた:「アクティブ・ラーニング曼荼羅」も作ってみた

アクティブ・ラーニングについても、もう一度整理してみました

 先日「カリキュラム・マネジメント」についておさらいしてみたのですが、続いて、世に知れ渡って久しい「アクティブ・ラーニング」についても、同じように整理してみました。
 「アクティブ・ラーニング」は、「ある特定の指導法の型として捉えられることは、その趣旨ではない」ことから、文部科学省の文章には意図してあまり使われなくなった印象の強い言葉です。しかし最近では一周した感じもあり、当初よりは柔軟に使われるようになったようにも思えます。
今回は「主体的・対話的で深い学びの視点からの授業改善」について、あえて「アクティブ・ラーニング」という言葉を中心に見ていきたいと思います。
 さしあたり、「主体的・対話的で深い学びの視点からの授業改善」について、その重要性について考えてみたいと思います。
 ご存知の通り「主体的・対話的で深い学びの実現に向けた授業改善」を進めることの重要性は、新学習指導要領解説総則編で語られています。
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主に「指導上の留意点」と「指導計画の作成と内容の取扱い」に示したことが記述され、実践上の留意点として次の6つの趣旨が記されています。

ア これまでの実践を否定し、全く異なる指導方法を導入しなければならないと捉える必要はない。
イ 授業の方法や技術の改善のみを意図するものではない。
  資質・能力を育むために「主体的な学び」、「対話的な学び」、「深い学び」の視点で授業改善
ウ 通常行われている学習活動の質を向上させる。
  言語活動、観察・実験、問題解決的な学習など
エ 単元や題材など内容や時間のまとまりの中で考え、実現を図る。
  学習を見通し振り返る場面をどこに設定するか
  グループなどで対話する場面をどこに設定するか
  児童生徒が考える場面と教師が教える場面をどのように組み立てるか
オ 深い学びの鍵として「見方・考え方」を働かせることが重要。
カ 基礎的・基本的な知識及び技能の確実な習得を図る。

 この小学校学習指導要領解説総則編では「アクティブ・ラーニング」という言葉の記述が2カ所あります。

アクティブ・ラーニングはどう定義されているのか

 文部科学省は「アクティブ・ラーニング」について以下のように定義しています。

 教員による一方向的な講義形式の教育とは異なり、学修者の能動的な学修への参加を取り入れた教授・学習法の総称

 そして続いて、次のように目的を示しています。

 学修者が能動的に学修することによって、認知的、倫理的、社会的能力、 教養、知識、経験を含めた汎用的能力の育成を図る

 さらには、次のように具体を例示しています。

 発見学習、問題解決学習、体験学習、調査学習等が含まれるが、教室内でのグループ・ディスカッション、ディベート、グループ・ワーク 等も有効なアクティブ・ラーニングの方法である

 これは、2012年8月の中央教育審議会答申「新たな未来を築くための大学教育の質的転換に向けて~生涯学び続け、主体的に考える力を育成する大学へ~」の用語集に記載されています。大学教育改革については、現在、入試や再編の話がとても大きく取り上げられています。当時や今をもっても、所詮大学の話だろうと言うことからか、私が以前勤務していたような小学校などの義務教育系ではあまり知られていないかもしれません。
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ちなみに「主体的・対話的で深い学び」はどうなのか

 この3つの「学び」の要素を持っている一連の用語は、それぞれどのように考えられているのでしょうか。このことについては、平成29年度小・中学校新教育課程説明会(中央説明会)における文部科学省説明資料から分かります。ここでも「アクティブ・ラーニング」という記述が見られます。
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アクティブ・ラーニング曼荼羅

 多くの場合「アクティブ・ラーニング」と「主体的・対話的で深い学び」は「授業改善」に掛かる言葉として併記されています。意味合いの広い狭いはそれぞれあるにしても、概念が近似である言葉として捉えておいて良いのではないかという印象です。
 時期として「アクティブ・ラーニング」が先行し「主体的・対話的で深い学び」が後を追った形になったためか「アクティブ・ラーニングと主体的・対話的で深い学びはどう違うのか」と言うことに目が行きがちです。しかし、その議論以上に大切にしなければならないのは「授業改善」のマインドと、具体的な行動だと思います。議論の対象が大学改革だったり学習指導要領の改定だったりという違いはあるものの、全国津々浦々の先生方皆さんに、子どもたちが「なぜ?」「そうか!」「わかった!」「なるほど!」「できた!」と実感するような授業を創っていただきたいという願いにも似たものを感じます。「大事だから二度言おう」みたいなものでしょうか。
 余談ですが、学習指導要領そのものに「アクティブ・ラーニング」が使われていない理由の一つは、法令レベルの学習指導要領にはカタカナ語はなじまないという考えがあった、という話を聞いたことがあります。なるほどなぁと思いました。

 今回は、「カリキュラム・マネジメント曼荼羅」に続いて「アクティブ・ラーニング曼荼羅」を作成してみました。「カリキュラム・マネジメント」と「アクティブ・ラーニング」は、これからの日本の教育界を大きく進展させる、大枠としての両輪と捉えることができるのではないかと思います。
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 前回同様、今回ご紹介した資料や他の知見、これまでの経験等から作成しましたので、不十分もしくは捉え違いのところもあるかもしれません。「カリマネ曼荼羅」と同じように、ブラッシュアップのお力添えがあるとうれしいです。また、この「アクティブ・ラーニング曼荼羅」も各学校の研修等でプリントアウトしてご活用いただいても結構です。もしお使いの場合は、出典を
「教育ICTリサーチブログ(http://blog.ict-in-education.jp/entry/2018/08/26/063000)」
とお示し下さい。どちらにつきましてもブログ、SNS等でコメントいただければと思います。

 ところで、「カリキュラム・マネジメント」を「カリマネ」と略すのは一般的になっているように思うのですが、「アクティブ・ラーニング」のカタカナ略語って聞いたことがありません。「AL」とは言いますね。みなさんはいかがですか?

(佐藤)