教育ICTリサーチ ブログ

学校/教育をFuture Readyにするお手伝いをするために、授業(授業者+学習者)を価値の中心に置いた情報発信をしていきます。

総務省「『次世代学校ICT環境』の整備に向けた実証」中間報告会@小金井市立前原小学校 レポート No.3(2018年10月17日)

 2018年10月17日に小金井市立前原小学校において行われた、総務省「『次世代学校ICT環境』の整備に向けた実証」中間報告会に参加してきました。「次世代ICT環境」の整備に向けた実証の中間報告における、松田孝校長先生のプレゼンテーションのメモを公開します。

 最初に、松田先生はインフラの整備によって、生活が激変したことを伝えます。そして、生活が激変したいま、当然「学び」も激変しているということを伝えます。「ICTはツールではなく、インフラ」と松田先生は言います。
f:id:ict_in_education:20181111002842j:plain

 松田先生は、新しい「学び」について話をしていきます。

  • 新しい「学び」
    • 20年後の社会。どんなことが求められているのか。
    • コンテンツ→コンピテンシー
    • 主体的で対話的、深い学び
    • 習得→活用&探究
  • 新しい学びが実現できているところは、通信システム&情報端末の整備ができているところだ。
    • 社会科の初志をつらぬく会=問題解決学習
    • 「日本帝国憲法を見て(学習感想)」(1991年11月に松田先生が授業実施)=感想を集めて、まとめて、印刷して配布して、ということを実践していた。
    • だが、やったつもりではあったが、できなかった。自己満足だったように思っている。
  • 調べ学習や情報共有はアナログ授業の限界だった。
    • 以前は先生が資料を集めなければ調べ学習ができなかった。今な ら、インターネットがあればOK。

 ここで、社会科で松田先生が1991年に実践したという「日本帝国憲法を見て」という授業が紹介されました。スライドを見てびっくりしましたが、この日の6年生の授業で小薗先生がスクールタクト(schoolTakt)を使ってやっていた授業にそっくりでした。
f:id:ict_in_education:20181112094829j:plain

 「感想を児童に書かせて、集めて、まとめて、印刷して、配布して…」という実践に学びがあると思って松田先生は実践したものの、「限界があった」と感じているそうです。でも、デジタルを使えば、こうした実践がより確実に簡単に行えるようになるのだ、という、“授業者としての松田先生”の思いを聴いたような気がしました。


 一方で、通信システムや情報端末が整備されればそれでいいかといえば、そんなことでもない、と松田先生は言います。

  • 通信システム&情報端末が整備できれば、新しい「学び」ができるわけではない。
    • 教員が使えないからではない、使わないから。
    • なぜか?→必要ないから。
  • 現場の授業を規定しているのは、学習指導要領ではなく、戦後の教科教育法。
    • 復興から発展、繁栄を導いたのは、教科教育法。完成度、完結性がすばらしい。ここに先生方の自信と誇りがある。
    • 教員は昭和のアナログを背景に再生産されている。
  • ICT活用は教育哲学
  • 改めて、時代認識
    • 学校は時代と技術を学ぶ最先端の場なのに、今の学校は昭和の内容と教科教育法が規定している。このままで子どもたちは将来、自己実現できるのか?
    • 情報空間も、実空間も変わってくる。仮想空間も。これがブロックチェーンで繋がる。

f:id:ict_in_education:20181111003222j:plain

 また、整備が進んでも、「コンテンツが入らなければダメ」と松田先生は言います。

  • 本校のICT環境システムは、絶対的モデル。
    • NTTの光回線、1G出ている。500人超で一人1台もっている。そ れでもつながる。
    • システムを整備するのはそんなにお金がかからない。
  • 端末が入っても、コンテンツが入らなければダメ。まなびポケットのシングルサインインの絶対的利便性。
  • 3クラスに1クラス分の情報端末
    • 保管場所はニュートラルな場所なんて、もうやめましょ う。
    • 教室におく。絶対的に活用する学級または学年に置く。
    • 例えば、6年生に徹底的に使ってもらう。学びがどう変わるかを現場で見て、考えてもらう。必要な時は、他の学年が借りに行けばいい。

 多くの学校では、3クラスに1クラス分くらいの台数しか整備がされません。そうした際に、どのように情報端末を運用すればいいか、というヒントも、松田先生は言っていました。分散して運用するのではなく、集中して運用し、徹底的に使ってもらう、その様子を現場で見て先生たちに考えてもらうことが必要という意見は賛成です。教室に端末を置くときにも、前原小学校では充電保管庫みたいなものを使わずに、100均とかで買えるボックスを使っている例も見られました。さまざまな活用法が実践され、どんどん改善されていけばいいと思います。

 最後に、松田先生は見えてきた方向性として、協働性についての話をしました。また、教師がどうあるべきか、学校とはどうあるべきかについての話でプレゼンテーションをまとめました。

  • 見えてきた方向性
    • 方法論的協働:援助要請&能動的援助
    • 目的的協働:合意形成
  • 教師は、Teacher, Mentor, Coach. Organizedでファシリテイター。
    • ティーチャーとファシリテイターは対概念ではない。
  • 学校には多様なステークホルダーがいる。
    • コンフォートゾーンの中で止まっていてはいけない。
    • テクノロジーなどを導入して、先生方をパニックゾーンへ出さなければいけない。

f:id:ict_in_education:20181111003431j:plain

 前原小学校はほぼ毎年訪問させていただいて、いろいろな授業を見させていただいています。また、松田先生とはイベントをご一緒したりして、プレゼンテーションを見せていただく機会も多いのですが、どんどん内容がアップデートされていくのが素晴らしいと思います。
 校長先生自身が変わり続けていく過程をずっと続けていくことで、学校もどんどん変わっていっているように思います。また、この前原小学校での実践が、小金井市全体にどのようにフィードバックされていき、横に広がっていくのかも、非常に関心があります。引き続き、追いかけていきたいと思いました。

(為田)