教育ICTリサーチ ブログ

学校/教育をFuture Readyにするお手伝いをするために、授業(授業者+学習者)を価値の中心に置いた情報発信をしていきます。

『評伝 大村はま』を読んで、国語の授業実践と共に、ICTを使ったらどうなるかも考える。

 苅谷夏子『評伝 大村はま ことばを育て 人を育て』を読みました。大村はま先生の名前は知っていたけれど、きちんとどんな授業をしたのかを読むのは初めてです。

 あすこま先生が、アトウェルの本を読み始めたときに、「アメリカにも、大村はまみたいな人がいる」と思ったそうなので、先日の『イン・ザ・ミドル』に続けて読みたいと思ったのでした。
askoma.info

 あとで読み返せるように、Twitterに「 #評伝大村はま 」とハッシュタグをつけて気になるところをメモしていきました。僕は国語の先生でもないですが、情報活用能力や発信力、表現力というところに興味があるので、非常に勉強になりました。

ことばの大切さ

 大村はま先生の授業の様子を断片的に知ることができるのだが、そのなかで、「ことば」を大切にしていることが伝わってくる。そして、それを生徒たちが楽しむようになってくる。僕も作文やプレゼンテーション原稿へのコメントを授業のサポートに入ったときにすることがありますが、つい「もっと深く考えて」とか「もう少し丁寧に」とか言ってそうだな…と。もっと具体的なことばで刺激を与えてあげられるようになりたいな、と思いました。

 すべてを先生がやらなくてもいいのかもしれません。例えば、きちんと初見の文章を読めるような姿勢と語彙力を身につけ、検索のスキルを身につけることで、より多くの自分がほしい具体的な文章やことばに出会うことができるようになると思います。ICTが日常生活に普及している今だからこそ、大村はま先生が図書室でやっていた授業がどんなふうにパワーアップするのかを考えるのは楽しいことだな、と読んでいて思いました。

社会から教材を持ってくる

 戦後すぐに、中学校の先生になった大村はまは、外部からどんどん教材をもってきてもらうようにしていたそうです。新聞や雑誌などの広告などを題材にして、子どもたちが観察や収集をするようになります。一人ひとりがすぐに撮影してみんなが見られるクラウドにストックでき、クラス全員で教材を共有できる現代のツールを使ったら、どんなふうにこの授業が変わるのか、考えてみるのもおもしろいと思いました。



作文指導の方法

 こういう先生に出会えていたらな、と思ったのは、作文を書く気がない生徒の原稿用紙に、大村はま先生が文章を書き、続きを生徒が書き、それに何も言わずに続きをまた大村はま先生が書く…という授業のところを読んだときでした。

 ちょっとずつでも書いてみた生徒。こうして先生が書き手のパートナーとして学びに参加するのはおもしろそうです。「あまり関わらずに、自由に考えさせよう」と思うことが僕は多いですが、こうした関わり方もあるのかと思いました。Googleドキュメントでみんなで作文を書いていれば、途中途中で先生が書いていくということもできそうですし、グループでピア・ライティング(Peer-Writing)の形式にするのもできるかもしれないと思いました。

興味深い研究指定

 大村はま先生が赴任した中央区立文海中学校で行われていた、「すべての教科書を読めるようにするために」という研究テーマは非常におもしろいと思いました。すごく興味があります。どこかで読めないかな…と思っています。



みんなでことばを研究する

 ことばを研究する単元を、大村教室ではやっていたそうです。これもおもしろそうです。

 スマホクラウドを使ってやったらおもしろそうです。みんながそれぞれにことばに気をつけて暮らし、見つけたらクラスみんなで共有していく。WikiやSlackを使うとおもしろいかな…。
 こうして、大村はま先生の授業がICTでサポートされたらどんなふうだろうか…と考えていましたが、たぶん大村はま先生は、喜んでやるのではないかと思うのです。

 そうした「どうやってやるのか」ということよりも、授業の中身こそが重要だ、ということを誰よりも大切にしていた先生だと思います。

大切なのは授業

 大村はま先生の研究授業の数も紹介されていますが、すごいです。具体的な実践の提案項目についても、一度しっかり見てみたいと思いました。



ことばの大切さ

 最後に、アメリカの同時多発テロのときのエピソードから、大村はま先生がどのような思いで、ことばを大切にしていたのかということがまた描かれます。

 「少数のエリートだけでなく、みんながそういう力を持たなければ」というところ、なぜ公教育の現場に拘られたのか、ということにつながるのではないかなと思いました。

 大村はま先生の著作はたくさん出ていますが、授業でどういう発問をしたのか、どういうやりとりがあったのかなど、具体的に知りたいと思いました。書籍や映像など、あたって勉強したいと思います。
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(為田)