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富谷市立成田小学校 情報モラル教室-ネットトラブルを避けるための対策- 授業レポート(2018年11月30日)

 2018年11月30日(金)に宮城県富谷市立成田小学校で行われた「情報モラル教室」を取材させていただきました。対象は5年生6年生(各学年2クラス)で、講師は株式会社NTTドコモ東北支社の阿部智さんでした。

 「情報モラル教室」の授業を始めるにあたって、まず教頭先生のお話がありました。教頭先生は、「世の中は情報にあふれています。音楽の授業でもいろんな情報を扱っているし、普段の生活でもいろんな情報に接しています。今朝、教頭先生は学校に来るときに色の情報を頼りに運転しました。なんだと思う?」と子どもたちに問いかけます。子どもたちは、「信号!」ときちんと答えることができました。
 「情報」という言葉について、先生方も子どもたちもきちんとアンテナを張っているんだなということが伝わってくる、良い例え話だなと思いました。
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 この日の情報モラルの授業では、子どもたちは思ったことや感じたこと学んだことを、その都度メモをしていくことになっていました。阿部さんは子どもたちが国語で学習している「メモの取り方」を引き合いに出し、今日の授業が日々の教科の学習とも繋がっていることを意識づけました。
 その後に「インターネットって、どんなことができるの?」と発問すると、子どもたちは「ゲームなどで世界中の人と対戦できる」「調べ学習ができる」といった、個人の生活と学校での学習の両面で、インターネットの活用方法を答えていました。導入の時に何気なく、子どもたちに学校での学習や毎日の生活と本時がつながっていること頭に置かせた点がとっても上手だなと感じました。事前に先生方と連絡を密に取り、単発イベントではなく授業の一環として成り立つように仕立てたそうです。

 阿部さんは本題に入る前に「情報モラルについて、なぜ学ぶのか」を示してから、事例を踏まえた「SNSの使い方」へと進んでいきました。
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 気軽に日常生活をSNSで発信し「いいね」をもらうことは嬉しいし楽しいことです。子どもたちもある程度、知識や経験があるようでした。しかし、そこには危険が潜んでいることを子どもたちに知らせるために、阿部さんは一本の動画を紹介しました。
 「これから家族旅行です!リビングで荷造りをしています!」「町内にある公園で桜が咲きました。」「近所のパン屋さんです。大好きです。」などの写真付きのSNSへの投稿が動画の中で出てきます。一つ一つは何気ない内容ですが、過去も含めて複数の投稿を並べてまとめてみると、投稿者の住んでいるエリアが想像できることがあります。さらに先ほどのリビングでの写真をよく見ると、後ろにある冷蔵庫には学校だよりが貼ってあって、拡大してみると学校名が判読できます。しかも旅先での楽しげな様子がSNS上に随時アップされているとなると、この家は現時点で留守であることがわかります。結果、この家庭は空き巣被害に。SNSに投稿していたこの家の小学生は「空き巣に入られたのは自分のせいかもしれない」と悩んでしまう…というような内容でした。
 これは大人でもハッとさせられる人が多いのではないでしょうか。子どもたちも思わず声を出してしまいそうな雰囲気でした。個人情報を漏らしてはいけない、名前や住所を安易に入力してはいけないなど、授業で学習している子どもたちですが、そんなことは書いていなくても、大まかな投稿文と投稿時刻、写真から個人やその状況が特定されてしまうことがあることに驚いたようです。
 その様子を見ながら「今日の学習を各家庭で子どもたちが話題にして、大人の意識も変わっていくといいのにな」と思っていると、授業の最後で担任の先生が「今日の授業の内容で、家に帰って話題にしたいことをワークシートに書いてください」と、子どもたちに指示されました。
 これも阿部さんと先生方の事前の話し合いで決めていたことだそうです。授業の構成としても家庭との連携についても、よく練られた45分間でした。
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 この他にもフェイクニュース(デマ情報)の発信、拡散、その動機が悪ふざけの場合でもそれではすまされない、など、子どもたちには多かれ少なかれ心当たりがあるだろう内容が十分に盛り込まれた授業でした。

 おそらく、先生方でも同じような教材があれば同じような授業、もしかするともっと子どもたちの実態に迫るような授業ができるかもしれません。しかし、その教材に行き着くための知識や知見の習得、資料検討・準備の時間の確保など、全てを先生方に求めるのは難しいのが実際だと思います。
 先生の持つ授業づくりのノウハウと専門家の持つ知識や技術をコラボレートすることができればいいと思います。そうしたコラボレーションにしっかりと知恵や時間をかけられるような、学校であり世の中にしていくことが、効果云々以上に大切なのではないだろうか、と考えました。

 こうした考えは「チーム学校」という枠での話題になろうかと思います。先生方の働き方改革の話題と連動して「学校内に多種の専門職を。そのための予算を。地域から補助ボランティアを。」という面が強調されがちです。もちろんこれは喫緊の課題として充実を急いでほしいことがらではあります。しかし「学校外にいる専門職(保護者や企業、様々な団体など)と普段から連携できるように、先生方の働き方とマインドの両方を更新しておく。国や自治体は予算を整備する。今の学校はそういう場になっていることを地域社会も理解する。」という面も、とても重要なのではないでしょうか。

 今回取材させていただいた富谷市立成田小学校は、この両面がうまく機能している事例なのではないだろうかと思いました。情報モラルの授業の取材でしたが、それだけにとどまらない学びをいただきました。

(佐藤)