教育ICTリサーチ ブログ

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登米市立宝江小学校 授業レポート「ぼうさいマップをつくろう」(2018年12月5日)

 2018年12月5日午前に宮城県登米市立宝江小学校の総合的な学習の時間の授業(対象は3年生13名)を取材させていただきました。

 宝江小学校は例年、3年生が地域の防災マップを作ってきました。昨年度までは模造紙大のポスターを手書きしてきましたが、今年度はデジタルでの作業に挑戦することになりました。模造紙大のポスターはグループごとに作成して掲示すると、それぞれを一覧できたり、付箋紙などで情報を追加して交流できたりなどの良さがあります。しかし、一つのマップに表すには書き写す必要があり時間がかかること、地域の防災活動を推進する大人との交流が学校訪問等に制限されること、毎年の活動の内容や詳細を継続的に保管、追記、修正、更新することが困難なことなどが課題としてあったので、その解決と子どもたちの情報活用能力育成を狙って、デジタル化することにしたそうです。

 これまで子どもたちは宮城県登米総合産業高等学校の千坂大輔先生と生徒さんの協力のもと、学区の危険箇所を実地取材して写真を撮ったり、写真につける文章を書いたりしてきました。一つ一つの写真につける文章はワークシートに書かれていて、すべてを担任の先生が事前に目を通し、アドバイスを書き込んでいました。

 この日は株式会社NTTドコモ東北支社の阿部智さんと千坂先生はじめ5名の高校生が、それぞれゲストティーチャー、サポーターとして参加して授業を進めていました。

 子どもたちはWEBサイト「NHKぼうさいマップをつくろう」にタブレットからアクセスし、取材して選んだ写真のアップロードと、文章の入力を行いました。
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www2.nhk.or.jp

 マッピングするアイコンの動かし方やその他の操作は、高校生がしっかりサポートしてくれていました。集中が途切れてしまった子への声がけや、答えを教えるのではなく子どもが考えて作業できるように支える姿から、継続的な関わりがあること、高校生にとっても良い学びの時間になっていることが感じられました。
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 本時の作業の一つとして、アップロードした写真にコメントをつけるのですが、3年生ということもあり文章入力方法は「かな入力」でした。今回は、タブレットにケースが装着されており簡単には外れないようになっていてキーボードがドッキングできないこともあって、ソフトウェアキーボードを利用していました。12インチ程度の画面サイズのタブレットなので、ソフトウェアキーボードでもなんとか入力できていました。ここで出たアイデアは「マウスでかな入力」。初期の文字入力体験にはありかもしれないと思いました。
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 この先、ローマ字の学習やキーボード入力の機会が増えるにつれて、ホームポジションでの文字入力をきちんと習熟する機会を持つことが、中学校との接続を考えても大切なことです。学校として計画的にスキル習得の機会を作っていくことの大切さを感じました。もしも予算等が許すのであれば、ワイヤレス接続の物理キーボードを用意しておき、必要に応じて使い分けることも考えられます。子どもたちのさまざまな活動や成長に応じてフレキシブルに活用できるICT環境が整うと、高学年の国語などの授業でも活用の幅が広がるのかなと考えました。

 外付けキーボードといえば、以前拝見した京都教育大学附属桃山小学校は、タブレット本体は学校備品で外付けワイヤレスキーボードやタブレットスタンドがBYOD、という光景を目にしました。まるで近未来の筆箱としてキーボードを位置づけているかの感じでした。
 市町村の予算繰りが厳しい場合、ソフトウェアキーボード以外を使いたい子どもは、自前のキーボードを持ち込んで接続できるように学校のタブレットの設定をしておく、というのも手かもしれないと思いました。

 今回の授業はグループ1台での作業でした。タブレットでの文字入力や細かい操作に十分親しんでいない子どもたちに1人一台の環境を与えるよりも、操作等の教え合いも含めてグループで協力させて防災マップを完成させていきたいとの担任の斎藤ゆき先生のお考えでした。
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 一人一人が自分のやるべきことの役割を持ち、それを組み合わせることで大きな作品に仕上げていく体験は、3年生の子どもたちにとって大きな糧になるのではないかと思いました。

 一般に、こうした授業を組むと、作業をしていない子どもが出てしまい、学びとしても作業時間としてももったいないということが起き得ます。また、活動はしたものの学びとして何ができるようになったのかがよくわからないということも起き得ます。新学習指導要領の目指す姿も見据えて、時数が少なくなった総合的な学習の時間のあり方を捉え直していくことにも、学校は急いで手をつけなければならないのだなと改めて思いました。

(佐藤)