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小金井市立前原小学校 授業レポート No.3(2019年5月24日)

 2019年5月24日に、小金井市立前原小学校を訪問し、蓑手章吾先生が担任されている5年1組の授業を見学させていただきました。今回は、算数の時間をレポートします。
 算数の時間の最初に、「なんのこれ式」というプリントを実施します。「なんのこれ式」には、1、2、3、4、5…」と数字が縦に並べて書いてあり、その横に積がその数字になる式をすべて書いていく、というプリントでした。「1=1×1」「2=1×2、2×1」…「4=1×4、2×2、4×1」のように書いていきます。「教育の鉄人」として著名な、杉渕鐵良氏の実践だそうです。
 子どもはすべて書き終わったら、「はい!」と大きな声で言います。すると、そこで蓑手先生がタイムを読み上げるので、そのタイムをプリントに書いていく、というものでした。自宅で練習してくる子もいるらしく、すごく速い子たちもいました。
 「なんのこれ式」が終わった人から、ノートを開いて授業の準備を始めていきます。蓑手先生は、そんな子どもたちを見ながら、「時間はみんなに平等。自分で作り出すもの」とメッセージを伝えていました。

 蓑手先生は、授業の最初にスクールタクトを使って教科書の内容をざっと解説をしました。教科書の中で、「48ページの力だめしがいい問題なので、ぜひ挑戦してください。すでに終わっている人は計算ドリルを進めてね。プリントもあるので置いておきます。自分でeboardを見る人もいますね。それでもいいですよ。」と言います。
 何をやってもいい、という授業になっていますが、到達するところは決められています。蓑手先生は、「来週の月曜日にテストがあるので、力だめしまでは終わらせましょう」と言っていました。到達する目標は明確になっていて、力だめしがすでに終わっている人は、先の単元を学習している子もいるし、テストに出そうなところを復習している子もいます。自分で、どこを学ぶかを決められるようになっていました。
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 教室を見て回ってみると、子どもたちは自分の進度に合わせて学習を進めていました。
 さっきの「何のこれ式」を、Chromebookで自分でストップウォッチを出して時間を測ってやっている子がいました。先生に測ってもらわなくても、自分でChromebookで計測することができれば、何度も繰り返して挑戦ができます。
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 蓑手先生から子どもたちへ「○○をしましょう」という指示はほとんどありません。教科書の内容の説明についても、最初だけなので量は圧倒的に少ないと感じられます。子どもたちの席も自由で、隣の子と意見交換しつつ、教え合ったりする様子も見られます。でも、ふざけている様子もなく、みんな自分で学んでいる。自学する環境ができている。みんなが「手を動かしている」のが素晴らしく、学びの個別化が実現できていると感じました。
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 途中、一人が「先生、これ、教科書間違ってない?」と蓑手先生のところへやってきました。話を聴いてみると、筆算で商をたてていくときに、空位を飛ばして考えてしまっているようでした。蓑手先生は黒板に問題を書いて、一緒に解きながら説明をしていきます。すると、「あ、そういうことか!」と納得した様子でした。こうした質問に対する受け答えの場面は、一斉授業をやっているとなかなか出てこないだろうな、と思いました。こうして自分のわからないところを、納得いくまで先生に説明してもらえるのも、学びの個別化によってもたらされるひとつの学びの場面ではないかと思います。
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 テストは単元ごとに行われ、スケジュール表でいつテストが行われるのかも子どもたちには伝えてあるので、そのテストのための準備をいつから始めるのか、ということも含めて、子どもたちが自由に進度を決めているそうです。eboardを使ってどんどん先の単元に進むこともできるので、すでに6年生の単元まで学んでいる子もいるそうです。
 「単元テストの点数が悪かったら、直前の授業では思い出すために、戻ってやっておいたほうがいいな、と自分で考えるようになる」「先生がやりなさい、と言ったものを解いて点数が取れても意味はない。自分で決めてテストが悪かった方が学びが大きい」と蓑手先生は言っていました。そうして、自分で学びを設計できるようになっていくのだと思います。

 放課後、蓑手先生に話を聴くと、個別化によって子どもは楽しそうだと言います。学びが個別化されることによって、子どもたちは他人と比べなくなっていくそうです。そもそも違うところを学んでいるのだから、他人と比べる意味がなくなるからです。蓑手先生は、全問正解の子には、「1問も間違えなかったんだったら、もう少しレベルが高いところをやったほうがいいんじゃない?」と言うそうです。それぞれがそれぞれの学びの目標を持つようになるのですね。

 No.4に続きます。
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(為田)