教育ICTリサーチ ブログ

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『クリエイティブ・ラーニング 創造社会の学びと教育』 ひとり読書会 No.2「序章 構成主義の学びと創造―クリエイティブ・ラーニング入門」

 井庭崇『クリエイティブ・ラーニング 創造社会の学びと教育』をじっくり読んで、Twitterハッシュタグ#クリエイティブ・ラーニング 」を使って、ひとり読書会を実施したのをまとめておこうと思います。

 今回は、「序章 構成主義の学びと創造―クリエイティブ・ラーニング入門」をまとめておきたいと思います。序章では、ピアジェ、パパート、レズニック、ヴィゴツキー、デューイ、コルブらの理論について紹介されていました。専門的に教育を学んだことがない僕にとって、こうしてまとめられたものを一気に読むことができて、新しいことをたくさん知ることができました。
 すべてではないですが、自分で気になったところ、ICTやプログラミングなどと関連するところをまとめてみました。

ピアジェ

 最初はピアジェについてです。外から知識をあてがうように伝えていく方法ではなく、「子どもが自分自身で発見する機会」を重視することは昔からされていたことがわかります。子どもがどんな状況なのかに関わらず、知識を伝達してもしかたがない、ということになりますが、教科学習があまりにカリキュラム的に整理されているので、そのぶんこのあたりは弱いところなような気もしました。


パパート

 パパートの「コンストラクショニズム」についてまとめます。何かを「つくる」ことによって学んでいくコンストラクショニズムは、プログラミング教育と組み合わせて考えるとおもしろい部分が多いかと思います。また、企画や仕組みを作っていくという意味では、PBLと組み合わせて考えることもできそうです。

 プログラミング教育の実践者の方々が、「デバッグこそ大事」と言うのをよく聞きます。コンストラクショニズムの「デバッグのとき、一発で正解を導かなくてもいい」という考え方は、探究と相性がよさそうです。
 学校の教科学習では、先生と一緒に真剣に解くということはあまりないのですが、以前見学させていただいた筑波大附属駒場高校の澤田英輔先生の授業で、「先生が書いた作文をみんなでレビューする」というのがあり、それは近いかもしれないと思いました。
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ヴィゴツキー

 次にヴィゴツキーです。ヴィゴツキーは「文化的-歴史的な社会的環境を発達の源泉と捉え」ているそうです。僕は、“公教育が文化的・歴史的な資産を次の世代に引き渡す場としての役割を果たしている”と思っているので、そういう観点が近そうだと思いながら読み進めていきました。

 コミュニケーションのメディアとして使われている言語が、内面化されてやがた「思考の手段」となるというのも、非常に興味深い考え方でした。

 また、ヴィゴツキーと言えば、「発達の最近接領域」(ZPD:Zone of Proximal Development)です。これは、いままさに成熟しつつある発達領域に注目する概念です。すでに成熟した能力だけでなく、いま成熟しつつある能力にも目を向けるべきであるといいます。

 また、成熟しつつある領域こそが、「何を学ぶことができるか」というところになる。そこから、「模倣」について話が進んでいきます。

 ここはすごくおもしろいところだと思いました。スクールタクトやロイロノート・スクールなど、授業支援ソフトを使っている学校の授業を研修などで紹介すると、他の「児童生徒の答えが見えてしまうことは、公開カンニングであり、真似をするようになってしまうのでは?」と言われることがあるのですが、単純に模倣を誰でもできるということではなく、模倣できることには範囲があるのであれば、どんな場面で他の児童生徒の回答も見せるようにするのかなど、先生の見取りで授業に取り込んでいく必要があるということだと思いました。

デューイ

 続いて、デューイです。ハッシュタグを振り返ると、デューイについてのメモがいちばん多かったのですが、ここでは、自分自身の関心が高かったものに絞ってまとめておきます。

 この、「経験の連続性」の原理は、特にこれからの授業設計、カリキュラム・マネジメントには重要な観点だと思います。経済産業省による「未来の教室」実証事業に関しても、「これから児童生徒がどんな経験をするのか=どんな社会に生きるのか」というところから、教育は変わるべきだと言われているように思います。

 デューイが「将来のための知識の蓄積ではなく、未来の経験につながる経験を重視している」という表現は、非常に重要な言葉だと思います。一方で、学校とはどうだろうか?という方向に進んでいきます。

 デューイのこのあたりの言説を読んでいて、いまの学校教育/自分の仕事で、実現できているだろうかと反省させられました…。学校での学びが「単なる準備」にならないように、「学習を継続していこうと願う態度」(p.116)をどう形成していくか、考えるべきテーマだと思います。

 続いて、「内省的思考」「熟慮」について書かれています。このあたりも、教科学習ではなかなか取り入れにくかったところかもしれません。

 そして、探究から知識をどう得るのかというところに話が繋がります。このあたり、教室での実践と紐づくところがないか、考えてみたいと思います。

コルブ

 最後に、コルブの「経験学習」と「ラーニング・サイクル」についてのメモです。

まとめ

 序章部分で気になるところをまとめただけで、こんな長さになってしまいました。さまざまな観点から「つくること」「創造的であること」「クリエイティブ・ラーニング」へと繋がっていきました。このあとの章では、対談が収録されていて、対談相手の皆さんの専門領域、実践がこの序章と重なるように読んでいけました。

 No.3に続きます。
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(為田)