教育ICTリサーチ ブログ

学校/教育をFuture Readyにするために、現場目線での情報発信をしていきたいと思います。

普通教室にICT・タブレットがやってくる!そのときの学習環境を考えてみた

 これまで多くの小学校で多くの授業を参観させていただきました。時には助言させていただくようなことも多かったのですが、その際に「教室の環境」、特にICT活用時の学習環境を話題にさせていただく機会がありました。先生方は、教室を子どもたちが学びやすい環境として整えるのに、どのような事柄に留意しているのでしょうか。

 学校の教室にはたくさんの「モノ」があり「ヒト」がいます。私が勤務した小学校のほとんどは教室の後ろにランドセルをしまうロッカーがありました。その上にはロッカーに入りきらない絵の具セットや習字セット、副読本、委員会活動や係活動のファイル類などが置かれていました。40人いればそれぞれ40個を取り出しやすく並べておく必要があり、それだけでも結構なスペースが必要です。中央には子どもたちが使う机や椅子(スクールセットと呼ぶこともあります)があり、前には黒板、教卓、先生用の事務机、教材等をしまう書棚などがあります。先生や学校によっては事務机ごと教室の後ろに配置したり教卓を取り除いたりすることもあります。そこにはスペース確保以外にも教育的な意図が含まれています。

 現在では、教室の前面に大型提示装置(大型テレビやプロジェクタなど)を常設していたり、必要に応じて運び込めるようなスペースを確保したりすることが多いです。私が子どもの頃にはOHP(オーバーヘッドプロジェクタ)があったり対応スクリーンが天吊りされていたりしていました。
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https://commons.wikimedia.org/wiki/File:OHP-sch.JPG

 大型テレビやプロジェクタを設置する際には、子どもたちの「見やすさ」に十分配慮する必要があります。教室は外光を多く取り入れられるように設計されていて、照明も十分な照度を確保するように配置されていますが、大型提示装置にとってはちょっとした鬼門です。設置場所によっては大型テレビに照明が映り込んだり、プロジェクタの輝度が足りなくてとても薄くしか映らなかったりします。外光にはカーテンを引くことで、映り込みには照明の一部を消すことで対応しますが、天気や時間帯、照明の配置やオンオフの系統によって違ってきます。先生はその時々に合わせて細やかに気遣いして環境を整えているのが現状です。すでに普通教室でのICT活用が当たり前になってきていますが、こうした様子を見るにつけ、ただ「大型提示装置やタブレットを整備すればよい」という訳ではなく「学びの空間をデザインする」という発想が必要だなと強く思います。J.Jギブソン(2011)が名付けた「アフォーダンス」と学習環境の関係性なども、勉強していく必要性を感じます。
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 タブレットについて言えば、一人1台の時代にはできるかぎり映り込みの少ない照明が必要でしょう。子どもたちが使うスクールセットは子どもたちの体の発達によって高さが違いますが天板の広さはほとんど同じです。JIS規格で決まっていますが、新JIS規格のものは従来のものよりも天板が広くなっていて、授業で使うタブレットやノート、教科書、筆箱などが置き易くなっています。しかし入れ替えが進んでいる地域や学校は少数だという印象で、古いものを修繕しながら使っている現場がほとんどではないかと感じています。より現実問題として考えなければならいのは、タブレットを充電するための電源と、保管庫を置く場所を確保することです。電源で言えば既に「コンセントが足りない。たこ足配線になりがち」「ブレーカーが落ちる」「延長コード等の配線と子どもたちの導線が重なって危ない」問題が起きています。使用電気量に見合った延長コードを使わないと、発熱して断線したり、万が一には火災につながったりする恐れもありそうです。保管庫で言えば、教室にはすでに多くの什器があるので「そもそもスペース確保が難しい」問題も起きます。場合によっては、子どもたちが保管庫の近くで過ごしても危なくないように、面取り加工されているものを選ぶといった配慮も必要になるかもしれません。
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 実際の授業を考えると、主体的・対話的で深い学びを実現するための工夫の一つとして、授業内容や活動に応じて机の配置を換えることが多くあります。個別、ペア、グループ、一斉によって机の並び方を変えますが、大型提示装置に背を向けなければならない子どもたちが出てきたり、背中合わせの子どもが同時に席を立つと椅子と椅子がぶつかってしまったりすることもあります。小学校の教室の広さは基本的に8m×8mの64㎡ですが、ロッカーや什器類があるのでもっと狭い場合があります。例えば80%の広さが子どもたちのスクールセットを並べられるスペースだとして、30人学級でも一人あたりはおよそ1.7㎡、つまり1畳弱しかありません。その中で、黒板前に移動したり友だちとの意見交換で自由に行き来したり導線を確保することも考えると、結構厳しいです。一人1台のタブレットや大型提示装置を学習環境の一つとして効果的に使えば、移動しなくても、もしくは最小限の移動でも、お互いの考えを見合ったり意見を伝え合ったりすることができる授業を設計できそうです。
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 効果的・効率的な授業のためにモノとヒトと学習とをどうデザインするか、ICT活用を前提とした授業設計やICT機器の配置や机の並び方などのといった学習環境の研究・工夫の重要性が増してきているのではないかと思います。既に普通教室のICT環境を整えた学校は折に触れて授業の実際を踏まえて見直す、これから整備する学校は子どもたちの充実した学習活動という観点、健康・安全という観点からもICT環境整備を捉え直してみる機会をもつことをオススメしたいと思います。

(佐藤)