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Computer Science World in Asia 2019 カンファレンスレポート No.4(2019年10月27日)

 2019年10月27日に、東京大学本郷キャンパス ダイワユビキタス学術研究館で、アジア規模でプログラミング教育のビジョンを考えるカンファレンス「Computer Science World in Asia 2019」が開催されました。

 続いてのプログラムは、東京大学大学院情報学環長・教授の越塚登 先生による基調講演「What to Learn from Computer Science 計算機科学から学ぶこと」でした。越塚先生の基調講演は、「Why study Computer Science?」と、根本的な問いかけを会場にしてくるものでした。なぜ、コンピュータ・サイエンスは、子どもにも、次の世代にも伝えなければならないのでしょうか?
 コンピュータ・サイエンスを、「コンピュータ(計算機)」と「サイエンス(科学)」に分けて考えて、越塚先生は説明していきます。
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なぜサイエンス(科学)を学ばなければならないか?

 子どもが「サイエンス(科学)」を学ばなければならない理由は、科学が思考の基本原理だからです。近代科学以前は、人々は、「重要なことは賢者(または神)が何でも知っている。もしわからないことがあれば、それを知っている賢者を探して尋ねればいい」というふに信じていました。
 しかし、近代科学以降、我々はいまだ知らない重要なことが残されていることに気づきます。それら未知の問題に取り組むための手法が、観察、実験、証拠、数学的表現など、科学的手法なのです。科学的手法は、どんな問題にも適用できる汎用的な手法です。この科学的手法を学んで身につける必要があります。
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なぜコンピュータ(計算機)を学ばなければならないか?

 次に、なぜ「コンピュータ(計算機)」を学ばなければならないのか。越塚先生は、「コンピュータが、我々が普段考えるよりもはるかに重要なものだから」と言います。コンピュータの発明は20世紀の科学の中で最も重要な進展であり、ピタゴラスによって見つけられた数々の数学的な理論、メンデルによる遺伝の法則、ニュートン万有引力アインシュタイン相対性理論などと同じくらいコンピュータの発明は重要だと越塚先生は言います。
 コンピュータは計算できるものであれば何でも解けます(無限のメモリがいるけれど…)。そして、どんな応用にも適用できます。アルゴリズム、コンピューテーショナルシンキング、プログラミング…、それらは世界のどんな問題にも適用できる汎用的な手法です。
 だから、問題を解決する手法を身につけるために、「コンピュータ(計算機)」を学ばなければならない、と越塚先生は言います。

なぜコンピューテーショナルシンキングを学ばなければならないか?

 越塚先生は、最後にコンピューテーショナルシンキングを学ぶ理由を、概念的な視点と実務的な視点から、5つにまとめてくれました。

  1. 【概念的な視点】コンピューテーショナルシンキングが重要だから。
    • コンピューテーショナルシンキングは、「考え方を考える」「どう計算するかを計算する」こと。
    • 世界のどんな問題にも適用できる汎用的な手法であること。
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  2. 【概念的な視点】アルゴリズムの形式的記述
    • これが「プログラミング」のスキル
    • 手順を曖昧性なく記述することができなくてはならない。
    • 多くの日本人はこれが苦手。空気を読むこととは正反対。
  3. 【実務的な視点】ビジネス的視点から、優秀なIT技術者が必要
    • 社会には、小さいデジタル変革(デジタルトランスフォーメーション、DX)案件が山積みであり、コードが書ければ、生活や仕事を改革できる。
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    • 例)AIきゅうり農家の小池さん:自分できゅうりの選別ができるシステムを作った。大手に見積もりを依頼すると1億円と言われたものが、自分でプログラムを書いて20万円でできた。小さいところでのDXの実現。
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  4. 【実務的な視点】プログラミングやコンピュータは国民の基礎的なリテラシーとして重要。
    • 社会的なコミュニケーションコストを下げるために、文字や文章を読み書きできることと同じくらい重要
    • 高すぎる社会のコストを下げることができる。例えば、何かを周知するときに、国民全員に紙で印刷して配布する必要があるが、デジタルリテラシーが上がれば、URLを伝えるだけでよくなる。全国民が一定のリテラシーを持っている必要がある。
  5. 【実務的な視点】デジタル社会で生き残るためにはコンピュータやインターネットの仕組みを知ることが不可欠。
    • プライバシーを守るため、デジタル化された財産を守るため、コンピュータやインターネットの仕組みを知らなければいけない。

まとめ

 越塚先生の当日の発表資料は、以下のリンクで見ることができます。

 コンピューテーショナルシンキングを学ばなければならない理由について、概念的な視点と実務的な視点からまとめて聴くことができたのが、本当によかったと思います。これを知っているか知らないかで、学校の授業でプログラミングをどう使えばいいのか、ICTをどう使えなければいけないのか、ということを考える大きなヒントになると感じました。今後、研修などでネタとして使っていきたいと思いました。

 No.5に続きます。
blog.ict-in-education.jp


(為田)