教育ICTリサーチ ブログ

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書籍ご紹介:『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』とイギリスのシティズンシップ・エデュケーション

 ブレイディみかこ『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』を読みました。イギリス在住のブレイディみかこさんが描く、公立の元底辺中学校に通う息子さんの日常です。「多様性」について多くのことを考えさせられます。また、イギリスでのシティズンシップ・エデュケーションについても少し紹介があったので、関連して少し調べてみました。授業でやってみたい。

ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー

ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー

ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー

ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー

日常生活の中から、さまざまな考える機会を得られる日々の記録

 いろいろな日常の場面での、親子での会話がとてもいいな、と思います。こうした対話を親子でできているところが素晴らしいと思います。
 例えば、差別的な言動をしてしまう友人ダニエルがいじめにあっているところで、息子さんが言う言葉も、大人も同じだな、と感じたりもします。

「ダニエルからひどいことを言われた黒人の子とか、坂の上の公営団地に住んでいる子たちとかは、いじめに参加してない。やっているのはみんな、何も言われたことも、されたこともない、関係ない子たちだよ。それが一番気持ち悪い」
と息子は言った。
「……人間って、よってたかって人をいじめるのが好きだからね」
わたしが言うと、息子はスパゲティを食べる手を休めて、まっすぐにわたしの顔を見た。そしてあまり見たことのない神妙な顔つきになって言った。
「僕は、人間は人をいじめるのが好きなんじゃないと思う。……罰するのが好きなんだ」(p.196)

 友人たちとのやりとりや、ときどき自分自身に向けられるさまざまな視点をきっかけに考え、学ぶ機会が多く描かれています。

シティズンシップ・エデュケーションについて

 息子さんが通う中学校で行われている、シティズンシップ・エデュケーションの試験で出た問題も紹介されています。問題は、「エンパシー(empathy)とは何か」というもので、息子さんは「自分で誰かの靴を履いてみること、って書いた」そうです。

自分で誰かの靴を履いてみること、というのは英語の定型表現であり、他人の立場に立ってみるという意味だ。日本語にすれば、empathyは「共感」、「感情移入」または「自己移入」と訳されている言葉だが、確かに、誰かの靴を履いてみるというのはすこぶる的確な表現だ。(p.73)

 こうして「エンパシー(empathy)」という大きな言葉を、自分の言葉で考えていくような授業って、おもしろいなと感じました。
 シティズンシップ・エデュケーションについても、説明がされていたので抜粋します。

英国の公立学校教育では、キーステージ3(7年生~9年生)からシティズンシップ・エデュケーション(日本語での定訳はないのか、「政治教育」「公民教育」「市民教育」と訳され方がバラバラのよう)の導入が義務づけられている。英国政府のサイトに行くと、イングランドで行われている、中学校におけるシティズンシップ・エデュケーションのカリキュラムの要約があがっていた。
シティズンシップ・エデュケーションの目的として、「質の高いシティズンシップ・エデュケーションは、社会において充実した積極的な役割を果たす準備をするための知識とスキル、理解を政府、法の制定と遵守に対する生徒たちの強い認識と理解を育むものでなくてはならない」と書かれてあり、「政治や社会の問題を批評的に探究し、エビデンスを見きわめ、ディベートし、根拠ある主張を行うためのスキルと知識を生徒たちに授ける授業でなくてはならない」とされている。(p.72)

 サイトを見てみると、シティズンシップ・エデュケーションの概要を見ることができます。
www.gov.uk

 また、キーステージごとにどういったことを学ぶのかも読むことができます。
www.gov.uk

 参考にして、授業として一度組み立ててみたいな、と思いました。ただ知識として知っているだけでなく、自分の身の周りのことと組み合わせて、自分の言葉で考え、発信できるようにするトレーニングとして使えたらいいな、と思います。

 ベネッセのCRNでも取り上げられている記事を見つけられました。タイムスタンプがないので、もしかすると古い情報も入っているかもしれませんが、十分に読み応えありました。
www.crn.or.jp

まとめ

 読み進めていって、まずブレイディみかこさんの保育士としての視点、親としての視点が素晴らしいと感じました。学校での息子さんの様子から、それをもう少し大きな視点で見て議論を広げていくというか、考える視点を与えてくれるので、中学生・高校生くらいと一緒に読んでみて、感想を言い合ったりしてみたいと思いました。

(為田)