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さとえ学園小学校 授業レポート No.2(2019年11月21日)

 2019年11月21日に、さとえ学園小学校を訪問し、授業を見学させていただきました。さとえ学園小学校では、2018年から一人1台のiPadセルラーモデル)環境を実現し、学校生活のあらゆる場面で活用しています。

 今回は、ラーニングコモンズで行われた5年生のプログラミングの授業をレポートします。ラーニングコモンズは、テーブルや椅子などを自分たちでもってきて、好きなように学びやすい環境を作れるスペースです。「学校は箱型の堅苦しい教室ではなくて、オープンな場を作ってもらいたい」「iPadやパソコンといったデバイスに学校や行政がお金をかけるのではなく、こういう子どもたちがワクワクする場にお金をかけるべき」と山中昭岳 先生は言います。

 今回の授業は、「校内にあるビオトープの問題を発見し、その問題を解決するためにテクノロジーを使う」ことを目的にしています。さとえ学園小学校では、体験学習を重視しており、校内にビオトープがあります。
 慣れ親しんでいるビオトープを「場」として使って、テクノロジーを学ぶことは、子どもたちの日常とテクノロジーを繋ぐことになっていると思います。

グループごとにテクノロジーに取り組む

 ラーニングスペースに行くと、5年生3クラスの児童がグループに分かれて、それぞれに活動をしていました。ドローン、Ozobot、mBot、LEGO マインドストームなど、さまざまなプログラミング教材から、「どのテクノロジーを使いたいか」によってグループが作られているそうです。
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 床やテーブルに大きく教材を広げて、みんなで頭をひっつけてどうやって動かすか、どうやって問題を解決するかを考えていました。グループ内で、教え合いも起こっていますし、記録を取る人、アイデアを出す人、それをロボットに実装する人、とそれぞれに役割を分担しながら、グループがチームとして活動していきます。
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 この日の授業のめあては、「ロボットやセンサーを動かそう」でした。全員に見えるように、めあて・ルーブリック・集合時間がスクリーンに表示されていました。この日のルーブリックは、以下のようなものでした。

  • S:プログラミングのスキルを身につけることで、どんなことができるのか想像しながら、解決できるビオトープの問題とテクノロジーをみつけることができる。
  • A:ただ、動かすことができる
  • B:プログラミング的思考(順序、デバッグ等)を習得することができる

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 ルーブリックのAは「ただ、動かすことができる」と簡単そうだすが、それぞれの教材は、箱のまま子どもたちに渡しているそうで、自分たちでそこからどうするのかをか考えなくはならないそうです。一人の児童と山中先生が、「説明書を読みたいんだけど、英語なんですよ」「英語習ってるじゃん」というやりとりをしていました。

問題解決のためだけでなく、課題設定のためのプログラミング

 ビオトープの問題解決を、プログラミングをする目的として子どもたちに持たせています。こうした授業設計をしている理由を山中先生に説明していただくと、「課題設定」というキーワードが多く出てきました。

  • 課題設定力を上げるための方法として、プログラミングを置いている。プログラミングでどんなことができるのか想像する。
  • プログラミングは、問題解決のためだけではなく、課題設定のために使う。
  • 新しいテクノロジーを得られたからこそ、今までの自分の中にはなかった新しい課題を創り出す。

 ある児童が書いていたワークシートを見ると、ビオトープの課題として、「外来種がいること」と書かれていて、その課題をテクノロジーでどう解決するかを考えていました。
 ラーニングコモンズのテーブルは、ホワイトボードにもなっているので、マーカーでビオトープの地図を描いて、そこに解決策などを描いているグループもありました。
 描いた内容については、グループ内で「写真とった?」「撮っとく」というようなやりとりがされて、写真を撮っていました。こうしてグループで考えた内容をデータとして、自分たちで管理しているようです。こうした、大人が普通にデジタルを使ってやっていることを、子どもたちが普通にできるのも、一人1台iPadを持っているからこそだと思います。
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 授業の最後に、子どもたちはデジタルポートフォリオに書き込みをします。QRコードを読み込むと、ルーブリックが表示されて、自己評価ができるようになっています。
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 自分の感想と、友達の感想を書き込みます。書いた結果は、自動的にスプレッドシートに集約できるようになっているそうです。
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 先生たちも一人1台のiPadを活用して、授業中にリアルタイムでチェックしています。こうして毎回の授業のなかで、細かく評価をしたりチェックをしたりすることで、授業へのフィードバックが生まれます。情報を先生方の間で共有しているので、指導の方針などについてもチームとしての一貫性を持つことができると思います。通知表よりも、質も量も高い記録が残り、それを保護者に渡すことができるので、「これがうまくいくと、通知表をなくせる」と山中先生は言っていました。
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 No.3に続きます。
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(為田)