教育ICTリサーチ ブログ

学校/教育をFuture Readyにするお手伝いをするために、授業(授業者+学習者)を価値の中心に置いた情報発信をしていきます。

書籍ご紹介:『なぜ、いま学校でプログラミングを学ぶのか』

 特定非営利活動法人みんなのコードの利根川裕太さんから、平井聡一郎・利根川裕太『なぜ、いま学校でプログラミングを学ぶのか』をお送りいただきました。ありがとうございます。なんというか、「がんばろう!」という気になりました。自分で設計する研修の助けになりそうなところを中心にメモをとりましたので公開します。

 いよいよ2020年度から小学校で必修となるプログラミング教育ですが、たくさんの教員研修をしている利根川さんと平井先生の「小学校からプログラミングを学ぶ必要はないのでは?」という質問への回答がおもしろいと思いました。

今や日常の生活のなかでコンピュータを使わない日はありません。社会におけるコンピュータの社会での活用が「重要度(コンピュータにできることが増える)×普及度(あらゆる業界にある)」の掛け算で増してくる未来に向けて、コンピュータがどのような仕組みで動いているかを知るプログラミング教育はとても大事なことであり、米づくりや理科実験、調理実習といった、学校でできる体験のひとつと考えてください。(p.40)

 体験としてやればいい、というところからスタートをするのはいいことだと思いました。理科実験や調理実習と考えれば先生がやっているイメージが強いですが、米づくりなどを考えれば、地域の人をもっと巻き込んでもいいかもしれません。2018年11月に文部科学省が出したプログラミング教育の手引(第二版)のp.22にある「図5 小学校段階のプログラミングに関する学習活動の分類」でのAからF分類について、平井先生と利根川さんが対談している箇所があるのですが、そこでも以下のように書かれています。
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 地域にもよるでしょうが、プログラミングを使って仕事をしている人たちもたくさんいると思いますし、プログラミング教室なども多くできてきていますので、巻き込みながらやっていくのがいいと思います。

平井 AからF分類をまとめると、小学生がプログラミングにふれる機会、学ぶ機会をこれだけ用意しとけよってことですね。学校だけで抱え込まないで、地域や外部の人を巻き込みながら、プログラミングが学べる機会をたくさんつくりましょうよってことですね。(p.177)

 こうした形でPTAに関わるのであればやります、という人もいるのではないかと思います。ただ、「教え方」については、先生方の方が上手なのは間違いないと思いますので、先生方とタッグを組んで、どんどんE分類やF分類を増やしてもらえればと思います。
 そうしたら、A分類やB分類をやるときにSA(Student Assistant)として手伝ってくれる児童も出てくると思いますし、「プログラミング係」とか作ってもいいのではないかな、と思います。

 先生方に「社会が変わるから」というのを見てもらうために、利根川さんも平井先生も同じ動画を見せることがあるそうです。

利根川 私がプログラミング教育の目的として、よく話をするのは「社会が変わるから、プログラミングを学ぶことが必要だ」ということです。子どもたちが社会に出ていくにあたり、必要な資質・能力を育むのが学校教育の場ですよね。だったら、「まずは学校や先生たちが、社会がどのように変わっていくのかを考えましょう」と言います。そのときに、平井さんと一緒に登壇したときに知ったこの「The Future of Work」の動画をよく見てもらいますね。(p.209)

 この動画、以前にこのブログで紹介したことがあるものでした。いい動画だと思います。この機会にぜひどうぞ。研修では、この動画を先生たちに見てもらって、その後に、「未来に必要な資質・能力って何だろう」と一緒に考えるそうです。
www.youtube.com

 また、コラムで、2019年10月27日に開催されたComputer Science World in Asia 2019の基調講演で東京大学大学院 情報学環・教授の越塚登先生がされた基調講演「なぜコンピュータサイエンスを学ばなければならないのか」が紹介されていました(p.52)。こちらの基調講演も合わせてぜひ見てみるといいと思います。ブログにてちょっと長めにまとめたものもあります。

blog.ict-in-education.jp

 プログラミング教育をスタートするには、端末も足りないし、教えられる先生も足りないし、教材も足りないし…といろいろとまだまだ超えなければならないハードルもあるのですが、ひとつずつ、クリアしていきましょう。「やるか/やらないか」ではなく「どうやるか」の方に少しずつでも議論がシフトしていくように、活動をしていこう、と感じるきっかけになるかもしれない本だと思います。

(為田)