教育ICTリサーチ ブログ

学校/教育をFuture Readyにするお手伝いをするために、授業(授業者+学習者)を価値の中心に置いた情報発信をしていきます。

書籍ご紹介:『教養としてのコンピューターサイエンス講義』

 ブライアン・カーニハン『教養としてのコンピューターサイエンス講義』を読みました。プリンストン大学の大人気講義を書籍化したものだそうです。原題は「Understanding the Digital World: What You Need to Know about Computers, the Internet, Privacy, and Security」です。
 まえがきに、以下のような文章が書いてありました。

私は学生と読者が技術について知的に懐疑的であってほしいと願っています。技術はしばしば良いものですが、決して万能薬ではないということを知ってほしいのです。悪い影響を及ぼすこともありますが、技術は決して純然たる悪というわけではないのです。
リチャード・ムラーの素晴らしい著書“Physics for Future Presidents”(未来の大統領たちのための物理学)は、指導者たちが取り組まなければならない、核脅威、テロリスト、エネルギー、地球温暖化などの、重要な問題の底に横たわる科学的ならびに技術的背景を解説しようとしたものです。大統領になることを熱望していなくとも、知的な市民ならこうした話題についてもある程度知っている必要があります。ムラーのアプローチは、私が達成したいと思っていること、つまり「未来の大統領たちのためのコンピューティング」のための良いヒントです。
未来の大統領は、コンピューティングについて何を知っているべきでしょう?そして知的な市民は、コンピューティングについて何を知っているべきでしょう?(p.8-9)

 この本では、3つのコア技術(ハードウェア、ソフトウェア、コミュニケーション)に関する話題を読むことができます。すべてに詳しくなくてもいいと思いますし、すべてを記憶していなくてもいいと思いますが、どうした原理であるのかについて知っておくのにとても良かったと感じています。
 僕は1994年入学で大学に入って、その大学では情報処理が必修でした。そこで学んだことはこの本の中でもまだたくさん言及されていて、外側については技術はどんどん進歩していて、もうわからなくなっていても、土台の部分については大学で学んで良かったと思っているものがまだまだ残っているように思いました。新しく出てきた技術については、アップデートをかけていけばいいのであり、いちばんの土台の部分を知るためには、こうした本の役割は大きいと思いました。

 プログラムを書けるようになる、プログラミング教育にそのまま活用することができる、というタイプの本ではありませんが、学校の先生も読んでおくことで、テクノロジーの土台部分についての理解をブラッシュアップできるのではないかと思います。

 また、こうした本を読むと、2019年10月にComputer Science World in Asiaで東京大学大学院情報学環長・教授の越塚登 先生がおっしゃっていた、「なぜコンピューテーショナルシンキングを学ばなければならないか?」という言葉を思い出します。
blog.ict-in-education.jp
 越塚先生は、実務的な視点から、「社会的なコミュニケーションコストを下げるために、文字や文章を読み書きできることと同じくらい重要」「デジタル社会で生き残るためにはコンピュータやインターネットの仕組みを知ることが不可欠」とおっしゃっていました。新型コロナウイルス対応で、大人がリモートワークを取り入れ、学校はオンライン授業に取り組んでいる今、この言葉は何度も思い出しますし、これから変わっていく社会において、コンピューターサイエンスについての知識は、より重要になっていくと思います。

(為田)

授業で使えるかも?:国立科学博物館「おうちで体験!かはくVR」

 国立科学博物館が、「おうちで体験!かはくVR」というページを公開しています。新型コロナウイルスの感染拡大防止のために、現在臨時休館中だけど、自宅から国立科学博物館のコンテンツを楽しめるように、撮影してくれたそうです。
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 日本館と地球館と両方へ行けます。PCで見ても、スマホで見ても、行きたい方向をクリック/タップするだけでどんどん進んでいきます。展示されているものも見られますし、説明のボードも見ることができます。階段を登ったり降りたりもできますので、科学博物館の中を自分のペースで隅から隅まで見ることができます。

 学校からの家庭学習の課題として、「かはくVRで、みんなに教えたい展示を探して紹介してください」というようなクエストが出るのもおもしろいかもしれないと思いました。また、「かはくVRを自由に探検して、パンダを探してください」というふうようにクエストを先生が用意してオリエンテーリングをすることもできます。

 みんなで見学に行くのとまた違うのは、思う存分、自分の興味に従って時間をかけて館内を見て回ることができることだと思います。教材として活用するために、先生方でどんな課題を出したらおもしろいか、ディスカッションしてみてもおもしろいかもしれません。
www.kahaku.go.jp

(為田)

『学校アップデート ―― 情報化に対応した整備のための手引き』読書感想文大会 No.2

 東北大学の堀田龍也 先生と東北学院大学の稲垣忠 先生と宮城教育大学の安藤明伸 先生とご一緒させていただき、弊社フューチャーインスティテュートの為田と佐藤が執筆した書籍『学校アップデート ―― 情報化に対応した整備のための手引き』が2020年4月30日に発売されました。
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 おかげさまで、多くの方にお読みいただき、FacebookTwitterなどで感想を書いていただいている方も多く、大変うれしかったです。「読書感想文大会をしましょう!」という呼びかけに、全部で13件の回答をいただきました。本当にありがとうございます。そのまま全文、掲載させていただきます。

『学校アップデート』を読んでの感想を教えて下さい。

 読後の感想の次に、「『学校アップデート』を読んで、あなたが必要だと考えた「学校アップデート」を教えて下さい」という設問をしました。お読みいただいた方々に、学校アップデートを自分ごととして考えていただき、できることは何かを探してもらいたかったからです。また、そうして出てきたありえる「学校アップデート」を仕事として手伝っていきたい、というのももちろんありました。

  • 自分も含め、先生方一人一人のテクノロジーへの味方・考え方をアップデートすることがまず必要だと考えました。ZoomやGoogle classroom、フォーム入力、一人一アカウント、クラウドバイデフォルトなどのテクノロジーに「ネットは心配」「情報漏えいがあるから」「よくわからないものはやめたほうがいい」などのような見方・考え方ではなく、「リスクの対処を学び、上手に使うからこそテクノロジーの恩恵を学校に受けることができる」という見方・考え方へ変えていけることが大切だと思います。(塩谷直大@北海道斜里町立斜里小学校)
  • まずは教職員の意識のアップデートが必要だと思います。(齋藤純@仙台市立広瀬中学校)
  • 学校の情報機器をアップデートしてほしい、と思うことはたくさんある。しかし、それ以上にそのお金を使って、もう1人教員がいたならばどれだけ、助かるだろうと同時に思うことがしばしばある。
    子どもに対して、本当は教員の数がいたほうが、効果的な教育を行うことが出来るのかも知れない。そのような凝り固まっている思考をほぐし、アップデートしていく必要があるのではないかと思う。
    特に、特別支援を必要としている子どもたちに対する、教員や指導員、支援員の数は圧倒的に足りていない。あと1人自分がいればどれだけ、子どもたちの力を伸ばすことができ、自信をつけてあげることができるだろうかと、悩む日々である。
    情報機器のアップデートだけにとらわれず、本当に子どもたちのために使うべきお金はどこなのかじっくり見つめ直してほしいと思う。(あさこん@特支学級担任)
  • 教師のマインドセットのアップデートが最も大切。
    タブレットはあるけれど使いにくい、使い方がわからない、黒板に書いた方が早い、タブレットを渡したら子供が遊ぶ…ではなくて、「まずはやってみよう」「パソコン・タブレットを教えるときだけに出てくる特別な教具として見るのではなく、とにかく子どもに触らせてみよう」という考え方の転換こそ「学校アップデート」の始まりだと思う。(藪田顕嗣@瀬戸SOLAN小学校)
  • アップデートが必要なのは、学校というモノをとりまくもの全てだ。
    ICTは手段の一つ。だが、それがある前提で物事を考える必要がある。ある意味、これまでの経験以上に、これから何を学んでいくかが問われる時代になりそうだ。(井上拓也@公立小学校教諭)
  • 先生方や保護者、地域の皆様とこれからの学校が目指す方向のイメージを共有することが大切ではないかと思います。子供たちの未来の姿を一緒に見ることができるようにしたいと思います。(遠藤 浩志@仙台市 八乙女小)
  • 学校というより、教育委員会の問題が大きい、教育委員会という制度のために学校の管理が非常に大所帯である。
    委員会は転ばぬ先の杖ばかりで決定が非常に遅い、また、根拠のためか、教員を縛り付けるためか意味のわからない報告文書などもこと時期たくさんある。
    こんな制度をなんとかしないと学校だけであわるなんて無理って思ってしまう。
    コロナの関係で指導主事が作った学習プリントも散々で、それを学校のPCで開けようとしたら形が再現不能なぐらいに崩れて、知り合いの指導主事に言ったら、「そんな学校が何件かあるから、学校長を通して学校指導課に連絡を入れてください」って返答、そんな学校が何件あるのを知ってるならすぐにPDFで送ってほしい。
    とにかく、こんな教育委員会制度をかい潜り学校を、変えられる糸口を探りたい。(木村明憲
  • 記載のあったクラウド化やICT支援員の整備が必要ですが、それに加えて昔のような学校がもっと地域との繋がりを復活させることが必要かと思います。学校ありきの地域という考えがあれば、先生方と町内会との連動ができるようになれば、より先生方は本来の仕事に専念できると思います。今あるものと今あるものを組み合わせて、新しい付加価値を生み出せると考えています。(末永幸@テクノ・マインド)
  • 教師の意識:「勉強」という言葉への記述もありましたが,何かを「我慢することから始まる」的な考えは変えなければと思います。そして「先に生まれたから教えることができる存在」ではなく,「共に学ぶ」「学ぶ姿勢を見せる」存在になること。(岩城豊@中山町立長崎小学校)
  • 先生方の意識改革が必要と感じています。先生方の自主性に任せる時間も大切ですが、せっかくの在宅勤務の時間を生かして、Zoomなどを活用して、研修をしていこうと考えています。今、必要感があるので、研修をする意味があると思います。先生方の意識が高まれば、すぐに変わると思います。(小路健太郎@千葉県公立小学校教員)
  • オンライン学習未経験者が多いので、一度オンラインのやり取りを職員全員が経験する。(矢崎ひさ@栗原市栗駒中学校)
  • 個人的には「育てたい力のアップデート」という項目が印象的です。1人一台=社会に合わせて…という文脈で語られがちですが、そもそも社会に役立つ人間を育てることが教育の目的ではない、という思いもあります。だからこそ、育てたい力とは何か?を考える必要性があります。そうすると、学校で教えるべきことや経験させることに時間を割きたいのなら、そもそも教員の雑務がICTにより効率化される必要があるのです。そうすると自動的に学び方も、ICTされる必要が出てくる、というのが私の考えるアップデートです。個別最適化を「組み合わせる」と書いてくださったのはありがたいです。こちらが本当のICT化のゴールではないと感じていたので。
    育てたい力については抽象化しすぎないレベルで、各学校がはっきりと打ち出しあいたいですね。結局、文科省の言ってることもわかりづらいし、学校の言ってることもわかりづらい、独特の表現が教育業界にはあります。環境整備も大切ですが、こういう幹がしっかりしていないと、宝の持ち腐れにもなると感じました。(KT)

 お忙しい中、感想をお寄せいただきました皆様、本当にありがとうございました。ICTはあくまで道具なので、「どう使うか」の方が重要なのです。ただハードウェアがアップデートされるだけにならないよう、どういったことができるのかを考えて活動していきたいと思います。


(為田)

【思考実験アンケート】もしも私が“教務主任”だったら…?(最終版)

 学校の休校が続き、学校が教育だけでなく、安全、福祉などの機能も担っていて、先生方が支えていてくださっていたのだということが、改めて認識されている状況だと思っています。
 さまざまな「学校は○○すべきだ」という声も聞こえてきますが、そこで重要なのは、「何を問題として捉えているか」ということだと思います。それを「自分ごと」として考えてみる【思考実験】をするために、「もしも私が“教務主任”だったら…」というアンケートをとり、最終版をまとめました。
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もしも私が“教務主任”だったら…

 もしも自分が“教務主任”だったら、「今の状況で最も重視するのは~~~。そのために、すべきことは~~~。」という定形でのアンケートにお答えいただきました。ご記入いただいた職業も参考に入れました。

  • 【小学校講師】もしも私が“教務主任”だったら、今の状況で最も重視するのは子どもたちの学習をどう確保するか。
    そのために、すべきことは探究的な学びができる問いの設定。
  • 【教員】もしも私が“教務主任”だったら、今の状況で最も重視するのは児童・生徒の学びを止めない。
    そのために、すべきことは遠隔学習指導体制の確立、と、教員の遠隔学習指導への対応力強化(研修)。。
  • 【会社員】もしも私が“教務主任”だったら、今の状況で最も重視するのは児童生徒の学習権の保障。
    そのために、すべきことは家庭の状況・環境調査。
  • 【   】もしも私が“教務主任”だったら、今の状況で最も重視するのは自分も含めて児童生徒、そして学校に関わる教職員の命を守る。
    そのために、すべきことは率先して在宅ワークをする。
  • 【教頭】もしも私が“教務主任”だったら、今の状況で最も重視するのは年間の学習内容のありかた。
    そのために、すべきことは学校再開から年度末まで残された時間で、何を取って何を捨てるのかシミュレーションを繰り返す。
  • 【会社員(宮城県)】もしも私が“教務主任”だったら、今の状況で最も重視するのは生命を守り、子供たちのメンタルケアをすること。
    そのために、すべきことは自宅待機させている児童生徒へ、週に一度連絡するようにして、自宅待機で何が困っているかを電話で聞く。35人学級が実現出来ているのであれば、1日7人と電話するよう指示。
  • 【特別支援学校教諭】もしも私が“教務主任”だったら、今の状況で最も重視するのは一人ひとりの児童生徒のニーズに合った学習機会の提供とオンライン会議システムを用いたフォローアップ。
    そのために、すべきことは
    • 学級のそれぞれの児童生徒に適切な教材(オンライン教材、NHK for School、従来型紙ベースの教材など)を、授業の進度に合わせて2週間分準備し、配付する→教科書を進めるため
    • 時間割(学級で用いているもののうち午前中のみ)を提示し、1週間後の到達目標を提示する。
    • 朝の会、帰りの会、昼食(給食)をオンラインで実施(生活リズムを整える)
    • 午後の時間は、教師が学習の進捗状況を個別に確認し、つまづいている部分をフォローアップする。(各曜日5人または6人ずつオンラインまたは電話)。
  • 【カウンセラー・コーチング(コーチ)】もしも私が“教務主任”だったら、今の状況で最も重視するのは不安やイライラと向き合う事。自分のココロと向き合う事。自分の心の変化を認めてあげる事。
    そのために、すべきことは不安を言葉にしてみる事、感じるままに言葉に出来る場所、小さなチャレンジを聞いてくれる場所を閉鎖型で言葉にして吐き捨てられるweb上かボイスメッセージ、チャットの場所を創る。自分の心と向き合う練習。不安を言葉にしてみる練習。言葉にして吐き出す安心安全な場所があることで自分のココロの変化を観察してみる練習。
  • 【校長】もしも私が“教務主任”だったら、今の状況で最も重視するのは学習課題、収集、評価の公平性及び今後のスケジュール管理。
    そのために、すべきことは教職員の意識共有。
  • 【教員】もしも私が“教務主任”だったら、今の状況で最も重視するのは児童の心の状況の把握・教員のモチベーション維持。
    そのために、すべきことは電話での確認がベストだが、回線数などの問題もある。低学年は難しいが、交換日記みたいなもので気持ちの共有を図る。教員に対しては、自分自身が抱える課題や悩みを聞く。やりたくても出来ない気持ちが多い教員は多いと思う。

いただいたコメント

 フリーコメントもご記入いただいたものを抜粋して紹介します。コメントの方にも、学ぶ点はたくさんあります。ありがとうございます。

  • まず改めて法令上の教務主任とは、を調べました。大変ですね、教務主任。
  • 教員ではないため、もうやっている学校もあるかもしれませんが、毎週担任から連絡では無く、いろいろな先生から電話してもらうほうが効果的かと思います。在校生の中にも、新担任が嫌いな児童生徒がいるかもしれませんので、いろいろな先生から連絡するようにしたほうが良いかと考えます。
  • みんなが不安なときだから、不安な気持ちでも共有できれば希望に繋がる!!横断歩道みんなで…じゃないけど…子供たちの強さを信じています!子供たちは守られるだけの存在じゃない!!
  • 先が見えない中でのカリキュラムマネジメントは、最悪ケースの想定が必須です。
  • 学校は上意下達の世界で管理職にはなかなか意見を言えない。

まとめ

 アンケートを開始したときにも書きましたが、正解を探したいというわけではなく、さまざまな選択肢を見えるようにしたい、というのが目的で行ないました。このアンケートが、どこかの学校で、誰かの思考に、何らかの形で役立てばいいなと思っています。

 ご回答をいただきました皆様、どうもありがとうございました。

(為田)

【思考実験アンケート】もしも私が“学校長”だったら…?(最終版)

 学校の休校が続き、学校が教育だけでなく、安全、福祉などの機能も担っていて、先生方が支えていてくださっていたのだということが、改めて認識されている状況だと思っています。
 さまざまな「学校は○○すべきだ」という声も聞こえてきますが、そこで重要なのは、「何を問題として捉えているか」ということだと思います。それを「自分ごと」として考えてみる【思考実験】をするために、「もしも私が“学校長”だったら…」というアンケートをとり、最終版をまとめました。
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もしも私が“学校長”だったら…

 もしも自分が“学校長”だったら、「今の状況で最も重視するのは~~~。そのために、すべきことは~~~。」という定形でのアンケートにお答えいただきました。ご記入いただいた職業も参考に入れました。

  • 【小学校講師】もしも私が“学校長”だったら、今の状況で最も重視するのは子ども、教職員の安全の確保。
    そのために、すべきことは在宅学習、勤務体制の構築
  • 【教員】もしも私が“学校長”だったら、今の状況で最も重視するのは生徒と教職員のコミュニケーションの場作り。
    そのために、すべきことはまずは健康に注意することを日々皆さんに呼びかけたい
  • 【教員】もしも私が“学校長”だったら、今の状況で最も重視するのは児童・生徒とその保護者の、心的サポート。
    そのために、すべきことは児童・生徒とその保護者との、コミュニケーション手段の確立。
  • 【会社員】もしも私が“学校長”だったら、今の状況で最も重視するのは学校と子供・子供同士の関係性づくり。
    そのために、すべきことはコミュニケーション手段の確立
  • 【   】もしも私が“学校長”だったら、今の状況で最も重視するのは学校という物理的な空間がなくても、子ども・先生・保護者がお互いにつながることができる場をより多く確保することを考える。
    そのために、すべきことは
    • 既存の方法で何ができるか洗い出し(電話・郵便・メール・ホームページなど)
    • 子ども・保護者・教職員の状況の把握(困っていること、端末や回線、活用スキルなど)
    • 子ども1人1アカウントの確保
    • 結論だけでなく意思決定プロセスを含め可能な限りていねいに説明
  • 【会社員】もしも私が“学校長”だったら、今の状況で最も重視するのは児童生徒の命を守る。
    そのために、すべきことは
    1. 自宅待機と外出自粛
    2. リモートでの学習提供
  • 【教育公務員】もしも私が“学校長”だったら、今の状況で最も重視するのは幼児児童生徒と学校にかかわる職員全員の命を守る。
    そのために、すべきことは休校措置を延長。いっそのこと9月スタートとして学びの準備を進めていく。
  • 【公立中学校長】もしも私が“学校長”だったら、今の状況で最も重視するのは
    「先ずは学校としての役割を停止させないこと」
    「目の前に子供がいない状況であっても家庭と連携し双方向を保つこと」
    「子供の安心、安全に心を配り、きめ細やかな対応をすること」。
    そのために、すべきことは、
    「学校の役割が再検証されているとはいえ、それはコロナ後にやればいいこと」
    「先ずは通常の授業や行事がある想定で勤務すること」
    「出来ることは柔軟にスピード感をもって行う(ICTの活用など)」
    「教職員間のコミュニケーションを書かさないこと」。
  • 【教頭】もしも私が“学校長”だったら、今の状況で最も重視するのは児童生徒の「つながり」の保障 先生と友達と。
    そのために、すべきことはオンライン・お手紙・リスクを下げた校庭開放
  • 【会社員(宮城県)】もしも私が“学校長”だったら、今の状況で最も重視するのは生命を守ることです。
    そのために、すべきことは自宅学習させることが前提となりますが、週に一度見て欲しい動画を複数紹介し、過去のウイルスと人との戦いや、デマなどの情報に惑わされないことを伝える動画を見てもらい、どう感じたか考えてもらいたいです。もし自宅にICT機器が無い家庭は学校から機器を貸出しもOKとします。
  • 【私学教員】もしも私が“学校長”だったら、今の状況で最も重視するのは児童生徒の学習機会・学校との関わりを保証し、保護者の安心感・満足度を上げる。
    そのために、すべきことは全家庭にiPadを配布して、児童生徒と学校がオンラインで繋がる環境を作る。(学校が借金をしてでもやる)
  • 【教員】もしも私が“学校長”だったら、今の状況で最も重視するのは生徒と教員の安全。
    そのために、すべきことはIT教育の安定的拡充
  • 【公立中学校教員】もしも私が“学校長”だったら、今の状況で最も重視するのは家庭以外のつながる場を確保する。
    そのために、すべきことはオンライン化によるコミュニケーション、個別の連絡、関係機関への接続などあるゆる可能性を考え、ツールをそろえる。

いただいたコメント

 フリーコメントもご記入いただいたものを抜粋して紹介します。コメントの方にも、学ぶ点はたくさんあります。ありがとうございます。

  • 学校の在り方について考える機会をいただきました。ありがとうございます。
  • 平時ではないので、あまりハードルをあげたくないですね
  • 児童生徒、教職員の命や生活を守るのが校長の努めであり、「教育」だと考えます。死んだら、教育も何もあったもんじゃない…。多少の学習は、少し大人になってからでも獲得可能でしょうから。先ずは、命最優先で!
  • 文部科学省は学校設置者に、学校設置者は各校長に、各校長は現場の担当者にそれぞれ投げすぎ、そして判断が遅すぎ。休校を延長するなら早めの告知を行い、現場に死人が出ないようにする。また、学習を確保のためオンライン授業をするなら強力な命を出し、全国精鋭教員を集めて指導要領に則ったオンライン学習動画と副教材を作らせて、全国一律でそれを使用。各校教員に細かいフォローを頼む体制を確立する。ネット環境を整えることができない、あるいは自由につかえる端末を人数分確保できないような家庭に関しては、NHKを始めとする放送局に命を出し、サブチャンネルでその動画を配信する(待ち時間などはリアルタイムに沿った形で)。GIGAスクールに使うべきお金はまず、こういったオンライン学習の基盤を作るのに使っていく。
    あ、これは自分が絶対的権限を持った文科省大臣だったらって内容ですね。そっちの方でもアンケートとったら・・・もっと困った答ばかり集まるのでしょうか。
  • 教育課程の大変革、編成替えが迫られてます。教育の本質を見つめつつ子供に不利益が生じないよう、制度や環境の大胆な見直しが必要です。
  • 休校が延長される前提で、その対応を様々考えています。
  • 私の住んでいる宮城県では、学校と自宅を繋げての遠隔授業ができる学校はほんの一握りのため、学校と自宅とのやり取りができる手段が電話しかない状況です。教育委員会でもこのような環境打開しようと検討しても、予算との戦いになりますし、予算ついても来年度になります。また学校任せにしていた家庭も非常に多かったはずです。各家庭での教育もこの機会に見直すべきかと感じます。
  • この事態をオンライン型の学習で乗り越えようとしている学校が多く見られるようになりましたが、全員が(学校支給の)同じ端末を持っているのか、各家庭の端末環境に委ねているのかでやれることが随分違うなと感じています。
    学校支給の端末であれば、アプリのインストールやフィルタリングは教員がしたいようにできますが、家庭の端末だと、保護者の方で様々な制限がかかっているものも多いため、アプリ1つダウンロードしてもらうにも同意を得て進めなければなりません。
    iPadAndroid、PCでできることが変わるため、1クラスにそれらが混在しているという状況は教員としては大変煩わしく、全員が同じデバイスであることは学習スタイルの統一するために重要だと思いました。
  • 現実的な問題で文部科学省が単位の認め方、入試の方法、範囲、日程などの発表が無いと動けません。通常通りの入試が行われ再開は文部科学省が学校に丸投げの場合、通信教育をしていくだろう。登校させられない。ただ全日制の場合、現状通信教育は行っても通信制でない場合単位として認められない。単位の認め方は流石に指針が出るはずなのでそれに従うよりない。文科省ゴールデンウィーク後授業しろと言われたらやるしかないが、その場合ボイコットが起こるし止められない。自主休校を認め出席停止扱いとする。規定の授業日数が足りなくなれば単位は認められないため、現在の文科省の規定ではシステム上留年となる。ただ平常時とは違うため、留年が社会的に不利になることはないだろうから生徒には希望者に留年という選択肢を与える。勿論単位の問題がクリアできるのであれば卒業も認める。留年の場合、授業料は免除。その分の負担は国にしてもらう。留年が多ければ教室の確保ができないため新1年の入学者を削減するしかない。勿論その負担も国に求める。

まとめ

 アンケートを開始したときにも書きましたが、正解を探したいというわけではなく、さまざまな選択肢を見えるようにしたい、というのが目的で行ないました。このアンケートが、どこかの学校で、誰かの思考に、何らかの形で役立てばいいなと思っています。

 ご回答をいただきました皆様、どうもありがとうございました。

(為田)

『学校アップデート ―― 情報化に対応した整備のための手引き』読書感想文大会 No.1

 東北大学の堀田龍也 先生と東北学院大学の稲垣忠 先生と宮城教育大学の安藤明伸 先生とご一緒させていただき、弊社フューチャーインスティテュートの為田と佐藤が執筆した書籍『学校アップデート ―― 情報化に対応した整備のための手引き』が2020年4月30日に発売されました。

 おかげさまで、多くの方にお読みいただき、FacebookTwitterなどで感想を書いていただいている方も多く、大変うれしかったです。
 感想をシェアしていただくフォームを作り、「読書感想文大会をしましょう!」という呼びかけにも、全部で13件の回答をいただきました。本当にありがとうございます。そのまま全文、掲載させていただきます。

『学校アップデート』を読んでの感想を教えて下さい。

 最初に、『学校アップデート』を読んでの感想を伺いました。こうしてお寄せいただいた感想は、僕にとっても非常に学び多いものとなりました。

  • アマゾンで単行本を予約注文していましたが、届くまで我慢できずに発売日にKindle版も購入してダウンロードし、イッキ読みしました。どのページも面白く本当に勉強になりました。特に印象に残ったのが「アジャイル」の考え方です。学校の取り組みをアップデートしていくという考え方、本当に大切だと思いました。どうしても学校は「慎重に」「計画を立てて」「全員が同じ、平等に」「うちの学校だけできない。周辺の学校と足並みを揃えて」などの考え方に陥りがちです。そうして、今回のコロナのようにICTの遅れやオンライン授業の取り組みの遅れが生じます。そんな学校の「足並み揃えましょう」文化が、逆に「格差」を生み出していく皮肉な結果になってしまいます。この本には、そんな「格差」が生まれつつある、「コロナの世界」、そしてこれから待ち受ける「アフターコロナの世界」に向けて、私たち教師がポジティブに、全力で、精一杯できる「事例」がたくさん載っています。ICTの普段使い、プログラミング教育、情報活用能力、環境整備など、自分が取り組んでいける、自分たちの学校で取り組んでいけるヒントになる事例がたくさん載っています。この本を職場で同僚や管理職などに広めて、多くの方の参考になるようにしていきたいです。素晴らしい本をありがとうございました。(塩谷直大@北海道斜里町立斜里小学校)
  • これから「教育の情報化」に向けて頑張りたいすべての教師に読んでもらいたい一冊だと思いました。本の構成が「教育の情報化の必要性」→「先行実践」→「必要な準備」という流れになっていて納得しながら読むことができた。また,ICTの環境整備だけでなく,情報モラルやセキュリティ,研修会などによる人材の養成など必要なことが多岐にわたっていたことも再確認する機会になりました。学校が社会の標準に追いつくことが必要なことは誰しもが感じているけれど,一体どうすればいいのか…という悩みに答えてくれるような一冊だと思いました。(齋藤純@仙台市立広瀬中学校)
  • 学校のアップデート。確かにとても魅力的なものばかりである。これらが学校に整備されていくことで、効率化できたり、より深い学びへと子どもたちを連れて行くことが出来るであろう。しかし、同時に課題もたくさんあるように感じる。
    1. 金銭面の問題
      • パソコンや電子機器はどんどんアップデートされて機能が追加されていく。無料で対応できる範囲もあるが、ある一定のアップデートを超えると、その機種ではサポートがされなくなっていく。例えば、Windows7のサポート終了などは最近のICTの面で学校で悩まされた方も少なくないと思われる。その際に、OSだけでなく本体やCPUそのもののアップデートが必要となり、それによりアプリやOSのUIや仕様が変わっていくのがITの世界の常であると考える。そのスピードに学校とその予算がついていくかどうかという点で課題を感じる。著しいITの変化の中では、2~3年で新世代のものに変える人も少なくない。敏感な人は、新機種が出る度に買い替えている人々も居る。今後小学校6年間で学ぶ期間だけでも、1つのOSの世代が始まり、終わりを迎えるのではないかと思う。そのような中では、最初の1年生で学んだ「基本的事項」が学年があがると急に使えたり、禁止されていたことが急に解禁されてしまう可能性もある。その度に、教員は対応に追われてしまい、授業そのものへ注ぐ熱量を削いでしまわないだろうか。
    2. カリキュラムに対する課題。
      • インターネットや学校外の情報に触れれば触れるほど、カリキュラムを超え出た学習が生まれる可能性がある。例えば、ただひたすらに昆虫に興味をもちその生態について学びたがる子どもが出てくるとしよう。その子にとって、眼中に興味のある昆虫の生態について、インターネットやオンラインサービスを浸かって、専門家に質問していくことができるのはとてもプラスの側面である。しかし、45分という授業時間や単元の時間数などによって、それはどこかで打ち切らなければならなくなってしまう。彼・彼女のために必要な学びは昆虫の生態について深めさせることなのか、それとも英語会話のアクティビティをさせることなのか、教員側が応えを出していくことになってしまうだろう。そこに怖さや、難しさ課題が潜んでいるのではないかと思う。
    3. 情報と「真実」・「正しさ」などに対する批判的思考の必要性
      • インターネットを使う中でメディアリテラシーをどれだけ養成したとしても、広告や情報操作、サーキュレーターによる厳選など、確実に誰かのバイアスのかかった情報を入手する機会が増加する。例えば、日本の歴史における北方領土問題についての問題について、子どもたちに、誰のどこまでの意見を見せるのか、教員側というよりも政府側がとても頭を悩ますことになるだろう。公立学校においてその情報の制限をかけることが是なのか非なのか。その点についても考えていかなければならないと思う。
        (あさこん@特支学級担任)
  • noteに「本書の書評」を書いたので、そのURLです。感想文でなくて申し訳ありません。(hohohoo1125 )
  • 学校を「世間並みに」アップデートしよう…情報化、1人一台タブレット、eラーニング…もう何年も前から言われていたが、なかなか進まなかった。
    昔は学校で新しいことを学ぶ、学校に行けば新しいことを知ることができる…学校はそんな場だったはず…それがいつの間にか世間からも置いてけぼりを喰らうような状態に…
    コロナの影響で、オンラインの学びに注目が集まっている。オンライン授業をどうするか…が大事なのではなく、学校自体をアップデートすることが大事だ。
    もちろん予算云々の関係があるから、パッとできることではないけれど、この本は様々なアイディアをくれる。(藪田顕嗣@瀬戸SOLAN小学校)
  • 【アップデートが必要なのは?】
    これまで通りはもうない。時代の流れはコロナによって加速した。
    「今、何が必要か?」という視点だけではなく、「これからどうしたいか?」という、未来のことを含めてデザインしていかなければならない。(井上拓也@公立小学校教諭)
  • これからの学校教育を考えていくことについて、具体例も交えて、分かりやすくまとめられていました。自分の立場で何ができるのか。何をしなければいけないのかなどを読み進めながら考えました。まず、同じ職場の方々に勧めて、一緒に内容を話し合うことができればと思いました。若い先生方との勉強会でのテキストとしても良いのかなと思っています。(遠藤 浩志@仙台市 八乙女小)
  • 学校を、どのような視点で変革していくのかについて具体的に示されておりイメージがついた。コロナのこの時期だからこそできること、新しく挑戦したいことなどが思いついた。(木村明憲
  • 教員、教育委員会、教育センターだけでなく、家庭まで、それぞれの立場で、今後の教育について必要なことや、今検討されていることが記載されており、非常に読みやすい構成でした。特に家庭では教育委員会でどのようなことを検討されているかは分かりません。基本的に関わりがないため、学校アップデートを読むことで理解することができます。個人的には地域との連携についての記載もあり、街づくりにも関わる本でもあると感じました。(末永幸@テクノ・マインド)
  • 「学校アップデート」これがなかなか進まないことを実感しています。それは「こうしたらいいんじゃない?」という反省や振り返りを行事や授業研究会などのたびに行っている学校がほとんどだと思いますが,それを基に以後の活動を「とても細かいところでアップデート」しているのけれど,「大きく大胆にアップデート」することに躊躇してしまっている現状があるからだと思います。これまでの「学校」「教育」を「アップデート」することに,不安や戸惑いを隠せない自分もいます。それほど「学校アップデート」に書かれていることは大きな変化なのだと思います。
    教育の情報化は,次代を担う子供達にとって間違いなく必要であるとほとんどの教師が思っているはずです。でも自分が使えるものではないことや主導権を譲ってしまうことへの不安,将来的に必要なことはわかっているがそれをより効果的に使うようにできるための「基礎的学力」をつけていくのだというある種の「逃げ」もあるのかなと感じています。使えるものを使って学んだ方が効果的なことは当たり前なのですが。
    自分を含めてこれまでの学校教育の中では当たり前だったことが,実はそれほど根拠がないものだったり,新たな方法(例:葦手先生のスクールタクトを使った朝の会)の方が成果を出していたりしていることをもっと教師自身がフィルターをかけずにみることが必要なのではないかと思いました。
    「教える」ということから「学びを支える」という教師の意識の「アップデート」が一番難しいのかもしれません。「教えようとすればするほど,教えたいと思えば思うほど,話さなくなり,離れていく子ども達」,教師は「話させたい」「寄り添いたい」と思っているのに,その逆になってしまう。ICT活用が教師の意識やこれまでの学校を「アップデート」するための特効薬の一つ(あえて「一つ」としておきます。)だと思いました。
    自分がもっともっと「アップデート」を繰り返す「アジャイル」できる教師にならなければならないと思います。(岩城豊@中山町立長崎小学校)
  • コロナウイルス対応のために課題配布、電話対応しかできな現状なので、オンライン授業や動画配信、HPの活用などができないか探究している今の私にとって、オンライン授業などの形だけでなく、教育の根本・本質を考えることができました。今は、緊急事態なので形ばかりが注目されるが、これからの社会を見据えて、子どもたちに必要な力をつける。そのためのICT機器の活用なんだと学びました。
    今、社会の関心が高まっているので、この機会に上手く学校アップデートができたらいいなと思いました。(小路健太郎@千葉県公立小学校教員)
  • 多様な学びが写真で紹介されていて、自分の学校にもやってみたいと感じた。
    ICT整備が、さらに増えることに期待する。また、オンラインの良さ、オフラインだからできる学びを模索しながら、授業を作っていきたい。(矢崎ひさ@栗原市栗駒中学校)
  • 学校のICT化に必要な考え方、物理的な準備が順を追って整理されており、各校の取り組みに照らし合わせやすいと感じました。この部分が我が校には欠けているな、という点も気づきやすい書き方だと思います。(KT)

 ご回答をいただきました皆様、本当にどうもありがとうございました。No.2では、みなさんが考える「学校アップデート」について伺った回答をまとめたいと思います。

 No.2に続きます。
blog.ict-in-education.jp


(為田)

新潟市教育委員会「新潟市インターネット接続環境及び意識調査」実施レポート(2020年5月8日)

 新潟市教育委員会 学校支援課の片山敏郎 先生のFacebookに、以下のような投稿がアップされました。

今日の午前11時半に出した通知を基に、各学校のメール配信システムから保護者にネット環境調査を配信してもらいました。各学校も保護者も素早く対応してくださり、半日にも満たない21:00時点で約50,000件の家庭数のうち、23,000件の回答をいただきました。
リアルタイムで数値が変わり続ける凄さを目の当たりにしています。接続環境は9割を超え、多くの積極的な意見があることが明らかになりそうです。また、学校のパソコン室の開放ニーズも高いですし、環境格差に不安を感じている方々も少なくないことが分かりました。
しかし、Googleのシステムの凄さと、アンケート回収の早さ等、社会の意識やリテラシーが相当高くなっていることを実感しました。
この凄さを上に伝えていき、判断材料にすることと、現場におろして役立ててもらうことが私の役割です。
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 Googleフォームを使ってのアンケートは、学校や教育委員会の研修でデモンストレーションをして見せると、「これ便利!」と言ってもらえることが多いのですが、「セキュリティが心配…」という声も聞かれ、なかなか導入がされていない印象でした。それを、新潟市全体50,000件で行う大規模な取り組みに本当に驚きました。半日で23,000件の返信が来て、それがデータとして勝手に集計されていく、というのは見たことがない光景です。

 Googleフォームは、家庭と学校を結びつけるツールとして非常に強力だと思いますし、教育委員会単位、学校単位で、それぞれのニーズにあった形で利活用が進めばいいなと思っていましたので、どうやって新潟市教育委員会が、今回の意識調査を全市で導入するに至ったのか、片山先生にお話を伺いました。


Q:新潟市全体でGoogleフォームを活用するということについて、決定に至った経緯を教えていただけませんか?

片山先生:はい。新潟市では、4月当初から家庭への情報環境調査をすることを検討していました。その際の一番の検討の視点は、如何に各学校に負担をかけずに調査をするかでした。というのは、新潟市は、4月当初休校にせずに、感染症対策に取り組みながら学校を再開していました。その対応に、各校の管理職も担任も、全力のエネルギーをかけていたからです。
アンケートをメールで各校に配付し、家庭数で配付してもらい、担任に集計してもらい、その結果をエクセルで打ち込んでもらい、市教委に提出するという従来調査のやり方では、「印刷」「配付」「回収」「集計」「提出」という5つの工程があり、項目数を少なくしたとしても、学校に負担がかかります。
少しでも現場の手間を減らすには、アンケートを市教委で集計するという方法があります。近隣の自治体ではそのような方法を取りました。それでも、やはり、回収までは学校で行います。更に、新潟市のような家庭数40000から50000規模となると、市教委で集計作業をすることも物理的に厳しいです。
そこで、その次に考えたのが、紙で配り、QRコードでアクセスして貰い、Googleフォームで回収する方法でした。これは、配付直前まで行きましたが、再度の臨時休校が決定し、その中で、紙一枚を印刷配付することも大変だろうということで、見送りました。
しかし、どうしてもこのアンケート調査は、必須でかつ喫緊の課題だということで、考えた結果、休校延長が決まったこのタイミングで、メール本文を学校に送り、通常、不審者情報等の配信に使っている各学校から家庭への連絡メールシステムで、リンク先と共に配信してもらうことにしたのです。それであれば、学校の手間は、担当者(通常は管理職か情報主任、生活指導主任)の手間のみとなります。実際、お昼少し前に配信して、午後1時すぎには、保護者からのメールが集まり始めました。学校の意識が高いこともありますが、家庭に届けるための手間を最小にしたことも、迅速にできた理由の一つと思います。


Q:実際にやってみて、どのような感想を持たれていますか?(手応え、想定外だったこと、今後の方向性へのフィードバックなど)

片山先生:列挙します。


<成果>

  1. 想像以上に迅速に回答が集まったこと。(学校への通知から40時間経過時点で37000件)
  2. 回収率が高いこと。(40時間経過時点で、家庭数の推計8割が回答)
  3. 反響が大きいこと。(上司を含め、この規模での円滑な結果集計に驚いています。)
  4. 効果が高いこと。(迅速かつ回収率高く実施できることは作業効率の改善になります。)
  5. とても簡易であること。(アンケート作成そのものは、1時間かかりません。起案を通すまでの検討の日数が作業時間のほとんどです。)
  6. 概要を掴む上で、有効であること。(新潟市の園児・児童・生徒がいる家庭数の8割の意見が、簡単にグラフで見られること。)

<課題>

  1. 学校ごとの実態を把握するには、再集計の手間がいること。
    • 学校数が170ほどなので、それぞれのデータをソートをかけて作る作業の手間はあります。その際に、学校名を打ち込みにしたので、ミスタイプ等のズレの修正等が大変と思われます。また、小・中複数にまたがる家庭を分けずに打ち込むような設計をしたので、事後処理が大変です。アンケートの作り方によってある程度は解決できる問題とは思います。
  2. クラウド上であることからデータが消える不安があること。
    • 配信前のテストの段階で、調査項目の編集・修正をしていたら、調査項目がなぜか消えてしまうエラーが起き、その前にテストで回答していたデータが消えてしまいました。
      そのことから、配信後は、項目の編集を行わないように徹底しています。また、万一、データが消えても良いように、数時間ごとに、フォームデータをExcelデータに変換しています。


Q:クラウドで情報をやりとりすることについて、セキュリティを心配して、Googleフォームを活用することを悩んでいる学校もありますが、そういった点についての対応はどのようにされましたか?

片山先生:今回、メールアドレスを収集しない設定で行いました。無記名なので、個人を特定できる情報がないので、セキュリティー上の心配はほぼありません。紙で集めて、収集の過程でシュレッダーをかけないという人為的ミスや、友達に見られる等のリスクの方が高いです。
ただ、記名式や個人情報を集める際は、その旨も告知する必要はあると思います。
文部科学省も、クラウド バイ デフォルトのセキュリティーポリシーへ舵を切ったわけですので、過度な心配をするのではなく、リスク管理をして活用すべきと思います。
ただ、操作ミスによる漏洩等、人的エラーでの漏洩が起こりうるのは、紙と同じです。基本的に、集める個人情報の範囲をミニマムにし、保護者の同意(協力をお願いし、難しい場合はその方に代替の方法を用意する等)の下に進めるべきと思います。


Q:今後、新潟市のこの取り組みを見て、次に続く自治体や学校も出てくるかと思うのですが、そうした自治体や学校に対してのメッセージをいただけますか?

片山先生:Gsuiteの普及により、教員や児童・生徒へのアカウントの付与が徹底すれば、Googleフォームを使った取組は、全く特別なことで無くなります。多くのクラスで日常的に授業で使うようになり、学校でのGoogleフォームでの調査は、当たり前になるでしょう。
その際は、アンケートを出しすぎて、保護者に逆に負担感が生まれたり、回答率が減ったりするなどの新たな問題が生じるかもしれません。それを恐れてやらないのではなく、まずやってみることが大切で、ミニマムな問題の発生を前提に進めその都度解決していくことをお勧めします。
なお、Googleフォームの上限は、設問数と調査人数の積が500万件と聞きました。これは、ネットで調べた中で、教えていただいた中で信ぴょう性のありそうな情報というだけで、違っているかもしれません。より大きな自治体で実施する場合、大規模集計でつまずかないようにするために、確認をすると良いと思います。

 学校と児童生徒・保護者との繋がりを、ICTを活用して繋いでいくことは、全国の学校で求められています。休校期間だからこそ、というものではなく、今後も学校の武器として活用できるものだと考えています。この新潟市教育委員会の事例が、他の自治体での活用を後押しして、学校の情報化が進んでいけばいいな、と思います。

(為田)