教育ICTリサーチ ブログ

学校/教育をFuture Readyにするお手伝いをするために、授業(授業者+学習者)を価値の中心に置いた情報発信をしていきます。

【メディア掲載】月刊私塾界 10月号

 月刊私塾界10月号が発刊されました。今回の特集は、「教育ICT考 2021 A/W」で、教育ICTに関わるさまざまなサービスが網羅されています。
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 全部で28社の最新情報を読むことができます。こうしてさまざまなサービスを知って、自分の塾や学校でどのように使えるかを考えることは大事だと思います。
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 いつもどおり、僕の連載記事も載っております。今回は7月から8月の記録です。夏休み前に授業を参観させていただいたところから、夏休みの先生方向けの研修などをしていた頃でした。
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(為田)

書籍ご紹介:『他者の靴を履く アナーキック・エンパシーのすすめ』

 ブレイディみかこさんの『他者の靴を履く アナーキック・エンパシーのすすめ』を読みました。2019年に発売された、『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』のなかで触れられていた「エンパシー」に焦点をあてて書かれた本です。

エンパシーの良い面と悪い面と

 前著『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』では、「エンパシー」という言葉が「誰かの靴を履く」という表現で紹介されていました。この、「誰かの靴を履く」ことができるかどうか、というのは非常に大事なスキルだと感じたのを覚えています。(ブログでも紹介していました
 この本では、「エンパシー」について社会のさまざまな場面でどのように現われているのかについて紹介がされていますが、そのなかで、「自分vs敵」というふうな図式を作るなかにも、「エンパシー」は使われているということが紹介されています。「エンパシーの闇落ち」としてさまざまな事例が、ブライトハウプト『The Dark Side of Empathy』から紹介されています。

 このあたり、フェイクニュースSNSアルゴリズムによって読まされる情報などに「エンパシー」を感じて、踊らされてしまわないようにするためにしなければいけない、ということにも繋がりそうだと思いました。
 そんななか、サブタイトルに入っている「アナーキック・エンパシー」とはいう言葉が出てきます。「アナーキック・エンパシー」は、「アナーキー」と「エンパシー」からできている語です。「アナーキー(あらゆる支配への拒否)という軸をしっかりと打ち込まなければ、エンパシーは知らぬ間に毒性のあるものに変わってしまうかもしれない」(p.245)と書かれています。
 アナーキーでもって「周りから言われていること」「周りから見せられていること」を拒否することもでき、エンパシーでもって「他者の靴を履く」ことができることが重要だ、というふうに書かれています。

想像力が「違う世界」(ベタな表現だが「オルタナティヴ」と言ってもいい)の存在を信じることを可能にし、それが人の「根もとにある楽天性」になるとすれば、エンパシーはやはり個人が自分のために身に着けておくべき能力であり、生き延びるためのスキルだ。ここではない世界は存在すると信じられなければ、人はいま自分が生きている狭い世界だけが全てだと思い込み、世界なんてこんなものだと諦めてしまう。そうなれば、人はあらゆる支配を拒否することなどできない。
アナーキーがなければエンパシーが闇落ちするのと同じように、エンパシーがなければアナーキーも成立しないのだ。(p.258)

 ICTを活用できるようになって、目に見える範囲の関係だけでなく、クラス外、学校外、違う世代、とどんどん繋がっていくようになると、「アナーキー」と「エンパシー」を持っていることは大事だと思います。

イギリスのオンライン授業でのおもしろそうなネタ

 もうひとつ、この本のなかで、イギリスの学校の英語(国語)の授業の課題が紹介されていたのですが、非常におもしろいと思いました。

ところで、英国がロックダウンに入ってから、息子の学校のオンライン授業で出される英語(つまり国語)の課題がめっぽう面白い。
彼らはいま、シェイクスピアの『ロミオとジュリエット』を読んでいるのだが、その授業で出された課題が洒落ていた。主人公になりきってラブレターを書くというものなのだが、例えばこれがわたしたちの旧世代なら、女子はジュリエットになり、男子はロミオになったつもりで恋文を書いて来なさいとか言われたものだ。しかし、息子たちの世代は違う。最初の週は全員がロミオになり、できる限りライム(韻)を使って、ラップ調のラブレターを書けというのが課題だった。そして次の週には、今度は全員がジュリエットになり、自分のオリジナルのメタファーを少なくとも1か所、クリシェ(頻繁に使われる言い回しや表現)を少なくとも3か所用いてクラシックなラブレターを書きなさい、という課題が出た。
(略)
最近、英語(国語)の教員から電話がかかってきた。学校が休みになってから、各教科の教員たちが保護者たちに電話をかけ、生徒たちはオンライン授業にどのように取り組んでいるか、何か困ったことはないかと定期的に聞いてくるのだ。くだんの教員に、休校中の課題がとても興味深くて(ちなみに、『ロミオとジュリエット』の前は、「オーウェルの『動物農場』に倣って動物を主人公にしたロックダウン中の社会や人間についてアレゴリー(寓意)を書きなさい」というものだった)、息子はすこぶる熱心に課題をやっていると伝えると、教員は言った。
「オンラインだとどうしても課題中心になってしまうから、書くほうも、読むほうも、退屈しないものをと考えています」
「『ロミオとジュリエット』のラブレターなんて、読むのも本当に楽しそうですね」
「ふだんマッチョで反抗的な生徒が、ジュリエットになってすごくスウィートなラブレターを書いてきたりしてびっくりしました。逆に、目立たないおとなしい子が超クールなラップを書いたりもして。これは、いつも家でラップを聴きまくってるなって思ったり」
「いつものイメージと違う生徒の顔が見えたりするんですね」
と言った後で、思い切って聞いてみることにした。
「生徒が全員ロミオになったり、全員ジュリエットになったりして手紙を書いたのも、そういうことなんですか。ジェンダーのイメージから自由になるというか」
「そういうことに縛られないほうが、思いもよらぬ傑作が書けたりするんです。あの課題で提出された生徒たちの文章を読んでいると、そのことが本当によくわかりますよ」(p.132-134)

 『ロミオとジュリエット』ではちょっと難しいかもしれないですが、日本の国語の授業でも似た課題設定はできるかもしれないと思いました。こうして子どもたちの違う面が見られたり、「他者の靴を履く」=エンパシーを身につける訓練をすることができるのはいいと思いました。

まとめ

 テクノロジーを、「エンパシー」をもって使えるかどうか。「アナーキー」であることで「いまいる世界だけがすべてではなく、ほかのところでも生きられるのだ」と希望をもてれば、テクノロジーが大きな武器になることもあるのではないかと思いました。ICTの操作方法だけでなく、こうした「どう使うのか」に繋がる考え方も子どもたちに伝えたいな、と思いました。

(為田)

授業で使えるかも:ChromeブラウザでQRコードを作って共有する【アップデート!】

 以前このブログでも紹介した、「ChromeブラウザでQRコードを作って共有する」ですが、先日小学校で子どもたちに教えてあげたら、教室の後ろで見ていた先生が、「ほんとに!?知らなかった!便利!」と盛り上がってくれました。
 そんなChromeブラウザからQRコードを作る方法ですが、Chromeのアップデートにより(だと思うのですが…)、もっと簡単になりました。ページを開いている状態で、右クリックをするとメニューの中に「このページのQRコードを作成」が表示されるようになりました。
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 メニューを選ぶだけで、簡単にQRコードが作成できるようになりました。どんどん使いやすくなってきますね。

(為田)

横浜市立鴨居中学校 分散登校 授業レポート まとめ(2021年9月3日)

 横浜市の中学校は、新型コロナウイルス感染症対策として、夏休みを8月31日まで延長し、その後は分散登校・短縮授業という方針が出て、一人1台のChromebookの持ち帰りも始まりました。そんななか、2021年9月3日に、横浜市立鴨居中学校を訪問させていただきました。
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 鴨居中学校の先生方は、それぞれに工夫をされていて、同じChromebookを使っているものの、教科や学年によって違う授業の仕方をしていました。また、先生同士での情報共有も進められていました。全8回のレポートをまとめてみました。

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(為田)

書籍ご紹介:『教育論の新常識 格差・学力・政策・未来』

 松岡亮二 先生 編著の『教育論の新常識 格差・学力・政策・未来』を読みました。全体は4部構成になっていて、挙げられているテーマは「格差:教育格差」「学力:「学力」と大学入試改革」「政策:教育政策は「凡庸な思いつき」でできている」「未来:少しでも明るい未来にするために」です。

 4つのテーマのなかで、20のキーワードについて書かれています。学校・教育委員会など公教育や、学校で活用されるEdTech導入などのお手伝いをすることが多いこともあり、「社会経済的地位(SES)」や「EdTech」や「全国学力テスト」のところを興味深く読みました。

  • 格差:教育格差
  • 学力:「学力」と大学入試改革
    • 国語教育
    • 英語入試改革
    • 英語教育
    • 共通テスト
    • 大学教育
  • 政策:教育政策は「凡庸な思いつき」でできている
    • EdTech
    • 九月入学論
    • 学費
    • 教員の働き方
    • 教員免許更新制度改革
  • 未来:少しでも明るい未来にするために
    • 審議会
    • EBPM(エビデンスに基づく政策立案)
    • 国学力テスト
    • 埼玉県学力調査
    • 教育DX

 「そんなにズバッと斬らないでくれよ…」と泣きたくなるところもありましたが、これはこれで一面の事実としてあって、これをどう学校に実装していくのかというところを考えなければならないと思っているので、引き続き取り組んでいきたいと思います。

 こうしたテーマについて、たくさんの人に知ってもらうことが非常に大切だと思います。

(為田)

授業で使えるかも:おんぷノート

 河合楽器製作所iPadで使えるアプリ「おんぷノート」を使ってみました。iPadで白紙の楽譜に音符を書き込んでいくことができます。

おんぷノート

おんぷノート

  • Kawai Musical Instruments Manufacturing Co., Ltd.
  • ミュージック
  • 無料

 楽譜の上に、○を書くと自動的に音符になります。全音符、2分音符、4部音符など、それぞれ書き方のヘルプ動画も収録されていますので、すぐに慣れると思います。音符を書くときは、ペンを使う方が書きやすいですが、指でも書けないことはありません。
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 iPadでピンチアウト(2本指で触って広げること)をすると、楽譜が拡大表示されます。逆にピンチインすれば全体を見ることができますので、書く場所を拡大して書いて、全体をみるときは縮小して確認したらいいと思います。
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 上のメニューのところにある再生ボタンを押せば、自分が書いた楽譜のとおりに演奏されます。書いてある「音符」「楽譜」と、実際の「音」「音楽」の関係というのが、音楽が苦手な人には見えにくいところなので、こうしてすぐに音になるのはすごくいいのではないかと思います。

 また、演奏する楽器を変えることもできます。最初は「グランドピアノ」になっていますが、ボタンをタップすると、いろいろな楽器を選ぶことができます。ピアノやオルガンなどの鍵盤楽器だけでなく、バイオリンやコントラバスなどの弦楽器やクラリネットなどの管楽器、リコーダーや和楽器も選ぶことができます。
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 楽譜と演奏の間にちょっと距離を感じてしまう小学生、中学生も多いのではないかと思います。音楽の授業でのツールとして「おんぷノート」を使ってみるといいのではないかと思いました。

(為田)

教材で使えるかも:セサミストリート「Explaining Race | #Coming Together」

 「セサミストリート」を制作しているセサミワークショップが新しく「Explaining Race(人種の説明)」というタイトルの動画を公開しました。公園で、いろいろな色の落ち葉を見て、「赤がエルモの毛の色と同じ」「茶色は友達のウェスの肌の色と同じ」と気づいて、「どうして肌の色が違うのか」について説明を受ける動画です。
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 エルモの素朴な質問から、最後はウェスのお父さんが、「肌の色や髪の毛など、外見はいろいろ違うけれど、それが私たち自身を作っているんだよ」「それを“人種(Race)”と呼ぶんだよ」「違うように見えるけれど、みんな人類の一部なんだ(We're all part of the human race)」と説明をしてくれます。
 英語の動画ですが、YouTubeで字幕をつけることもできるので、字幕を見ながら内容を確認することもできます。
www.youtube.com

 子どもたちと一緒に見てみて、どんなふうに感じるのかディスカッションしてみたいな、と思いました。きっと、英語でも説明を僕がしながら一緒に見たら、いろいろ感じるところもあるんじゃないかと思いました。
 こうしたコンテンツがアップロードされて、世界中で見ることができるのはとてもいいことだと思います。

◆ ◆ ◆

 セサミワークショップは、家族で人種(Race)と人種主義(Racism)について話し合えるコンテンツ“ABCs of Racial Literacy”についてのリリースも出していました。このタイトル(=ABCs of Racial Literacy)、すごくいいですね。
www.sesameworkshop.org

(為田)