教育ICTリサーチ ブログ

学校/教育をFuture Readyにするお手伝いをするために、授業(授業者+学習者)を価値の中心に置いた情報発信をしていきます。

西武学園文理小学校 授業レポート まとめ(2021年11月17日)

 2021年11月17日に、埼玉県狭山市西武学園文理小学校を訪問し、4年生と6年生の情報の授業を参観させていただきました。どちらの授業でも、教材としてアイロボットのプログラミングロボットRootを使っていました。
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 授業の様子をレポートしましたので、まとめてお読みいただければと思います。
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(為田)

【メディア掲載】月刊私塾界 1月号

 月刊私塾界1月号が発刊されました。今回の特集は「編集部が選んだ 2021年重大ニュース 注目のキーワード2022」でした。重大ニュース、いろいろなことがあったなあとふりかえりながら読みました。新しい動きを定着させて、子どもたちの日常に馴染んで学びに使えるようになるまで、サポートしていきたいなと思います。
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 いつもどおり僕の連載ページも掲載されています。今回は10月から11月の記録です。ひさしぶりに新幹線に乗って仙台へ行って宮城教育大学附属小学校のコンピュータサイエンス科の授業を取材し、ひさしぶりに飛行機に乗って高知へ行って佐川町立黒岩小学校でのプログラミングの授業を取材し、と現場へ行けた時期でした。
 また、11月6日にサイエンスアゴラ2021のなかで「マンガで話すみんなのリアル ―中高生SNS編―」にコメンテーターとして参加させていただいたのも、いい経験になりました。声をかけてくれたのは大学の同級生だった、関東学院大学准教授の折田明子 先生でした。さまざまなご縁が今を作っていくな、と感じます。
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(為田)

書籍ご紹介:『子育て罰 「親子に冷たい日本」を変えるには』

 末冨芳 先生と桜井啓太 先生の『子育て罰 「親子に冷たい日本」を変えるには』を読みました。公教育システムに(学校の外側からではありますが)関わるからには、こうしたシステムに関しても知ったうえで行動したいと思っています。

 タイトルの「子育て罰」というのは衝撃的な言葉かもしれませんが、第1章で末冨先生がまとめています。

「子育て罰」の正体:親、とくに母親に育児やケアの責任を押し付け、父親の育児参加を許さず、教育費の責任も親だけに負わせてきた、日本社会のありようそのもの。(p.23)

 もともとは「child penalty」という学術用語だと、第2章で桜井先生が書いています。そのうえで、3つの定義が書かれていましたので、p.62-63をまとめてみました。

「子育て罰」はもともと「child penalty:チャイルド・ペナルティ」という学術用語」

  1. 子育てしながら働く母親(ワーキングマザー)と子どもを持たない非母親との間に生じる賃金格差を示す経済学・社会学の概念(そのため「motherhood penalty:母親ペナルティ」とも呼ばれる)。
  2. 日本の再分配政策(税・社会保障制度など)は、子育て世帯に対して機能していない、あるいは状況をむしろ悪化させており、「就業や育児を罰している」。(社会政策学者の大沢真理 先生)
  3. 社会のあらゆる場面で、まるで子育てすること自体に罰を与えるかのような政治、制度、社会慣行、人びとの意識。(末冨先生による本書での指摘)

 自分は何も知らないな、とショックを受けながら読みました。学校現場で保護者と接している先生方は、僕とは違う読み方をされるのだろうな、と思います。
 現場での肌感覚、統計で見えるデータ、その背景にある制度や仕組みなど、もっと総合的に見られるようになりたいと思わされる本でした。そのうえで、自分のフィールドで何をしていくべきなのかを考えていきたいと思います。

(為田)

書籍ご紹介:『非認知能力 概念・測定と教育の可能性』

 小塩真司 先生 編著の『非認知能力 概念・測定と教育の可能性』を読みました。ある案件で、「ICTと非認知能力」という題での講演依頼をいただいていまして、それを機会に非認知能力についていろいろな観点から勉強をしてみたいと思ったためです。

 そもそも「非認知能力」とは「認知能力ではない」ということであり、では一体どの範囲までを非認知能力として考えたらいいのだろう?と思って読み始めたら、最初の「まえがき」でズバリなことが書いてありました。

そもそも非認知能力とは何なのか、どのような心理的機能がそこに含まれており、それぞれの機能はどのような測定方法で把握され、どのような効果があると報告されており、どのような教育的介入が可能なのかという点については明確ではない状態にあるのではないでしょうか。非認知能力という言葉が広まる一方で、その中身は多様かつ曖昧であり、それぞれの人が非認知能力の中身をそれぞれの解釈で論じているという印象があります。(p.ii)

 まさしく、この「それぞれの人が非認知能力の中身をそれぞれの解釈で論じている」というところで終わらないようにしたくて、この本を読もうと思ったのでした。この本では、「非認知能力あるいはそれに類するものとして取り上げられることのある、十五の心理学的な特性(以下「心理特性」)に注目します。」(p.ii)と書かれています。
 取り上げられている15の心理特性は、以下のものです。「心理学の中でも比較的さかんに研究が行われて」いて、何らかの形で研究や人生において「よい結果をもたらす」可能性が得られて」いて、「介入による変容の可能性が研究で示されている」ものが取り上げられています。

  1. 誠実性
    課題にしっかりと取り組むパーソナリティ
  2. グリット
    困難な目標への情熱と粘り強さ
  3. 自己制御・自己コントロール
    目標の達成に向けて自分を律する力
  4. 好奇心
    新たな知識や経験を探究する原動力
  5. 批判的思考
    情報を適切に読み解き活用する思考力
  6. 楽観性
    将来をポジティブにみて柔軟に対処する能力
  7. 時間的展望
    過去・現在・未来を関連づけて捉えるスキル
  8. 情動知能
    情動を賢く活用する力
  9. 感情調整
    感情にうまく対処する能力
  10. 共感性
    他者の気持ちを共有し、理解する心理特性
  11. 自尊感情
    自分自身を価値ある存在だと思う心
  12. セルフ・コンパッション
    自分自身を受け入れて優しい気持ちを向ける力
  13. マインドフルネス
    「今ここ」に注意を向けて受け入れる力
  14. レジリエンス
    逆境をしなやかに生き延びる力
  15. エゴ・レジリエンス
    日常生活のストレスに柔軟に対応する力

 これらの心理特性をどう育んでいくか、伸ばしていくか、ということについても「まえがき」にイメージが書かれていました。

本書で取り上げる心理特性は、個人の中で固定化されたものではなく、何らかの形で変化していく可能性があることも示されます。心理特性というものは、少しずつにせよ変化させることが可能な粘土のようなイメージで捉えるのがよいのではないでしょうか。あるいは、体重の測定のように、日々の生活を通じて少しずつ変化していく数値をイメージしてもよいかもしれません。(p.iv)

 日々、少しずつ変わっていくものなので速効性はないが、でも「少しずつにせよ変化させることが可能」と書かれています。日々の生活を通じて変化させていく、変化していく、ということがあるならば、学校での日々で変わっていく可能性は大きくあり、先生方の関わりも大きな意味があると思いました。

 この本で取り上げられている15の心理特性のなかでも、ICTの活用と関わりがあるものについて2つ、紹介をしておきたいと思います。

批判的思考とICTの活用

 平山るみ 先生(大阪音楽大学短期大学部 准教授)が執筆された「5章 批判的思考」のなかで、ICTの活用について書かれていました。

ICTを活用することで、教室の外の世界ともつながりやすくなり、本物の問題に生徒たちが触れやすくなる効果も考えられます。また、ICTを思考共有のためのツールとして活用することで、アナログのツールよりも多くの他者の思考に触れることができるという社会的学習環境を整えることができます。児童たちが思考しデジタルペンで書き記したものをシステムを使って提示したり、ディベートシステムを用いることによって、生徒たちのディベート体験に偏なく全員がすべての役割を経験することができます。もちろん、アナログなツールのみを使用して批判的思考教育を行うことはできますし、実際に多くの実践が行われてきました。しかし、より便利なツールとしてICTを活用できるのであれば、積極的に活用するとよいでしょう。(p.97)

 ICTを活用することで、教室の外の世界と繋がりやすくなる効果があることが書かれています。
 このブログで授業をレポートした中では、奈良女子大学附属中等教育学校で行っていたオンライン授業がまさにそうだったかな、と思います。
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 また、ICTを思考共有のためのツールとして活用することで他者の思考に触れやすくなる、というのも、授業支援ツールやクラウドツールを使うことで多くの学校で実践が行われていることです。回答を提出してもらって集めるということだけではなく、思考の過程や表現の過程を見ていくということをICTを活用して行っていた、筑波大学附属駒場高校での授業をふりかえりたくなりました。これから高校での1人1台端末配備が本格化するので、この授業は多くの学校に参考にしてほしいと思っています。
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楽観性とICTの活用

 外山美樹 先生(筑波大学人間系 准教授)が執筆された「6章 楽観性」のなかにも、ICT活用に関連しそうな部分がありました。

セリグマンは、「学習性オプティミズム(learned optimism)」という用語を使用していますが、その意味するところは、楽観性は生まれもった心理特性(非認知能力)ではなく、学んで身につけることができるものであるということになります。日本の子どもを対象に、楽観性を高める介入・トレーニングを実施した研究はみられないのですが、先行研究の知見を踏まえると、子どもを対象にした楽観性を高める介入や教育は十分に可能であると考えられます。(p.113-114)

 僕は、この「楽観性」というのは、レジリエンスなどと組み合わさると、「失敗を恐れずにどんどんやっていく」という姿勢につながると思っていて、小学校~中学校のさまざまな場面で子どもたちに経験してほしいと思っています。
 ICTの授業支援ツールやクラウドツールを使うことで、たくさんの学習者の考えを見て、先生が多様な視点について褒めてあげたり、おもしろがってあげることで、楽観性は高められるのではないかな、と思います。プログラミングでPDCAをどんどん回していく体験をするのも、同じように楽観性を高められると思いました。

 プログラミングの授業をオープンエンドにして、たくさん失敗する場面を作ることが、楽観性を高める機会に繋がると思います。戸田市立戸田第一小学校でのプログラミングの授業が参考になると思います。

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まとめ

 この本で取り上げられている15の心理特性については、「学校の教室で、どんな場面で現れるだろうか」ということを考えながら読んでいました。ICTを活用する場面だけでなく、先生の声掛けや授業のなかでのやりとりなどで、子どもたちに働きかけられる場面はたくさんありそうだと感じます。興味ある研究についても知ることができたので、さらに深めていきたいと思います。

(為田)

【小学校の先生向けアンケート】GIGA端末にマウス使っていますか?

 「コンピュータの基本的な操作を、どこまで子どもたちに伝えるべきだろう?」と考えたときに、「あれ?でも、GIGAスクール構想で配備された端末で、マウスを使っているところをあまり見ないな?」と気づきました。マウスのダブルクリックやドラッグなどは小学生には難しいのですが、そもそも小学校でマウスを使う場面がないのかもしれない…と思い、先生方に現状を教えていただきたく、アンケートを作ってみました。
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 いただいた回答とコメントにつきましては、このブログにて公開したいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
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 〆切は、2022年1月10日(祝)までとさせていただきたいと思います。たくさんの先生方にご協力をいただければと思います。シェアなども大歓迎です。ご協力を、どうぞよろしくお願いいたします。

(為田)

2022年の行動指針「Help Schools/Education Become Future Ready」

 2022年となりました。2020年から2021年にかけて、小学校・中学校では一人1台の情報端末が配備され、授業での活用も進んできました。そうした流れのなかで、たくさんの学校や教育委員会で研修や研究授業などで多くの先生方とお話をさせていただくことができました。
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 弊社フューチャーインスティテュートは、ここ数年、「Help Schools/Education Become Future Ready」=「学校/教育が、Future Ready(あえてここは和訳せずに使っていますが、“未来に向けて準備ができている状態”)になることをお手伝いする」ということを行動指針としています。
 あくまで、学校と先生方が“Future Ready”になる主体であって、それを僕たちはサポートする、ヘルプする、というイメージで仕事をしています。自分たちでサービスや機器を開発し、提供しているわけではない。でも、世の中にあるサービスや機器を、それぞれの学校にあっているものを、先生方と一緒に考えて、それが先生方の手を介して、学習者である子どもたちのところに届くように、仕事をしていきたいと思っています。

2021年をスタートにして、ここ3年くらいでお役に立てないのであれば、うちの会社としてどうなんだ?というくらいの気持ちでいます。会社の存在意義のひとつの尺度は、「社会に必要とされているか」だと思っています。弊社で言えば、「学校に関わるさまざまな人たちに、必要とされているか」ということです。そのために何ができるか、考え、行動を続けていきたいと思っています。

2021年の行動指針「Help Schools/Education Become Future Ready」 - 教育ICTリサーチ ブログ

 2021年1月に書いた気持ちは、いまでも変わっていません。自分たちにしかできない仕事があると信じています。

 一人1台の情報端末は、学校に配備はされましたが、子どもたちの学びがFuture Readyになっているかと言えば、まだまだだと思っています。まだスタート地点に立っただけの学校もたくさんあります。先生方と一緒に、それぞれの学校にあったペースで、なるべく速いスピードで進んでいけるようにお手伝いをしていきたいと思っています。
 そのうえで、「できるだけたくさん」の学校の学びがFuture Readyになるように、何ができるかを考えて行動していきたいと思っています。

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(為田)

2021年ふりかえり

 いよいよ2021年も終わりということで、ふりかえりをしたいと思います。2021年の教育ICTリサーチブログは、このエントリーで341本目です。2020年が410本、2019年が375本、2018年が412本だったので、減ってきています。
 学校訪問があまりできず、授業レポートが少なくなってきてしまっているのはよくないと思っています。「授業での先生の雰囲気、子どもたちの雰囲気が伝わるレポートを発信する」というのは、このブログの生命線なので、2022年は、授業レポートをもっとたくさんお伝えできるようにしたいと思います。
 2021年のまとめとして、個人的に印象に残ったエントリーを3つふりかえりたいと思います。

小学校3年生と一緒に「授業チャットの良さ」を考えたこと

 毎週教えに行っている淑徳小学校放課後クラブ 淑徳アルファで、3年生のみんなと一緒に、「授業チャットってどう?」という授業をしたのが、印象に残っています。
 授業チャットが楽しくて、つい使ってしまうけど、それをおもしろがる人も、いやな人もいて、それをある程度言語化していく様子を見ることができたのが印象的だったのです。
 また、それをベースに話し合いをしてみると、また「書き言葉」と「話し言葉」の間にもズレがあり、それをみんなでわいわい考えていくのは、デジタルだけではできない学びであるように感じました。
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「ICTは道具に過ぎない」への自分なりの答えが見えてきた感じがする、『コンヴィヴィアル・テクノロジー

 今年読んでいて、すごく影響を受けた本は、緒方壽人さんの『コンヴィヴィアル・テクノロジー』でした。本当に集中して読んで、多くの先生方にも知ってほしくて、ひとり読書会を実施しました。

 また、この本のなかで出てくる「二つの分水嶺」の話を、研修などのときに話をするようになりました。ICTは、「使う/使わない」という「一つの分岐点」で考えるのではなく、どう使うのかを「二つの分水嶺」で考える必要があるのだ、ということを、先生方だけでなく保護者の方とも話し合っていきたいと思っています。

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心強い仲間がいることのうれしさ

 弊社フューチャーインスティテュートで一緒に仕事をしている、佐藤靖泰さんが、10月に東北大学大学院情報科学研究科 客員研究員になりました。これはすごくうれしいです。仲間が心強いことは何よりうれしい。
 靖泰さんは、小学校の先生をして、教育庁で指導主事もして、学校のことも詳しい。何より「良い授業をする」ことに対してすごく強い思いを持っている人です。
 靖泰さんが積み上げてきたものが、アカデミズムの場でどう発揮されて、それをまた学校現場にどう戻していけるのかということに、会社の事業云々を超えて、興味があります。

 こうして靖泰さんの活動範囲が広がっていくことは、大げさでなくすごく価値のあることだと思っています。それをサポートできる仲間でありたいと思いつつ、「負けてたまるか」とも思っています(笑)
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2021年、ありがとうございました。2022年もよろしくお願いします。

 2021年が終わります。この1年は、学校へ伺う機会が減り、出勤と出張の移動時間が減った代わりに、ブログを書く時間は減りましたけど、その他いろいろの原稿を書く時間が増えたと思います。毎日オフィスに行っていた頃をすでに思い出せません(通勤定期も持つのをやめました)。
 こんなに簡単に生き方が変えられるとは…とびっくりしています。不要なことをする時間はこのまま減らしたいです。そして、子どもたちのために、学校のために、先生方のために、自分たちだからこそできることをする時間を増やしていきたいと思います。

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(為田)