教育ICTリサーチ ブログ

学校/教育をFuture Readyにするお手伝いをするために、授業(授業者+学習者)を価値の中心に置いた情報発信をしていきます。

テクノロジー+教育の視点 ~ 桜丘ICTオープンスクール(2014年12月19日)

 2014年12月19日に、桜丘中学・高等学校の桜丘ICTオープンスクールに参加してきました。全体会と2時限分の授業公開、教科実践・HR実践・クラブ実践、それにシステム関連での紹介がありました。

桜丘のICT導入の方針

 全体会では、導入を推進した品田先生から説明がありました。おもしろいなと思ったのは、品田先生が導入の方針としておっしゃっていた、「ビジョンがないとダメだけど、私立学校なんだから使ってみよう」ということ。そして、そこから、徐々に、「なるほど、こういうやりかたもあるのか。」「なるほど、このくらいでいいのか。」というふうに導入を進めていく(というか、学内で広げていく)という方針をとっていることです。
 実は、以前にも桜丘は授業見学をさせていただいたことがあるのですが、そのときにも、先生方が自分たちでどんな授業をしたいかを考えて、各自で「どんなアプリを使うか」などを考えているという点が、ユニークだと思います。先生方のアプリ選定、教え方の工夫、それらは“授業設計”にほかならないので、先生方が楽しんでやられているのではないかな、と感じました。

授業見学 数学

 授業を見学させていただきました。品田先生が、iPad導入について説明された後で、「新しいツールは新しいことにしか使えないわけではない」ということをおっしゃっていましたが、iPadを授業の中に無理なく導入して使っているな、というふうに感じました。
 数学の授業では、教科書をプロジェクタでホワイトボードに表示させて、そこに先生がマーカーで図などを描いて説明をしていました。

 今まで板書していたものを、プロジェクタを使って表示させることで、板書の時間が短くなります。ホワイトボードになっているので、表示させている図にマーカーで追記することができるのも、教えるときには非常に重要な要素になります。スクリーンに表示をさせていると、こうした使い方ができず、電子情報ボード(電子黒板)で操作をしてペンなどを出して…という学校も多いですが、先生方の手間をなるべく少なくする(=これまでの授業のやり方に近いものにする)ということを考えると、ホワイトボードを使うのは非常に便利ですね(実際、会社の会議でも、ほとんどプロジェクタはこうした使い方をしますね)。
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 説明が終わった後で、問題を生徒に対して配信し、それぞれが問題に取り組み始めます。先生の指示は、「iPadでやってもいいし、ノートにやってもいい」というものでした。これも非常に重要です。特に今回は図形だったので、iPad上で問題に取り組む生徒よりも、ノートで取り組んでいた生徒の方がやや多いくらいだったのではないかと思います。
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 どのように教えるのがいいか、どのように学ぶのがいいか、という選択肢は、先生と生徒の側にあるべきだと思います。提出のときには、ノートに問題を解いた生徒は、カメラで撮影してデータを送信します。
 提出されたノートを表示して、どのように解答したかを説明していきます。
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 授業中の生徒の机の上はこんな感じです。使い方はみなそれぞれですが、問題はタブレットを通じて配信され、タブレットを通じて提出をしますが、その間、問題を解いたりするのも、先生の板書を写すのも、ノートでしている生徒が多かったです。
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 デジタルを導入した授業では、問題を解くのもタブレット上で行うというところも多いのですが、そうすると授業が終わった後にノートには問題がちょこちょこ書かれているだけ、ということもあります。
 デジタル教材の提示+問題出題+板書という形式での授業は、まだ発展途上というか最適化の過程にあると思っていますので、こうしたバランスはまだまだ変わっていくと思っていますが、現状の桜丘は無理なく授業にデジタルが入ってきているというように感じました。

授業見学 英語

 続いて英語の授業を見学させていただきました。iPadに英文を表示させて、それを音読していました。何度か練習をした後で、各自が音声を録音し、録音したデータを先生に提出しました。
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 先ほどの数学の授業と同様、ノートを集めて、みんなでそれを見ながら説明ということもしていました。
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 授業が終わった後、授業をされた倉田先生とお話をする機会がありましたので、「iPadを使うようになって、何がいちばん先生としてはいいですか?」と質問させていただいたら、「今まで、自分で音読をしていたときには、生徒たちの様子を見ることはできなかったけれど、iPadで音声を聴けるようになったので、今までよりも生徒たちのことを見る時間を多くとれるようになりました」とおっしゃっていました。
 いずれは、今回の音読を録音して提出してもらうところは、家庭学習にすることも考えられるかもしれない、とおっしゃっていました。

テクノロジー+教育の視点

 倉田先生と、「英会話のソフトなどを導入して、音声の練習のところは音声認識で自動採点させることで、イントネーションやユニゾンなどの練習をする時間もとれるかもしれないですね」と話をしていると、「でも、全部が自動で採点されると、点数が悪くて凹んじゃう生徒がいるかもしれない…」と倉田先生はおっしゃっていました。
 こうした視点こそが、テクノロジー+教育の視点だと思います。テクノロジーは最先端のものを持ってくればいいというものではなく、「どのように使うのか(使いたいか)」ということが先生側にあり、それを実現できるテクノロジーを持ってくる、という順序であるべきです。

 テクノロジーと教育の視点の両方を持って、教室での学びをいきなり満点にはできなくても、今より良いものに少しずつでもしていく、そうしたステップを歩んでいく学校が増えていけばいいな、と感じました。