凸版印刷が、トッパン教育情報化セミナーを2015年2月11日に大阪・中之島フェスティバルタワー24Fにて開催しました。奈良教育大学大学院・小柳和喜雄教授による特別講演「インストラクショナルデザイン 授業方法と学習形態の工夫」についてレポートします。実は、今回のセミナーを企画していたときに、「どんな話を聞きたいですか?」と企画担当の方に訊かれたので、「インストラクショナルデザインを切り口にして、ICTを使った授業設計の話ができる方をお呼びしたいです」とお願いしたのです。小柳先生の講演は、授業設計をどのように考えればいいのか、その切り口がたくさん入っていました。ICTが導入されて、どんなふうに「授業を変えていくことができるのか」というきっかけになればいいと思います。
Twitterでまとめた要点に、コメントをはさみながらレポートしたいと思います。
ICTをどういう授業方法で使うのか
授業の道具として使っている、学習の道具として使っているICTを、評価の道具としてどう使うか。自分自身を自律するためにどう評価として使うか。それがネットワークに入ったときにどうなるか。そうすることで、学校種を超えて子どもたちを見ていくことができる。 #トッパン教育情報化セミナー
— 為田裕行 (@Hiroyuki_Tameda) 2015年2月11日
アセスメントリテラシー。評価をどう読むか、それを学校や政策にどう組み込んでいくか。 #トッパン教育情報化セミナー
— 為田裕行 (@Hiroyuki_Tameda) 2015年2月11日
インストラクショナルデザインは、平たく言うと、授業の設計。自分の日頃の授業について、ICTがあるといいな、用いないほうがいいな、というものをカードを使って評価してみる。#トッパン教育情報化セミナー
— 為田裕行 (@Hiroyuki_Tameda) 2015年2月11日
奈良教育大学の小柳先生。授業方法カードを使って、先生方に実際に研修などで使ってみることを提案。 #トッパン教育情報化セミナー pic.twitter.com/Jz3ta5YkKj
— 為田裕行 (@Hiroyuki_Tameda) 2015年2月11日
「授業方法カード」を小柳先生はスライドで示しながら、それぞれの授業方法に、「ICTが効果的であるか」「ICTを用いないほうがいいか」と評価をしてもらうといい、と話をしてくださいました。例えば、「何度も暗唱させたり、書かせたりして覚えさせる」「自分で問題を作って考えさせる」「アイディアを出させて整理させる」「友達と協力して課題解決をさせる」などのそれぞれの場面で、ICTが役立つかを、日頃の自分の授業から考えてみましょう、というものでした。
そのように授業方法を評価していくと、評価が分かれてくる、と先生はいいます。
授業の入口にICTを使うのか、定着に使うのかによって、評価が分かれる。それは評価している先生方の考えている時間軸が違うから。 #トッパン教育情報化セミナー
— 為田裕行 (@Hiroyuki_Tameda) 2015年2月11日
授業の中のどの部分に、どんな目的でICTを用いるのか、という前提条件を合わせて導入をするということが必要だと感じました。
「学びのイノベーション」で、国の取り組みの成果を見てみると、導入、展開、まとめでそれぞれワンポイントで使う事例などを見られる。学校内で進めていくとき、自治体の研修などで、そうしたデザインを考えていくといい。 #トッパン教育情報化セミナー
— 為田裕行 (@Hiroyuki_Tameda) 2015年2月11日
学びのイノベーション事業実証研究報告書:文部科学省
どの場面でのICT活用を選ぶか、効果的か。授業改善に直結したICTの活用(説明・提示)、自律的な学習支援(実験・観察・調査や体験活動を支えるICT活用)、表現活動における活用、協同学習、協働学習など、さまざまな使い方がある。 #トッパン教育情報化セミナー
— 為田裕行 (@Hiroyuki_Tameda) 2015年2月11日
どこから入っていくのか、手ごたえのあるところを選ぶ。それが授業を設計する、ということ。 #トッパン教育情報化セミナー
— 為田裕行 (@Hiroyuki_Tameda) 2015年2月11日
授業の主役は児童生徒であり、どんな学びをさせたいのかは教員が決めます。そのためには、圧倒的にICTを入れることで効果が実感できるところからスタートをすればいいと思います。こうしたディスカッションを、ICT導入研修の中でもっとやっていけばいいと思います。「こんなふうにICTを使ってみたい」「こんなことって、デジタルでできないの?」と先生方がワクワクするようになれば、スキルを身につける研修は後からいくらでもできると思います。授業設計を入り口にした動機付け研修こそ、効果的なのではないかな、と思います。
学習形態×ICTを考える
目的によって、学習形態・ICTの活用は、違ってくる。グループに何台あればいいのか、などは、学習形態による。なぜ一人1台持たなければならないのか?学習形態から考えねばならない。 #トッパン教育情報化セミナー
— 為田裕行 (@Hiroyuki_Tameda) 2015年2月11日
グループ内で課題分担をする学習形態でも、1グループ内でするのも、他のグループに行って帰って、とジグソー形式でするのも、できる。これらは授業形態として違ったものになる。デザインとしてこれらは非常に重要。 #トッパン教育情報化セミナー
— 為田裕行 (@Hiroyuki_Tameda) 2015年2月11日
デジタル教科書はいいものが出てきている。習得と探究の軸がある。コンテンツの即時活用、既習事項の組み立て活用、こうしたところにはデジタル教科書は非常に有効。 #トッパン教育情報化セミナー
— 為田裕行 (@Hiroyuki_Tameda) 2015年2月11日
本物に近く、コンパクトに使えるデジタルコンテンツは、深掘螺旋(探究活動)に非常に有効に使える。 #トッパン教育情報化セミナー
— 為田裕行 (@Hiroyuki_Tameda) 2015年2月11日
習得と探究の軸などを考えて、積み上げ螺旋と深掘螺旋のスタイルで、どんなふうに児童生徒が変わっていくのかというのをデザインするのが重要だな、と感じました。
学校で授業をデザインする際に、さまざまな活用場面を考えていくのが大事。 #トッパン教育情報化セミナー
— 為田裕行 (@Hiroyuki_Tameda) 2015年2月11日
この、活用場面を考えていく、というところには、「思い切って使わない」というデザインも含まれているのだろうな、と思います。「ICTが導入されたから使う」と決めてしまうのではなく、達成したいゴールを明確にしたうえで、「使い方(あるいは使わない)を選ぶ」ということだと理解しました。
これからの教育の展望
教育の情報化の流れの中で、「学力向上」「学力保障」というのは大きいのは事実。 #トッパン教育情報化セミナー
— 為田裕行 (@Hiroyuki_Tameda) 2015年2月11日
21世紀型能力について、日本が何もしていないかと言えば、そんなことはない。新しく言われているが、急に入ってきたものではない。総合的学習の中に入っていたものが、なんとか力、という形でクリアに入ってきた、ということ。 #トッパン教育情報化セミナー
— 為田裕行 (@Hiroyuki_Tameda) 2015年2月11日
「何を学んでいるのか」はもちろん重要。それと合わせて「どのように学んでいるのか」を我々は考えていく必要がある。それは深く考えると、学ぶ力をどうつけるのかを考えるということ。 #トッパン教育情報化セミナー
— 為田裕行 (@Hiroyuki_Tameda) 2015年2月11日
あらためて、「じゃあなぜICTそしてタブレットPCの活用に目を向けようとしているのか」。先生の道具としてICTを使うならば、「なくても授業ができます」という反論が来る。が、児童生徒が道具として使うのならば、子どもが使う場面を作らなければならない。 #トッパン教育情報化セミナー
— 為田裕行 (@Hiroyuki_Tameda) 2015年2月11日
そうした場面を作るために、先生たちは使えなければならない。子どもたちが「どのように学ぶか」を選んでもらうためには、先生は多様な教え方を持っていなければならない。 #トッパン教育情報化セミナー
— 為田裕行 (@Hiroyuki_Tameda) 2015年2月11日
この部分、ものすごく同意で、会場で深く深く頷いてしまいました。「先生方が教える道具」としてならば、たしかに「なくても授業ができる」という反対意見と噛み合います。でも、「児童生徒が使う道具」として使えるようにしたいのであれば、使う場面を作る必要があるので、それに対して「なくても授業ができる」というのは反対意見として噛み合っていないということになります。
ロジックとして交通整理をして、このあたりは解きほぐしていきたいなと思いました。学校向け、教育委員会向けの研修でやってみたいな、と思いました。
最後に小柳先生は、ICTが学校にもたらすことができる可能性を紹介してくれました。
知覚のスタイル、認識のスタイルは多様。多様な学習のスタイルを提供することは、ICT活用のメリットになる。 #トッパン教育情報化セミナー
— 為田裕行 (@Hiroyuki_Tameda) 2015年2月11日
また、ICTを活用することで、保護者へと情報を伝えることができる。子どもの変化を保護者にも見えるようにできる。 #トッパン教育情報化セミナー
— 為田裕行 (@Hiroyuki_Tameda) 2015年2月11日
ICTは学校の財産として残すことも可能になる。教材、教育のビッグデータとして、財産になり引き継がれていく可能性がある。 #トッパン教育情報化セミナー
— 為田裕行 (@Hiroyuki_Tameda) 2015年2月11日
ICTが導入されて、教室がどんなふうに変わっていくのか、こんなことも実現したいな、というのを、先生方がワクワクしながら考え、実施していくようになればいいな、と思います。そうした動機付けを手伝いたいと思いますし、ICTのテクノロジーの提供をパートナー企業さんと一緒にやっていきたいな、と思います。
インストラクショナルデザイン、おもしろい
小柳先生は今回初対面だったのですが、本当に話がおもしろくて。インストラクショナルデザイン、すごい!と思いました。とっても勉強になりました。自分のやりたい方向を、どういうふうに言葉にしていけばいいのか、見えた気がしました。興味を持たれた方は、以下の本など、読んでみるとおもしろいかと思います。(研究員・為田)