6月27日(土)に多摩市立愛和小学校で行なわれた、「i和Design公開プレゼンテーション@愛和小学校」に参加しました。午前中の公開授業と午後のパネルディスカッションについて、レポートしたいと思います。
今回は前編ということで、まずは公開授業についてのレポートです。今回、1年生から6年生まで、2時間分をすべてEdTechを導入した授業で行なっていました。
9:35 – 10:20
- 1校時授業(各教室)
- 1年1組 国語(ロイロ)
- 1年2組 学級活動(センサー体験)
- 2年1組 総合(ビスケット)
- 2年2組 国語(スクールタクト)
- 3年1組 音楽(Garageband)
- 4年1組 総合(プログラミング)
- 5年1組 総合(LEGO EV3)
- 6年1組 学級活動(Chromebook)
10:40 – 11:25
すべての授業を見られたわけではありませんし、最初から最後までを見られたわけではないので、断片的ではありますが、感じたことなどをレポートしていきたいと思います。
6年1組 学級活動(Chromebook)
愛和小学校の教室は、モニターを使うことが前提になっているからだと思いますが、教卓がモニターの横にあり、黒板の前が広い。「どう教えるか」に応じて教室を設計しているなあ、と思いました。
6年1組はChromebookを使っての学級活動でした。最初、タイピングの練習をしていました。みんなで寿司打。あー、これなつかしい(笑)
その後、みんなのお気に入りの場所を集める、という授業でした。Googleマップを使って住所を調べて、Googleスプレッドシートに貼り付けていき、みんなで表を完成させる、というものでした。
このアクティビティならば、たしかにキーボードがあった方が便利だし、Chromebookの良さが出るな、と感じました。あとは、Googleスプレッドシートでみんなで協働で編集する、という活動をもっと前に出したらいいのにな、と思いました。そうした方が、これから将来の「仕事の仕方」に近いと思うし、人と一緒に何かを成し遂げる、というのを体感できるかな、と思いました。
5年1組 総合(LEGO EV3)
5年生は、LEGO EV3を使ってのプログラミング授業でした。
1人に1台、LEGOで組み上げられた車が用意されていて、これを教室に作ってあるコース通りに動かしてゴールまでたどり着かせる、というもの。自分で車の動きをプログラミングし、プログラムを実行して車を動かし、どこでどんなふうに動いて止まるかを見て、プログラミングしなおして、もう一度プログラムを実行して…とPDCAをグルグル回すという授業でした。
一人一人がやっているので、集中してやれています。一方で、進度に差が出るな、と思いました。得意な子はどんどんできるけれど、苦手な子はエラーの切り分けができていない。
コースをイラストで書いてあげて、例えば最初のコーナーまでをどのコマンドで動かしているのか、というのを書かせるワークシートを用意したらいいと思いました。そうしたら、どこまでがうまくいっているのか、どこからおかしいのか、と考える助けになり、PDCAを回すときにやりやすいのではないかと思いました。(「上級者はワークシートなしね」、とか言ってもおもしろいかも。)
プログラミングは、何を学習目標にするのかにもよると思いますが、問題を発見して、試行錯誤して解決していく、というのを学習目標にしているとすれば、他にいくつかあったプログラミングの授業の中で、このLEGOのものがいちばんうまく行っているように思いました。
「◯◯君のプログラミングが、どれくらいうまくいっているのか」というのをみんなで見ることができるのが大きかったと思います。授業設計が上手でした。画面上でいくらうまくいっても、みんなで「おおー!」っていう盛り上がりにはなりにくいので、プログラミングの授業では、これをどう取り込むか、が大切になるのではないかと思います。
2年1組 総合(ビスケット)
2年生は、東芝のWindowsタブレットを使って、プログラミングをしていました。使っていたのはビスケットでした。
授業の途中で見に行ったため、どんなふうな導入だったのかを見られなかったのですが、配布された学習指導略案によると、「めあて」は「「卵を触ると…」というテーマで、自分でストーリーを考えてプログラミングを組む。」となっていて、「触る」機能の使い方を学ぶ、と書かれています。
先生の手本を見て「やりたい!」とモチベーションを上げ、各自で考えてがんばる、という形をとっていました。
ビスケットは、小学校2年生でも十分できると思いました。児童個人のスキルが上がれば上がるほど、「自分の作りたいものを作る!」という意欲が出てくると思うので、どのタイミングでそこに飛躍させるのか。そうなったときに、それを教えることのできるためには、先生はどれくらいプログラミングのことを知っていなければならないのか、というのが問題でしょうね。
今回のように外部講師がいらして、先生方としっかりタッグを組んで授業を一緒に作っていくことが成功の鍵だと思います。
3年1組 音楽(GarageBand)
3年生の音楽で、GarageBandを使っていました。自分の声で、「フガー」「ウー」「ワオー」「ハイー」と入れてサンプリングし、自分の声を楽器として使って合奏する、というものでした。
めあては「身のまわりにある音に集中し、聴き分けることができる」「音を使った表現の楽しさを感じる」だったので、声を使って音を合わせる、というのは楽しそうです。
声だけのパフォーマンスですごくおもしろいことができるのだ、というのを見本として最初に見せる(YouTubeとかでありそうですよね?)のを最初に入れたりしていたらおもしろそう。
4年1組 総合(プログラミング)
4年生のプログラミングは、iPadでCargo Botというパズルをやっていました。問題解決系のものですね。
教室のモニターにミラーリングでiPadの画面を映して、みんなで考えていました。ただ解くだけにしてしまうと、パズルを個人で考えている感じになってしまうので、途中で「自分はこう考えた」というプレゼンをしたり、グループで考えさせたりすると協働学習にも繋げられるかな、と思いました。
4年1組 国語(ポプラディア&ぐーぱ)
4年生の国語の授業で、ポプラディアネットが使われていました。ポプラディアネットは開発と学校への紹介のところでお手伝いをしていたご縁もあり、見学してきました。
簡単に言ってしまえば、ポプラディアネットはオンライン百科事典です。
もともとは紙の百科事典「ポプラディア」があり、それをデジタル化したものがポプラディアネットです。紙の「ポプラディア」は、ほとんどの小学校の図書館に入っているようですが、1セットが高価ですし、重たいです。また、クラス全員で使うほどのセット数があるはずもありません。
先生は紙のポプラディア、教室まで持ってきていました。司書の先生が、百科事典の使い方を説明してくれてから、各自でiPadでポプラディアネットにアクセスして、言葉の検索を行いました。
先生が、手元のiPhoneでポプラディアネットの画面を説明してくれました。AppleTVでミラーリングしているので、歩きながら説明することもできます。
ポプラディアネットは、ひらがなでも漢字でも検索ができるので、キーワード入力が簡単です。また、見出し語だけでなく、説明文(本文)中にキーワードが入っている場合も検索結果に表示されます。
インターネットで検索をすると、さまざまな検索結果が膨大に表示されますが、小学校の場合は、どの情報が正しいのかなどがわかりにくいため、調べ学習が大変になってしまうこともあり、そうした点を配慮してポプラディアネットは作られています。
ある程度検索の仕方がわかるようになったら、あとは1人1人が興味をもった言葉をどんどん調べていけるようになるといいと思います。
その後、ぐーぱにアクセスして、自分たちで紹介したい本についての文章を入力していきました。入力した文章をモニターに表示して、どんなことを書いたかを発表し合いました。
ぐーぱは、文章を入力することも良い学びのきっかけになると思いますが、それよりも、書いた文章のシェアができることのほうが、ずっと授業の中での発問のきっかけとして重要だと感じました。
例えば、教室の中では自分一人しか選ばなかった本についての説明文が、ぐーぱではいくつも見ることができる、というふうになれば、「他の人はどんなことを思ったのだろう?」と考える良いきっかけになると思いました。ぜひ、次回の授業公開でもぐーぱを使うのであれば、シェアされた文章を起点にした発問をした授業が見てみたいな、と思いました。
まとめ
なるべくたくさんの授業を見ようと思って、教室をめぐりました。そのため、全体を見ることができなくなってしまって残念だったのですが、それでも児童たちがiPadなどICTに慣れているな、と感じました。
先生方もとても慣れているように見えました。これから、ICTは手段として普通なものになっていって、「どういう学びをさせたいのか」「どういう学習目標を達成したいのか」という、授業設計の方に力点が移っていくと思います。そうした視点で、授業見学の方を行なっていきたいな、と感じました。
学習指導略案のなかの、「本時のめあて」はICTだけでなく、他のものも並列されていくようになるでしょうね。愛和小学校、注目していきたいと思います。
(研究員・為田)