教育ICTリサーチ ブログ

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「i和design 2015夏」取材報告(6)

特別支援的観点 iPad活用

 最後に、特別支援的観点からのiPad活用について、才記舜太郎先生(3年目)から説明していただきました。
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 「AT=アシスティブテクノロジー」という言葉を最初に説明されました。そして、ATとしてのiPadについて考えている、という例として、合言葉は「メガネのように」「補助輪のように」というふうにおっしゃっていました。メガネは視力を良くするわけではない、補助輪も自転車を乗れるようにするものではない。「一人ひとりが」「必要なときに」「自分にあった使い方」ができるように、iPadを使っていく、というお話でした。
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 この説明の中で素晴らしかったのは、「書き」の支援が必要な児童(LD)のチェックリストをオリジナルで作っていて、そこから、「書き」が困難な理由をA.見え方の特性、B.目と手の協応、C.不器用さ、D.視覚的短期記憶、E.長期記憶(記銘 保持 想起)と分類し、児童の実態(例:「鏡文字を書く」「なぞれない」「自分なりの書き順で書く」)に合わせて、どういったiPadアプリがよいか、試行錯誤してマッチングしていったことです。
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 例えば、「A.見え方の特性」を底上げしたいときには、ニャンバーズが「次々に現れる1から50までの数字をタッチする。眼球運動の練習によい。音楽がついていて子ども向き。」というコメントとともに紹介されています。

 また、「B.目と手の協応」「C.不器用さ」「E.長期記憶(記銘 保持 想起)」の底上げアプリには、ひらがな上手が、「ひらがなの形をイラストと音でイメージづけて覚える。」というコメントとともに紹介されています。

 愛和小学校から許可をいただきましたので、配布されたアプリ一覧を下に貼ります。このアプリ一覧を作成するために、通級指導学級の先生方は、本当に多くのアプリをダウンロードし、試行錯誤を繰り返しました。現場での経験をもとに作ってきているものです。このように、「児童のこの特性を考えて、それに対応する使い方ができるように、iPadを使う」と目的を明確にして、試行錯誤を繰り返したという点がすばらしいと思います。まだこれから、授業実践の中で使っていき、特別支援で使えるアプリの一覧はどんどんブラッシュアップされていくでしょう。
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 愛和小学校でこうして実践されている成果が非常に重要ですし、こうした実践がどんどん広がっていけばいいと思います。

 第7回(最終回)に続きます。

(為田)