教育ICTリサーチ ブログ

学校/教育をFuture Readyにするお手伝いをするために、授業(授業者+学習者)を価値の中心に置いた情報発信をしていきます。

STEM STUDY NIGHT #2 レポート(3): 黒板が教育を変える。ハイブリッド黒板アプリ「Kocri(コクリ)」 (面白法人カヤック ディレクター 深津康幸 氏)

 11月13日(金)に、STEM STUDY NIGHT #2@さくらWORKSに参加してきました。STEM STUDY NIGHTは、FabLearn Asia 2015の関連イベントです。
 学校の先生、クリエイター、プログラマが集まり、「ものづくり」「STEM教育」「これからの教育」「デザイン思考」などをテーマにプレゼンテーションとディスカッションを聴いてきましたので、メモを公開したいと思います。
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 ハイブリッド黒板アプリ Kocriについての説明からプレゼンテーションは始まります。初めて見たのは今年5月の教育ITソリューションEXPO(EDIX)でした。Kocriは、一言で言うと、「今までの板書の授業を半分デジタルにする授業を実現」するアプリです。まずは動画で見てみましょう。
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 電子黒板があまり使われていない現状に、板書の半分をデジタル化する、というKocriのスタートはどのようなものだったのかをお聞きしました。

  • きっかけは、黒板メーカー Sakawaさんからの問い合わせ(2014年2月)
  • みらいのこくばんプロジェクト」公開(2014年5月)
  • 黒板の上に、センサー付きのプロジェクタ。これをHackして、先生が本当に使う機能だけにした。
  • 板書の授業を半分だけデジタル化する、というコンセプトはこの頃から。
  • 使う人をイメージしてデザインをしている。
  • 2015年5月「Kocri」公開。

 みらいのこくばんプロジェクトの動画はこちらです。
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 Kocriは、「使う人をイメージしてデザインする」というところが徹底していると思います。この辺、デザイン思考だなあ、と思うのです。実際、いろいろな学校におじゃますることが多いですが、電子黒板が使われないままにおいて置かれているケースは多いのです。文部科学省は、電子黒板を2020年までに全教室(全国累計で約44万ある教室)へ導入予定だそうです。課題は、「高価」「使い方難しい」「場所をとる」ということ。Kocriはそれらを解決するようデザインされています。

  • Kocriは、電子黒板、書画カメラの代用ができる。
  • 簡単に操作できる、場所も取らない。安い。ネットに接続も要らない。
  • 持ち歩けるので、生徒との距離が近い。

 実際に、どんな授業をされているのかをYouTubeなどで見ることができます。
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 図形を描くのが大変だったのが、画像をスマホに入れておくだけでいいので、タイムリーに、生徒の集中力を途切らせることなく、授業ができます。また、同様に事例として紹介された、古河市の授業では、黒板の右下に地図や写真など副教材を投影して、生徒に書き込ませたりもしているそうです。

 Kocriは、ただのアプリ(教具)ではなく、さらに先に進もうとしているように思います。それが現れているのが、新しい授業を、先生たちとクリエイターで行う、第1回 授業ハッカソンを11月7日に開催したことからもわかります。このハッカソンでは、テーマとして「少し未来のすごい授業を考えよう」と掲げ、すごい社会の授業とすごい国語の授業を企画し、プレゼンテーションしたそうです。

 最後に今後の取り組みとして挙げられた3つが、「ものづくり」から教育を変える気概が現れていて、教育業界にいるものとして、ちょっと身が引き締まりました。

  • 授業を作っていく、先生たちからニーズを引き出す--教材をコンテンツとして提供していく
  • 先生同士で情報交換できるコミュニティを作る
  • 黒板を起点として、学びを変える。学びが変われば教育が変わる、教育が変われば日本が変わる。

 良いツールを使って、良い授業ができる先生を増やせるように、がんばっていきたいと思います。

(為田)