フューチャーインスティテュートの前田です。美大卒の教育コンサルタントです。この連載では、ICTを使ってこんな授業ができるのではないかというアイデアを紹介していきます。
今回は、PowerPointを使って、ポスターのキャッチコピーを考え、制作する授業を紹介します。
ポスター制作となると、テーマを考え(または与えられたテーマに沿ってアイデアを出す)、絵を描き(または写真を撮影する)、キャッチコピーを考えることをする必要がありますが、今回は、絵または写真は共通のものを使用して、キャッチコピーだけを児童たちに考えてもらうようにします。
こうすることで、キャッチコピーの文言・表現の違いがフォーカスされ、どういうキャッチコピーがいいのかを考えたり、改善案をディスカッションしたりしやすくなります。
紙だと、いろんなキャッチコピーを試したり、サイズを変えたり、色を変えたりするのは大変ですが、デジタル上だと、文言もサイズも色も簡単に修正できるので、試行錯誤が簡単にできます。また、一度作ったものは保存しておいて、他のアイデアのものを別に作っておくこともできます。
授業前準備
- ポスター・キャッチコピーのサンプルを集めておく。
- 共通で使用する画像(写真/絵)を用意しておく。
- 画像を移動・編集できないように、PowerPointのスライドマスタ上に配置する。
- リボンの「表示」タブ→「マスター表示」グループにある「スライドマスター」をクリック。
- 左側にあるサムネイルウィンドウから「白紙」のレイアウトを選択して、リボンの「挿入」タブ→「画像」グループにある「画像」をクリック。
- 1の画像があるフォルダを開き、画像を挿入する。
- 画像サイズを調整する。
- リボンの「スライドマスター」タブ→「閉じる」グループにある「マスター表示を閉じる」をクリックして、標準画面に戻る。
- スライドを右クリックして「スライドの複製」で、同じスライドを3枚くらい用意しておく。
授業中操作
授業中は、一人ずつPowerPointを操作して、キャッチコピーを制作してもらいます。
- ポスターのサンプルを見せて、どんなキャッチコピーのパターンがあるか、フォントパターンがあるか、画像とのサイズ感はどんな感じか、などを提示・説明する。以下の分類を参考に、サンプルとなるポスターやキャッチコピーを探すとよい。
- 隠喩・暗喩
- あるものごとを、別のものや人に見立てる技法。
- 直喩
- 「まるで~」「~のような」のように、例えることを明言している技法。
- 換喩・提喩
- あるものごとを、それに関係するもの・代表するもので表現する技法。
- 反語法
- 本来の意図とは反対のことを言うことで、意図を強調する技法。
- 緩叙法
- 直接的な主張ではなく、その逆の意味のことを否定する技法。遠回しな表現技法。
- 婉曲法
- 直接的な表現を避け、遠回しな言い方で同じ意味を表す表現技法。例「便所」→「お手洗い」
- 視点転換法
- 視点をずらすことで、読み手に新しい発見を与える技法。
- 隠喩・暗喩
- 素材となる画像とテーマを与えて、ワークシートを使ってイメージを膨らます。
- 素材となる画像やテーマから、イメージ・連想するもの・感情を考える
- 写真のストーリーを考える
- 写真から感じるイメージを考える
- 写真の前後をイメージする(写真の前はどんなだったか、後はどうなるのか)
- キャッチコピーのアイデアを書き出す。
- 量より質で、できる限り思いついたものをすべて書き出す
- PowerPoint上でキャッチコピーを作成する。
- リボンの「挿入」タブ→「テキスト」グループにある「ワードアート」で好きなスタイルを選ぶ
- キャッチコピーを入力する
- サイズ、色、効果などの書式を設定する
- キャッチコピーの位置を調整する
- 例を示しながら説明してもよい。下の例は、教室の写真で「卒業式」をテーマに制作したサンプル。
- 鑑賞会をする。
他の人の作品と見比べることで、同じ写真でもキャッチコピーひとつで印象が変わることを知り、どのキャッチコピーが良いと思ったか・その理由を発表し合ったり、もっとこうしたらいいのではないかという改善案を提案したりするとおもしろいと思います。
ルーブリックによる評価シートを用意して、各個人の評価基準ではなく、決められた一定の評価基準を満たしているかどうかで評価させるとよいでしょう。
例えば、以下のように項目ごとにそれぞれ5段階評価で評価をつけるというようなことができます。
- 卒業式というテーマに合った言葉か
- キャッチコピーは見やすいか
- 写真の内容とキャッチコピーの内容が合っているか
キャッチコピーの表現技法の部分にフォーカスをあてて、国語の授業に寄せたり、五・七・五調にするというルールを加えて、国語の俳句の授業に絡めることもできるかと思います。
▼参考文献
「クリエイティブ・アイデアのヒミツとヒケツ」 六耀社 佐藤良仁+鎌倉生光
(前田)