教育ICTリサーチ ブログ

学校/教育をFuture Readyにするお手伝いをするために、授業(授業者+学習者)を価値の中心に置いた情報発信をしていきます。

【イベントレポート】先生のための“プログラミング研修講座”~2学期から始めるプログラミング学習 No.4(2016年8月4日)

 8月4日に、D2Cホールを会場に、先生のための“プログラミング研修講座”を開催しました。これは、プログラミング必修化を視野に入れて、プログラミングのワークショップなどが夏休みにも多く開催されていますが、それらは子どもが参加者であり、先生方が「どう教えるのか」という視点のワークショップがなかったため、為田が代表を務めるフューチャーインスティテュート株式会社が主催し、小金井市立前原小学校の松田校長先生と一緒に開催したものです。
 レポートの第4回は、松田先生による、「ビジュアルプログラミング言語の体系と年間指導計画」についての講義の様子をレポートします。
f:id:ict_in_education:20160923115831j:plain

ビジュアルプログラミング言語の体系と年間指導計画

 プログラミング教育では、さまざまなビジュアル言語が使われています。ビジュアル言語とは、テキストでコマンドを書いたりするのではなく、コマンドがブロックで表されていて、それを組み合わせてプログラミングを書く言語のことです。「前に進む」というコマンドを実行するために、「forward」など文字を書かなくてもよく、視覚的にわかりやすく表現されているブロックを組み合わせることで、コンピュータにコマンドを伝えることができます。
 現在、プログラミングのワークショップは数多く開催されていますが、そうしたワークショップで使われている言語で見ていっても、ScratchやScratch Jr.などの他にも、マインクラフトや、LEGO Mindstorm EV3など、さまざまな言語を使っています。また、午前中に参加者に体験してもらったようにブラウザ上でCode.orgを使うというケースもあります。
 これらのさまざまな言語について、系統立てて整理された資料を見ながら、松田先生がさまざまなビジュアル言語について説明してくれました。低学年、中学年、高学年と学年に応じて、アンプラグドなプログラミングやぐりコードのように具体的なものを使ったプログラミングから、バーチャルなものにだんだん進んでいき、ロボットへと徐々に進んでいく、という図式の説明をしてくれました。
f:id:ict_in_education:20160923115923j:plain

 また、プログラミング的な思考は各教科の中にも入れられると松田先生は言います。プログラミングの授業を推進することで主体的な学び、対話的な学び、深い学びが実現できるのではないか。そんなことを考えながら、年間20時間のカリキュラムを作ったそうです。1学期では、導入で「プログラミングはおもしろい」と思ってもらうこと。2学期では、習熟の時期に入り、Scratchを学び、Scratchでマインクラフトを動かす。3学期には、発展としてロボット制御へと進むそうです。総合的な学習の時間で、年間20時間のプログラミング学習を設定すれば、それが幹になって、国語や算数など、各教科へ広げていけると松田先生は言います。
 そのうちの1学期分である6時間を午前中に参加者には体験してもらいました。TickleでBB-8を動かし、楽しさを知って、プログラミングの基本構造に慣れて…という6時間を体験しました。
 系統図を見てみると、子どもたちのプログラミング体験は、BB-8に始まり、高学年のところにはLEGO Mindstorm EV3が配置されています。こうすることで、ロボットで始まり、ロボットに終わることになります。子どもたちが社会に出る頃には、いまよりもずっとICTを使いこなすようになっているでしょうし、IoTも身の周りに多くあるようになっているでしょう。それだからこそ、こうしたプログラミングの体系に沿って学習をしていくことで、「子どもたちにとって、自分たちの生活の中に、プログラミングが息づいていることの実感をもってほしい」と松田先生は言います。


 講義の最後に、LEGO Mindstorm EV3を実際に松田先生が使ってみて、どのように動くのかを示します。EV3をiPadを使って動かすのですが、ここではタイヤの回転数を使って紙で作った数直線の上を移動させる例をデモンストレーションしました。
f:id:ict_in_education:20160923120040j:plain

 タイヤ3回転とプログラムしたEV3が、数直線上でちょうど0→3まで進むように作っておき、3回転動かした後に、4回転動かせば、3+4で7のところで止まる、ということを示します。その後で、では、3回転のあと、-2回転させればどうなるか、ということを考えさせます。3+(-2)の概念を考えることになります。では、3-(-2)を表すにはどうすればいいでしょう?と参加者に問いかけ、実践を見せてくれました。
 小学生では、まだマイナスの概念(負の数)は教わってはいませんが、こうしてプログラミングの引数としてマイナスの概念を子どもたちとともに考えることができるそうです。

 これは、算数の授業にプログラミングを組み入れた方法ですが、こうして授業の中にどう取り入れるかという発想は、まず先生方が使ってみることによってしか出てこないのではないかと思います。

 No.5に続きます。
blog.ict-in-education.jp


(為田)