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先生のためのプログラミング冬期講習会 レポート No.4 (2016年12月23日)

 12月23日に、D2Cホールにて、先生のためのプログラミング冬期講習会を行いました。この講習会は、為田が代表をつとめるフューチャーインスティテュート株式会社が主催し、小金井市立前原小学校の松田孝校長先生と一緒に開催したものです。

 今回は、前原小学校の年間カリキュラムの紹介と、2学期の授業体験をしてもらった午後のプログラムをレポートします。

年間カリキュラムを見てみる

 最初に、前原小学校の今年度のプログラミング授業のカリキュラムを紹介してもらいました。年間20時間のプログラミング授業が、どのような構成になっているのかを見ることができました。
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 年間プログラムの全体が、「導入」「展開」「発展」の3つのパートに分かれています。最初はまず「導入」。プログラミングと生活の関連について実感してもらい、「おもしろい!」と思ってもらうための構成になっています。その後、夏休みの宿題として、NHKの「Why!?プログラミング」を見てきてもらい、2学期の展開へとつなげていくそうです。
http://www.nhk.or.jp/gijutsu/programming/www.nhk.or.jp

 2学期は、ScratchやMinecraftを使って、プログラミングに習熟してもらいます。そして発展へとつながり、ロボット制御へと進んでいくという構成になっています。
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Scratchを使ってみる

 前原小学校でのScratchの活用について、説明がされました。「最初にScratchを使うためのユーザー登録がまず大変です」と松田先生はおっしゃっていました。ただ、最初のユーザー登録の作業は、学校だけに限らず、どこでも大変です。ただ「大変だ」で終わるのではなく、そうした大変さを越えてまで、なぜユーザー登録という作業をしているのか、ということに話を発展させているそうです。ユーザー登録に関連付けてプライバシーについての説明をしたり、性別の書き方と人権教育を結びつけてディスカッションをしたりしているそうです。こうすると、道徳の授業としての意味づけも持たせることができます。
松田先生が体験した「大変さ」を、以下のリンクで読むことができます。Scratchの登録を子どもたちにさせようと考えている方は、必読です。松田先生の「ムンクの叫び」が聴こえてきます!
http://kodomomirai.com/report/968.htmlkodomomirai.com

 
 Scratchでは、前原小学校ではWhy!?プログラミングの番組で使ったオリジナルのコンテンツを自分たちなりに発展させていくという活動をしているそうです。
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 0からプログラミングを作り出すのは大変ですが、ある程度のところまでできあがっているものを見て、どの部分をどう変えれば、どんなふうに成果物が変わるのか、ということを考えて作っていくことで、0から自分で作り出すよりもずっと学習効果は高まるのではないかと思います。
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Pyonkeeを使ってみる

 次に、「最後の1時間は、IoTに直接繋がれるプログラミング体験をします。センシングができるものをやってみましょう」ということで、iPadを使って、Pyonkeeを体験します。ここで紹介されたのは、ピッチセンサー、ロールセンサー、ヨーセンサーです。iPadを傾けることで、傾きを感知し、それをPyonkeeのプログラムの方に入れることができます。
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 ピッチ、ロール、ヨーがそれぞれ、どの方向の傾きにあたるのかなども、検索して調べさせたら面白そうだと思いました。背景のところに渦巻きなどを作っておいて、赤い色に当たったらゲームオーバーにするなど、さまざまな条件を作れば、簡単なゲームを作ることもできます。
 そして何より、第4次産業革命につながっていくIoTを体験するために、持ち歩けて、傾けたりすることで操作ができるiPadを使ったこうしたアクティビティは、子どもたちに簡単にIoTを体感してもらうのにいいのではないかと思いました。センサーなどをデバイスとして用意する必要もないですし、簡単に実践ができるのではないかと思いました。
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PDCAサイクルからOODAループへ

 最後に松田先生は、PDCAサイクルからOODAループへ変えていきましょう、という話をされていました。OODAループについては、Wikipediaでの説明文を以下に引用します。

OODAループは、朝鮮戦争の航空戦についての洞察を基盤にして、指揮官のあるべき意思決定プロセスを分かりやすく理論化したものである。すなわち、監視(Observe)- 情勢判断(Orient)- 意思決定(Decide)- 行動(Act)のサイクルを繰り返すことによって、健全な意思決定を実現するというものであり、理論の名称は、これらの頭文字から命名されている。

OODAループ - Wikipedia

 教科や単元などに縛られるのではなく、子どもを中心において、子どもたちが置かれた社会、子どもたちが生きていく未来の社会、これからの技術、現在使える教材や機材など、それらをObserve-Orientし、校長先生として意思決定(Decide)し、そして授業を作っていく=行動していく(Act)、このループは、前原小学校が歩んでいるループそのものだな、と思いました。
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 No.5に続きます。
blog.ict-in-education.jp


(為田)